太田述正コラム#7102(2014.8.6)
<英米性革命(その1)>(2014.11.21公開)

1 始めに

 このところ、市民セミナーの準備を兼ねたコラムばかりを書き綴ってきましたが、ここで、私の息抜きを兼ね、何か月も前から積み残してきた、新たなシリーズを立ち上げようと思い立ちました。
 というわけで、ロバート・ホフラー(Robert Hofler)の『性爆発 アンディ・ウォーホルから時計仕掛けのオレンジまで--いかにポップス叛徒達が全ての諸禁忌を破壊したか(SEXPLOSION From Andy Warhol to a Clockwork Orange — How a Generation of Pop Rebels Broke All the Taboos)』のさわりを書評類をもとにご紹介し、私のコメントを付すことにしました。

A:http://www.washingtonpost.com/opinions/2014/02/28/20eb8e94-8f6b-11e3-84e1-27626c5ef5fb_story.html
(3月1日アクセス)
B:http://www.independent.co.uk/arts-entertainment/books/reviews/sexplosion-from-andy-warhol-to-a-clockwork-orange--how-a-generation-of-pop-rebels-broke-all-the-taboos-by-robert-hofler-9142218.html
(6月8日アクセス。以下同じ)
C:http://brightlightsfilm.com/book-review-sexplosion-andy-warhol-clockwork-orange-robert-hofler/#.U5QAx5VZqUk
D:http://pop-break.com/2014/04/23/book-review-sexplosion-by-robert-holfer/
E:http://www.bookgasm.com/reviews/entertainment/sexplosion/
F:http://www.commentarymagazine.com/article/shooting-blanks/
G:http://online.wsj.com/news/articles/SB10001424052702304610404579403042204485138
http://www.thesundaytimes.co.uk/sto/culture/books/non_fiction/article1377080.ece
(←いつもの、一般公開されていない書評だ。)

 ちなみに、「ホフラーは、娯楽ジャーナリストとして40年超過ごしてきており、<米>ライフ誌の娯楽面編集者、USマガジン誌の編集長(executive editor)として働き、直近では、ヴァライエティ誌で演劇ルポライター及び上級編集者を15年間やってきた」人物です。
http://www.harpercollins.com/cr-106954/robert-hofler

2 米性革命

 (1)序

 「2011年にケン・ラッセル(Ken Russell)<(注1)>が死んだ時、短いニュースアナウンス群(news bulletins)は、『恋する女たち(Women In Love)』<(注2)>中で裸で2人の男が取っ組み合いをやっている場面が、我々が知っているように、<当時、>まるで文明の終わりのように見えたことを説明するのに苦労した。・・・

 (注1)1927〜2011年。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B9
 「10代後半で航海士になったが、飽きてしまいイギリス空軍に入隊。空軍に2年いた後、バレエに興味を持ちバレエ学校で学ぶが、すぐに断念。俳優を志すが才能がないということでこれも断念。次に選んだ写真の分野では成功し、後にBBCに招かれてテレビ映画を作るようになる。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B1%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%BB%E3%83%AB
 (注2)1969年の英国映画。D・H・ロレンス(Lawrence)の同名の小説をラッセルが監督して映画化したもの。
http://en.wikipedia.org/wiki/Women_in_Love_(film)

 『真夜中のカーボーイ(Midnight Cowboy)』<(注3)>が制作される少し前、米最高裁は、同性愛者達は、まさに「精神病質者的(psychopathic)」である、と判示したものだ。・・・

 (注3)1969年の米映画。「ジョン・シュレシンジャー<監督による>・・・アカデミー賞作品賞受賞・・・1969年に制定された映画のレイティングシステムで「成人映画」に該当しながらアカデミー賞を受賞した唯一の作品である(受賞後に成人指定は解除された)。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C%9F%E5%A4%9C%E4%B8%AD%E3%81%AE%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%82%A4

 この『性爆発』は、全裸レヴューである『オー!カルカッタ(Oh Calcutta!)』<(注4)>、自慰についてのフィリップ・ロス(Philip Roth)の小説である『ポートノイの苦情(Portnoy’s Complaint)』<(注5)>、そして、ゴア・ヴィダル(Gore Vidal)の性転換者の奇抜な出し物である『マイラ・ブレッキンリッジ(Myra Breckinridge)』<(注6)>、も共通する場を創造したところの、諸友情や諸コラボの道を巧みに縫うように進む。・・・

 (注4)1969年にNYで初演された、英国の演劇評論家のケネス・タイナン(Kenneth Tynan)によって創造された、前衛演劇的レヴュー。
http://en.wikipedia.org/wiki/Oh!_Calcutta!
 タイナン(1927〜80年)は、オックスフォード大卒。
http://en.wikipedia.org/wiki/Kenneth_Tynan
 (注5)1969年米国でユダヤ系米国人の作家であるロス(1933年〜)によって出版された小説。ロスは、米バックネル(Bucknell)大卒、シカゴ大修士で、プリンストン大等で教師を務めた。
http://en.wikipedia.org/wiki/Portnoy's_Complaint
http://en.wikipedia.org/wiki/Philip_Roth
 (注6)大学にあえて行かなかった米国の作家であるヴィダル(1925〜2012年)によって1968年に米国で出版された風刺小説。
http://en.wikipedia.org/wiki/Myra_Breckinridge
http://en.wikipedia.org/wiki/Gore_Vidal

