太田述正コラム#7080(2014.7.26)
<米独立革命とキリスト教(その7)>(2014.11.10公開)

 エピクロスがこの物語の中にあらわれるのは、彼が、私が「急進的」と呼び、他の人々が(あえて言えば、いささか単純過ぎる形で、)「唯物的」、「世俗的」、ないしは「無神論的」と呼びがちな、哲学思想の要素(strand)の傑出した代表だからだ。
 このような感じで、私は、(ソクラテス、アナクサゴラス(Anaxagoras)<(注26)>とデモクリトス(Democritus)<(注27)>が思い浮かぶが、もとより、)他の哲学者達を代表として用いてもかまわなかった。・・・

 (注26)BC500年?〜428年?。「古代ギリシアの自然哲学者。・・・小アジア・イオニア・・・出身。紀元前480年、アテナイに移り住む。・・・彼は、物体は限りなく分割されうるとし、この無限に小さく、無限に多く、最も微小な構成要素を、「スペルマタ」(spermata、種子の意味)と呼んだ。さらに、宇宙(世界)やあらゆる物質は、多種多様な無数のスペルマタの混合によって生じるとし、宇宙の生成において、はじめはただごちゃまぜに混合していたスペルマタが、「ヌース」(nous、理性の意味、ヌゥスとも)の働きによって次第に分別整理され、現在の秩序ある世界ができあがった、というのが彼の根本思想である。<更に、>太陽は「灼熱した石」であると説<いた。>」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%8A%E3%82%AF%E3%82%B5%E3%82%B4%E3%83%A9%E3%82%B9
 (注27)BC460年?〜370年?。「トラキア地方の・・・人。・・・〈原子〉は不生・不滅・無性質・分割不可能な無数の物質単位であって、たえず運動し、その存在と運動の場所として〈空虚〉が前提とされる。・・・世界の起源については語らなかったが、「いかなることも偶然によって起こりえない」と述べた。・・・物質の根元についての学説は、アリストテレスが完成させた四大元素が優勢であり、原子論は長らく顧みられる事は無かった。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%A2%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%88%E3%82%B9

 米独立革命は、近代世界の歴史の中で、早く到来した、というか、恐らくは早く到来し過ぎた。
 西欧の諸世俗国家は、経済的かつ文化的に近代化した後に初めて近代的政府を獲得した。
 米国では、順番が逆だった。

⇒常識的には西欧にイギリスは含まれるところ、イギリス本国・・米独立革命の時点では英国になっていましたが・・・は、既に議院内閣制になっていたところ、それは近代的政府ではなかったとでも言うのでしょうか。
 国王を戴いているだけで近代的政府ではありえないとでも?
 それが哲学者やその哲学者が書いた本の書評子の物の考え方だというのですから、ただただ、呆れるほかありません。
 大体からして、書評子達も、恐らくはスチュアート自身も、Americaという言葉で北アメリカ、または、英領北米植民地、もしくは米国(米合衆国)の三つを掛け持ちさせている点だけをとっても、中南米はもとより、北アメリカの英領以外の地のことを無視する傲慢さが伺え、その無神経さに私は苛立ちを覚えます。
 私は、せめてもと、前2つの場合は、「北アメリカ」、最後の場合は、「米国」と訳し分けたことを申し添えます。(太田)

 米国の例外的宗教性は、この国を独特のものにしている・・常に良い形ではないが・・ところの、種々の諸要因に由来する。
 かかる一つの要因は、人種に立脚した奴隷制とともに、米国のアパルトヘイト制度であるジム・クロウ(Jim Crow)<(注28)>とその人種主義的余波だ。
 
 (注28)ジム・クロウ法は、「<米国において>1876年から1964年にかけて存在した・・・主に黒人<を対象とした>、一般公共施設の利用を禁止制限<等を規定し>た<諸州>法・・・を総称していう。しかし、この対象・・・は、「アフリカ系黒人」だけでなく、「黒人の血が混じっているものはすべて黒人とみなす」という・・・「一滴規定(One-drop rule)」に基づいており、<外見上白人にしか見えない者さえも対象となった上、>インディアン・・・などの、白人以外の「有色人種」(Colored)も<対象となって>おり、白人とこれら黒人等との結婚を禁じる州法を定めた州もいくつかあった。>」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%82%A6%E6%B3%95

⇒ここは意味不明です。
 リベラルキリスト教ないし原理主義的キリスト教が奴隷制/ジム・クロウ/黒人差別をもたらした、ないし助長したというのか・・私はそう思っています・・、それとも、奴隷制/ジム・クロウ/黒人差別に係る罪の意識をリベラルキリスト教ないし原理主義的キリスト教にすがって軽減/解消したというのか、その両方なのか、不分明です。(太田)

 宗教を好むもう一つの要因は、米国的生活様式のなかに組み込まれている経済的不安と社会的断片化に、公共投資とコミュニティの代替的諸源泉の総体的乏しさが相まっていることだ。

⇒ここも、リベラルキリスト教ないし原理主義的キリスト教が、「経済的不安と社会的断片化が、公共投資とコミュニティの代替的諸源泉の総体的乏しさ」の原因なのか、それとも結果なのか、等が不分明です。
 私自身は、リベラルキリスト教は、キリスト教に内在する双極性障害性を募らせ、後者をもたらす、と考えているところです。(太田)

 しかし、これらの諸要因を認めたとしても、独立革命以来の2世紀余の間に米国における宗教が劇的に変化したという事実を見過ごしてはならない。
 米国における大部分の宗派(religion)は、今や、近代的なリベラルな政府の諸要請に合致するようなものになっており、その「中心(center)」は・・それが発見できるとすればだが・・、ジェファーソンの<言う>ユニタリアン達のために、ジェファーソンの心中にあったものに近いか、彼や彼の同僚たる理神論者達が「自然宗教(natural religion)<(注29)>」と呼びがちであったところのものに、実際問題として(in practice)変形(shift)したのだ。」(E)

 (注29)「自然発生的に成立した未開宗教。アニミズム・呪物崇拝などの素朴な信仰の総称。」
http://www.weblio.jp/content/%E8%87%AA%E7%84%B6%E5%AE%97%E6%95%99
 「ルソーの「自然宗教」は、・・・心情によって神を信じます。・・・理性によって神の存在を証明<するような>・・・理性的な宗教は、自然本来の姿に反すると、ルソーは考えるのです。」
http://mgenemon.sakura.ne.jp/rousseausizenshuukyou.html

⇒額面通り受け止めれば、リベラルキリスト教徒ないし原理主義的キリスト教徒であった米国の多数派たるできそこないのアングロサクソンが、純正アングロサクソンたる自然宗教教徒、すなわちイギリス人へと回帰したことになりますが、具体的根拠なくそんなことを言われても、眉に唾を付けるだけです。(太田)

(続く)