太田述正コラム#6861(2014.4.7)
<米国の分裂をどう克服するか(その1)>(2014.7.23公開)

1 始めに

 「経済学の罪」シリーズは、まだエピローグ的な部分が残っていますが、本日、WSJの有料記事・・無料読者には冒頭部分だけしか読めない・・として、興味深そうな本である、ジョージ・M・マースデン(George M. Marsden)の『米啓蒙主義の黄昏--1950年代とリベラル的信条の危機(The Twilight of the American Enlightenment: The 1950s and the Crisis of Liberal Belief)』の書評が載っていた
http://online.wsj.com/news/articles/SB10001424052702304747404579447520239316040?mg=reno64-wsj&url=http%3A%2F%2Fonline.wsj.com%2Farticle%2FSB10001424052702304747404579447520239316040.html 
(4月7日アクセス。以下同じ)ことから、公開されている書評群を踏まえて、この本のさわりをご紹介し、私のコメントを付すことにしました。
A:http://www.washingtonpost.com/opinions/the-twilight-of-the-american-enlightenment-the-1950s-and-the-crisis-of-liberal-belief-by-george-m-marsden/2014/03/28/b100e120-a84b-11e3-8599-ce7295b6851c_story.html
(4月7日アクセス・書評(以下同じ))
B:http://www.publishersweekly.com/978-0-465-03010-1
C:https://www.weeklystandard.com/articles/good-old-days_775302.html?page=1
D:http://www.democracyjournal.org/32/faithless.php?page=all
E:http://www.postandcourier.com/article/20140406/PC1201/140409664/1003/the-dimming-of-american-enlightenment

 なお、下掲の書評と著者との対談は目は通したけれど、使用しませんでした。
https://www.kirkusreviews.com/book-reviews/george-m-marsden/the-twilight-of-the-american-enlightenment/ 
http://www.albertmohler.com/2014/02/10/transcript-the-american-enlightenment-at-twighlight-a-conversation-with-historian-george-m-marsden/ 

 また、マースデン(1939年〜)は、キリスト教と米文化との関係に係る歴史学者であり、ヘイヴァーフォード(Haverford)単科大学、ウェストミンスター神学校(Westminster Theological Seminary)で学び、エール大学で博士号を取得、長く米ノートルダム大で歴史学教授を務めた、という人物です。
http://en.wikipedia.org/wiki/George_Marsden

2 米国の分裂をどう克服するか

 (1)序

 「<現在の米国における>支配的な正統派(reigning orthodoxy)であるプラグマティック・リベラリズムは、米国の建国者達の啓蒙主義的諸理想を踏襲しつつ、彼らの合理的な道徳的秩序への信条を放棄している、というのが、マースデンが、ウォルター・リップマン(Walter Lippmann)<(注1)(コラム#3122、3873)、ベティー・フリーダン(Betty Friedan)<(注2)(コラム#3298)>、B・F・スキナー(B. F. Skinner)<(注3)>、ラインホルド・ニーバー(Reinhold Niebuhr)<(注4)>といった、現代の公共知識人達(public intellectuals)の諸著作の明敏なる注釈群(exegese)を駆り出(engage)すことを通じて、探索していることだ。

 (注1)1889〜1974年。「<米>国のジャーナリスト、コラムニスト、政治評論家。・・・ドイツからのユダヤ移民の三世・・・ハーヴァード大<卒>・・・マッカーシズムとベトナム戦争に対し、鋭い批判を行<った。>・・・2回、ピュリッツァー賞を受賞している。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%9E%E3%83%B3
 (注2)1921〜2006年。米国の著述家・活動家・フェミニスト。ロシアとハンガリー出身の家族の下に米国で生まれる。スミス単科大学卒、マルクス主義者となり、カリフォルニア大バークレー校大学院を1年で中退。
http://en.wikipedia.org/wiki/Betty_Friedan
http://trans.trans-aid.jp/viewer/?id=3370 ←日本語でもっと知りたい人向け。
 (注3)バラス・フレデリック・スキナー(Burrhus Frederic Skinner。1904〜90年)。「<米>国の心理学者で行動分析学の創始者。・・・ヒトを含む動物の行動をレスポンデントとオペラントに分類し、パブロフの条件反射をレスポンデント条件づけとして、またソーンダイクの試行錯誤学習をオペラント条件づけとして再定式化し、行動分析学を体系化した。」ハーヴァード大卒[、同大博士]。ハーヴァード大教授を務めた。[無神論者。]
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%8A%E3%83%BC
http://en.wikipedia.org/wiki/B._F._Skinner ([]内)
 (注4)1892〜1971年。「<米国>の・・・神学者、政治や社会問題についてのコメンテーター・・・キリスト教的な教義と結びつけられた、外交問題についてのリアリズム及び近代的「正しい戦争」についての提言によって、長きにわたって社会的な影響力を保持した。・・・父は、ドイツ福音派の牧師」。米エルムハースト(Elmhurst)単科大学卒、エール神学校学士・修士。「ニーバーは第二次世界大戦中、・・・<米国>の参戦を支持し・・・ドイツと日本による勝利がキリスト教信仰を脅かすだろうと・・・断じた。・・・しかし、・・・広島への原子爆弾の使用を、道徳的に弁護不能"morally indefensible"として非難した。・・・1950年代に入ると、ニーバーの立場は、非常に反共に傾<いた。>」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC

 かかる諸批判を通じて、マースデンは、哲学的諸基盤への舫いを解いたリベラル・イデオロギーの朽廃を扇動的に診断する。
 この朽廃は、1960年代の文化革命、及び、1970年代の生き返った宗教右派、への舞台を整えた、と強く主張する。」(B)

 「<米国人が>目標とすべきは、「単に、それらが宗教的性格を帯びているとして、宗教に立脚した諸見解に対して偏見を持つ」ようなことがなくなるところの、「より十全に包含的な多元主義(inclusive pluralism)」である、と彼は主張する。」(C)

 (2)予定調和の時代

 「米啓蒙主義は、米国独特の、プラグマティック・リベラリズム、科学的合理性、そしてプロテスタント・キリスト教、の混淆物だ。
 最後の要素(item)がマースデンにとっては格別な重要性を持っている。
 彼は、米独立革命期に出現して20世紀に至るまで存続したところの、キリスト教と理性(reason)の「役に立つ(working)心底からの関係」を称える。・・・
 <彼の、>1950年代へのノスタルジアは、結局のところ、公民諸権、女性の諸権利、そして社会福祉に係る1960年代の諸変革、を積極的な諸進展であったと見る人々にとっての危険な諸兆候(red flags)を見出す(raise)こととなる。
 マースデンは、責任感にかられてこれら諸懸念を認めはするけれど、1950年代を特徴付けるにあたって、それを、おおむね慈悲深き首尾一貫した時代であった、と言い張る。」(A)

(続く)