太田述正コラム#6915(2014.5.4)
<戦争の意義?(その7)>(2014.8.19公開)

  イ パクス英米時代

 「1815年におけるナポレオンの敗北から1914年の第一次世界大戦の勃発までの間、英国は、空前の類の、軍事的・金融的(financial)権勢(dominannce)を享受した。
 英国の承認なくして戦争を行おうとする政府は殆んどなく、また、国家間諸紛争は極めて低い諸水準へと減少した。」(D)

 「パクス・ブリタニカはパラドックスの上に立脚していた。
 その財・サービスを売るためには、英国は、他の諸国がそれらを買えるくらい豊かになってもらう必要があった。
 ということは、好むと好まざるとにかかわらず、英国は、他の諸国が工業化し、富を集積することを奨励する必要があったわけだ。・(K)

 「モリスは、(もう一つのモリスのキャッチフレーズである、)「グロボコップ(globocop=全球的警官)」の役割を演じたところの、大英帝国の興隆の跡を辿る。
 ニオール・ファーガソン(Niall Ferguson)<(コラム#125、207〜212、738、828、855、880、905、914、967、1053、1202、1433、1436、1469、1492、1507、1691、3129、3379、4123、4207、4209.4313、4870、5081、5087、5116、5125、5162、5291、5300、5314、5530、5546、5675、5677、5687、5907、5942、5950、5991、5993、6191、6257、6277、6519、6726)>の諸主張の木霊のように、モリスは、英国の海外への拡大が、どのように、自由貿易経済圏を生み出し、南米、インド、その他の外国に資本を投資することによって、経済的拡大を駆動したかを素描する。」(G)

 「英国が弱体化すると、パクス・ブリタニカは崩壊し、地球は二つの世界大戦へと突入した。
 1989年以来、米国が、<英国よりも>更に大きな軍事的・金融的権勢<(=パクス・アメリカーナ)>を享受しており、国家間諸紛争は、<(パクス・ブリタニカの当時よりも)>一層低い水準まで下がるに至っている。」(D)

  ウ 東と西

 「モリスの物語では、文明は、最後の氷河期<(注6)>の後における、諸植物と諸動物の飼育化(domestication)まで遡る。

 (注6)「およそ7万年前に始まって1万年前に終了した一番新しい氷期」を「最終氷期」と呼ぶ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%80%E7%B5%82%E6%B0%B7%E6%9C%9F

 「西(West)」は、現在のトルコとイラクにおいて、農業が最初に始まったところの、旧世界最西端地域に起源を持つ諸社会を意味するところ、これら諸社会が飼育化において最初の出発を行いえたのは、その恵まれた地理のおかげだ。
 <他方、>「東(East)」は、それより約2,000年後に農業が始まったところの、現在の支那、すなわち、<旧世界の>最東端地域に起源を持つ諸社会を意味する。<(注7)>

 (注7)西においては、レヴァント(Levant)でBC9500年頃、東においては、BC8000年頃、農業(農耕)が始まったとされている
http://en.wikipedia.org/wiki/History_of_agriculture
ので、モリスの言う、約2,000年の差は、西優位意識からくるサバ読みか。

 <その後、一時、東が西に追いつき、追い抜いた時期こそあったが、>15世紀において、諸銃と外洋諸船舶の興隆が西の地理的位置を西欧人達にとって大変な資産へと変貌させた結果、彼ら<(西)>は、<東に比べて、>より容易に新世界を植民地化し略奪することが可能となった。」(J)

 「西欧の興隆を描写するにあたって、モリスは、対内的な国家建設、及び<対外的な>帝国主義・・それには・・・生産的な戦争が伴った・・が、より大きな諸社会を生み出し、それら諸社会を対内的に平和化し、その諸<社会の>経済の成長を可能にした、と喝破する。
 彼は、アダム・スミスの「見えざる手」を、彼が呼ぶところの「見えざる拳骨(fist)」と対比する。
 諸市場は、諸政府が脇にどいている場合に最も良く機能したが、「諸政府が」平和を維持するために武力を用い「ない限り、全く機能」しなかった、と。
 ただし、モリスにとって、戦争は、時々生産的になるだけの代物であることを想起せよ。
 生産的諸紛争と入り乱れていたのは非生産的諸紛争であって、それらは、「あらゆるものを、…人々を貧しくし、彼らの生活をより危険にすることによって、後退させた」と。
 ローマ衰亡にひき続いた暗黒の時代<(西欧の中世)>は、かかる事例を提供している。
 モリスは、最善のことと最悪のことが起こったところの特殊な事例・・空前の最も血腥い戦争と空前の最大の平和が組み合わされた事例・・として、20世紀に注目する。
  不吉なことに、現在のパクス・アメリカーナが朽廃しつつあることから、「今後の40年は歴史上最も危険なものとなることが約束されている」、と。」(E)

(続く)