 <英国の>マーガレット王女・・・は、自由奔放な両刀使い(free-spirited bisexual)についての映画である『日曜日血の日曜日(Sunday Bloody Sunday)』<(注7)>の自由奔放な両刀使い(free-spirited bisexual)に恐怖に襲われる。
 「二人の男がベッドでキッスをしている!」と。」(B)

 (注7)1971年の英国の映画。ジョン・シュレシンジャー監督作品。
http://en.wikipedia.org/wiki/Sunday_Bloody_Sunday_(film)
 シュレシンジャー(John Richard Schlesinger。1926〜2003年)は、オックスフォード大卒の英国の俳優上がりの映画・演劇監督。
http://en.wikipedia.org/wiki/John_Schlesinger

 「1968年から73年に至る、娯楽史における短い期間は、画期的な映画、演劇、そして文学をもたらした。
 今日においては、みんなは、『時計仕掛けのオレンジ』の凄絶な超暴力、『ヘア(Hair)』<(注8)>のスンゲー(hippie-dippie)歌付き(sing-along)の理想主義、そして、フィリップ・ロスの成人(coming-of-age)自慰主義たる『ポートノイ』を当たり前のものだと考えているかもしれない。・・・

 (注8)「<米国>の若い俳優であるラドとラグニの2人によって作られた<ミュージカル>・・・オフ・ブロードウェイでの初演は1967年、ブロードウェイでの初演は翌1968年・・・ロック音楽とミュージカルの融合という斬新さ、無軌道な若者たちが繰り広げる劇(中には全裸シーンも登場する)は十分前衛的であったが、当時のヒッピームーブメントと、長引くベトナム戦争への反戦の空気も相まって、世界各国で上演されるヒット作となった。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%82%A2%E3%83%BC

 『真夜中のカーボーイ』・・・『ディープ・スロート(Deep Throat)』<(注9)(コラム#1665)>・・・『ラストタンゴインパリ(Last Tango in Paris)』<(注10)についても・・。>」(A)
 
 (注9)「リンダ・ラヴレースの主演で1972年夏に公開された<米国の>ポルノ映画。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%88_(%E6%98%A0%E7%94%BB)
 (注10)ベルナルド・ベルトルッチ(Bernardo Bertolucci)監督による「1972年のイタリア映画。・・・主演のマーロン・ブランド・・・<と>ヒロイン役のマリア・シュナイダー・・・<の>大胆な性描写(一般映画として、アナル・セックスの描写がある初の映画と言われる)が世界中に物議を醸し<た。>」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%82%B4%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%91%E3%83%AA

 「1968年から73年の5年間に集中することによって、ホフラーは、このようにバラバラの創造的諸要素が働いていたというのに、顕著に一貫性ある変化と論議の物語を手作りしている。
 いずれにせよ、<それまでの>道徳性の支配力を変えたのは、それらのうちのどれだけ多くがアンディー・ウォーホル(Andy Warhol)とその工場腰巾着達(Factory hangers-on)<(注11)>と結び付いていたかに関わらず、ポップ文化の一片ではなく、その全てのものの累積効果だったのだ。」(E)

 (注11)ウォーホルのNYの住居にたむろすることとなった、おべっか者、ジレッタント、腰巾着達の一群のこと。この場所をウォーホルはこの場所を工場と呼び、そこをスタジオ兼社交クラブへと変貌させた。
http://www.fvza.org/warhol.html
 ウォーホル(1928〜87年)は、「カーネギー工科大(現在のカーネギーメロン大)・・・<卒の米国>の画家・版画家・芸術家でポップアートの旗手」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%9B%E3%83%AB

 「(1968年から73年<というのは>)ホフラーの大学生時代と一致している。・・・
 この期間において、フィリップ・ロスの大はしゃぎ的に(gleefully)自慰的な『ポートノイの苦情』、アンディ・ウォーホルとポール・モリセイ(Paul Morrissey)の最初の地下ポルノ映画(flick)である『チェルシーの女達(Chelsea Girls)』<(注12)>、今や偶像的存在となった麻薬常用者のオルターナティヴな若者文化の音楽的祝賀である『ヘア』、ベルナルド・ベルトルッチの主流上品ポルノ(mainstream porn-chic)映画・・自分の裸のシーンの撮影までにシャカリキに20ポンド減量したマーロン・ブランド主演・・の『ラストタンゴインパリ』、そして、アレックス・コンフォート(Alex Comfort)に世界的名声をもたらした『ジョイ・オブ・セックス(The Joy of Sex)』<(注13)>を生み出した。」(G)

 (注12)1966年の米国実験的地下映画。
http://en.wikipedia.org/wiki/Chelsea_Girls
 モリセイ(1938年〜)は米国の映画監督。カトリック系の米フォーダム(Fordham)大学卒。政治的保守派で自称右翼。
http://en.wikipedia.org/wiki/Paul_Morrissey
 (注13)1972年に初版が出た、英国のアレックス・コンフォート著の性マニュアル。
http://en.wikipedia.org/wiki/The_Joy_of_Sex
 コンフォート(1920〜2000年)は、英国の科学者で医者であり、加齢学者、アナキスト、平和主義者、良心的反戦者としても知られる。ケンブリッジ大卒、ユニヴァーシティ・カレッジ博士。
http://en.wikipedia.org/wiki/Alex_Comfort

⇒私が1974年に米国に留学したことは、広義のアングロサクソン世界における性革命直後であったことになり、いささか大げさに言えば、運命的なものを感じます。(太田)

(続く)