太田述正コラム#6871(2014.4.12)
<経済学の罪(その8)>(2014.7.28公開)

4 経済学を含む政治経済学の対象領域の縮減--エピローグ

 ロスコーならずとも、経済学は罪深い、と私はかねてから考えてきたところ、幸いなことに、個人主義/利己主義を所与のものとして人間行動を分析する政治経済学中、主として公共財に係る人間行動を分析する政治学と主として私的財に係る人間行動を分析する経済学を、アングロサクソン文明が直接的間接的に生み出し、現在に至っているところ、政治経済学の対象領域が、今後、加速度的に縮減していくのではないか、従って、政治学や経済学の出番もまた急速に小さくなっていくのではないか、という認識を私に抱かせたコラムに先月遭遇しています。
 そのさわりをご紹介しましょう。

 「我々は、資本主義の核心におけるパラドックスを目撃し始めている。
 それは、資本主義をその偉大さへと推し進めたけれど、今やその未来に対して脅威を与えている。
 競争諸市場に内在するダイナミズムが諸経費を極めて引き下げつつあることから、多くの財やサービスが、殆んどただにして豊富になりつつあり、もはや市場諸力の影響を受けなくなっている。
 経済学者達は、限界費用の逓減を常に歓迎してきたけれど、これらの諸費用をゼロ近くまでにするような技術革命の可能性を予期することは決してなかった。・・・
 消費者達は、自分達自身の情報や愉楽(entertainment)を、伝統的諸市場の一切合財を迂回しつつ、ビデオ、オーディオ、そしてテキストを介して、殆んどただで共有し始めている。
 限界費用に係る、この巨大な現象は、・・・エネルギー、製造、そして教育を改変し始めている。
 太陽光や風力の技術の固定的諸費用は結構値段がはるけれど、それを超えた、個々のエネルギー単位の確保費用は低い。

→思うに、核融合による発電が可能になれば、電気の追加的生産費用は、文字通りゼロに近づくことでしょう。(太田)

 この現象は、製造部門さえも貫いている。
 何千人もの趣味人達が、限界費用ゼロ近くで、オープン・ソースのソフトと、リサイクルされた合成樹脂を原料(feedstock)として、3Dプリンター群を用いて自分達自身の製品群を既に作っている。
 他方、600万人を超える学生達が、自由で大規模なオープンのオンライン諸授業を聴講している。
 そのコンテンツは、限界費用ゼロ近くで提供(distribute)されている。・・・
 今や、この現象は、経済全体に影響を及ぼそうとしている。
 恐るべき新しい技術インフラ・・モノのインターネット(Internet of Things)・・が、これからの20年の間に経済生活の多くを限界費用ゼロ近くへと押して行く潜在的な力(potential)でもって出現しつつある。
 この新しい技術の足場(technology platform)は、全てのものと全ての人を繋ぎ(connect)始めている。
 今日では、110億個のセンサー群が、自然資源群、生産ライン群、送電網、補給ネットワーク群、そしてリサイクル物流群に取り付けられており、また、家群、事務所群、店舗群、そして車両群に埋め込まれており、ビッグ・データをモノのインターネットに提供(feed)している。
 2020年には、少なくとも、500億個のセンサー群がそれを繋ぐと見積もられている。
 人々は、情報諸財について現在やっているように、ネットワークに繋ぎ、ビッグ・データ、分析論(analytics)、アルゴリズムを用い、効率を加速させ、広範な製品群やサービス群の製造・共有のための限界費用をゼロ近くまで逓減させることができる。・・・
 <ある>予測では、2022年には、モノのインターネットの働きによる、私的部門の生産性諸利得(gains)は14兆ドルを超える。
 <また、ある>研究は、2025年には、モノのインターネットによる生産性諸上昇は全球経済の半分に影響を与えうると推計している。
 まだ解けていない疑問は、この未来における経済が、数百万人もの人々が諸財や諸サービスをただ近くで作り共有することができる時において、どのように機能するのか、だ。
 その答えは、コミュニティとして我々が作り共有するモノ群の世話をする(attend to)非営利諸組織によって構成されているところの、市民社会に横たわっている。
 金銭的には、非営利の世界は強力だ。
 非営利諸収入は、2000年から2010年にかけて、インフレ率を調整した数字で、41%という力強い伸びを示しており、これは、同じ期間に16.4%増えたGDP成長率の2倍を超えている。
 2012年には、米国の非営利部門は、<既に、>GDPの5.5%を占め<るに至っ>た。

(続く)