太田述正コラム#6909(2014.5.1)
<戦争の意義?(その4)>(2014.8.16公開)

 (4)国家の意義の発見

 「農耕(farming)と農業によって作り出された諸インフラが、定着的にして、集中した、そしてより稠密な諸社会をもたらし、それが敵と闘う効果的な諸手段を作り出した。
 諸社会が自分達が敗者の側にいることを見出すや否や、これらの諸社会は「敵のより効果的な組織の中へと吸収された」のだ。
 「リヴァイアサン(Leviathan)<(注3)>」、すなわち国家、の勃興は、これらの諸社会を組織化し、その内部での諸議論を鎮め、暴力率を減少させ、市民達に税を課し、経済的諸エネルギーを奔流(flow)させたのだ。」(G)

 (注3)「トマス・ホッブズが著した政治哲学書。1651年に発行された。題名は旧約聖書(ヨブ記)に登場する海の怪物レヴィアタンの名前から取られた。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%82%B5%E3%83%B3_(%E3%83%9B%E3%83%83%E3%83%96%E3%82%BA)
 「<レヴィアタンは、>旧約聖書(『ヨブ記』『詩編』『イザヤ書』など)で、海中に住む巨大な怪物として記述されている。・・・同じく神に造られたベヒモスと二頭一対(ジズも含めれば三頭一対)を成すとされている(レヴィアタンが海、ベヒモスが陸、ジズが空を意味する)。ベヒモスが最高の生物と記されるに対し、レヴィアタンは最強の生物と記され、その硬い鱗と巨大さから、いかなる武器も通用しないとされる・・・。世界の終末には、ベヒモス(およびジズ)と共に、食べ物として供されることになっている。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%82%BF%E3%83%B3

 「17世紀に、トマス・ホッブス(Thomas Hobbes)<(注4)(コラム#46、81、88、1575、1699、2812、3321、5998、6258、6445)>は、人生は汚く、暴虐的でかつ短いとの彼の人生観でもって事を始めた。
 そして、最近、イスラエルの歴史学者のアザル・ガト(Azar Gat)<(注5)>が、その『人類文明における戦争(War in Human Civilization)』の中で、その証拠を詳細に提示した。

 (注4)1588〜1679年。イギリスの哲学者。「ルネ・デカルト(Rene Descartes)<(っコラム#1364、1467、1828、3752、4296)>などともに機械論的世界観の先駆的哲学者の一人であり、バールーフ・デ・スピノザなどとともに唯物論の先駆的思索を行った哲学者の一人である。・・・人工的国家論の提唱と社会契約説により近代的な政治哲学理論を基礎づけた人物として一般的に知られる。・・・1655年に円積問題の解を見つけたと公表し、数学者のジョン・ウォリスとの論争に発展した。ホッブズは、終始この問題の本質を理解することができず、自分の解の誤りを認識できずに死ぬまで激しい論争を続けた。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%9B%E3%83%83%E3%83%96%E3%82%BA
 「<彼は、>14歳でオックスフォード大学に入学して・・・19歳で卒業<している。>」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%82%B5%E3%83%B3_(%E3%83%9B%E3%83%83%E3%83%96%E3%82%BA) 前掲
 (注5)1959年〜。イスラエルの軍事史、軍事戦略、戦争と平和の著述家。イスラエル軍少佐でもある。テルアヴィブ大卒、ハイファ大修士、オックスフォード大博士。戦争は少なくなりつつあると指摘。
http://en.wikipedia.org/wiki/Azar_Gat

 モリスのこの本は、要は、ガトの記念碑的だが読むのが大変な著作の大衆版だ。」(B)

 「ホッブスの見立てによれば、聖書の中でヨブが非常に警戒心を抱かされたところの、ゴジラ(Godzilla)<(注5)>のような怪物たるリヴァイアサンくらい畏怖の念を起させるとホッブスが示唆した、強力な政府が存在しなければ、殺人、貧困、そして無知、が満ち溢れるのだ。…

 (注5)「1954年・・・、当時社会問題となっていたビキニ環礁の核実験に着想を得て製作した、第1作“水爆大怪獣映画”『ゴジラ』が公開される。身長50メートルの怪獣ゴジラは人間にとっての恐怖の対象であると同時に、「核の落とし子」「人間が生み出した恐怖の象徴」として描かれた。・・・ハリウッド・ウォーク・オブ・フェームに日本のキャラクターとしては唯一登録されている。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%82%B8%E3%83%A9
 今年は、ゴジラ「生誕」60周年にあたり、3本のゴジラ映画が封切られる予定であり、そのうちのハリウッド版は、核加害国であったことから娯楽映画に終始してきた従来のハリウッド版とは違って、上記ゴジラのオリジナルのメッセージを込めたものになるという。
http://takingnote.blogs.nytimes.com/2014/04/29/godzillas-back-with-moral-authority/?_php=true&_type=blogs&ref=opinion&_r=0
(4月30日アクセス)

 かかる政府は、一人で統治する王かもしれないし、意思決定者達の集会(assembly)かもしれないが、いずれにせよ、リヴァイアサンは、その臣民達を完全に脅して相互に殺害したり窃盗したりするよりもその諸法に服従することを選ばせるようにしなければならない。・・・
 人々は、そうするように強いられない限り、相互に殺したり貧しくしたりする諸権利を含む、自分達の自由を放棄するようなことは、まずありえない。
 そして、これをもたらすことができる、事実上、唯一の力は、敗戦、ないしはかかる敗戦が目前に迫っていることに対する恐れなのだ。」(C)

 「モリスは、生産的な戦争が諸政府を生み(make)、そのことが、今度は平和と繁栄を確保する、と主張する。」(E)
 
 「政府の目的は、ホッブスがその『リヴァイアサン』の中で指摘したように、その市民達に安全を提供することだ。
 そのこととの交換で、市民達は絶対的自由を放棄する。
 それは社会契約と戦争によってなのだ!
 モリスは、「リヴァイアサン」という言葉を、帝国、ないしは国民国家の政府について用いる。
 ひとたび諸戦争が闘われ、帝国が形成されると、その国家は、力の使用を独占することになる。
 そうして初めて、政府はその市民達に課税することができるのだ。」(H)

(続く)