太田述正コラム#7071(2014.7.22)
<皆さんとディスカッション(続x2331)>

<太田>(ツイッターより)

 「…日本が平和的発展の道を確実に歩むよう、米国はかつて日本に平和憲法を定め、交戦権と集団的自衛権を剥奪し、国防軍の保有を認めず、国防省と国防相を設けることさえ許さなかった。
 これらの措置が深謀遠慮に基づくことは間違いない。
 だが、日本が再び誤った道を歩まぬようこうした拘束を引き続き大変必要としているまさに今、ワシントンの一部戦略エリートは米国によるアジア太平洋主導を持続する必要から、日本の再軍備を認め、日米による共同抑止を認めることを辞さずにいる。
 これはなんと近視眼的ではないか。これはアジア太平洋の平和の助けになりがたいだけでなく、反対に地域情勢をさらに不穏にし、米国は最終的に悪の報いを受ける。
 日本は「普通の国」になってはいけないのではない。
 だが侵略の罪を厳粛に認めることを拒絶する国がどう「普通」に変るのか、常人には想像もできない。
 米国は、歴史上自らを損なったのは日本であり、中国ではないことを忘れるべきでない。ましてや、思い違いをしてはならない。
 現在日本の指導者が靖国神社を参拝する際に考えているのは、やはり米国がかつて日本に対して戦略爆撃を実施したことが中心なのであり、他のことではないのだ。」
http://j.people.com.cn/n/2014/0721/c94474-8758464.html
 実に含蓄ある文章だ。
 日本に早く米国と対決してくれだと。

 「…韓国<での>…推理・ホラー小説の…昨年の販売割合トップは日本小説で43.96%<、>…韓国小説は5.09%で4位にとどまった。…」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/07/22/2014072201830.html
 一体、韓国のどこが反日?
 むしろ、親日度が急速に高まりつつある? 政治と娯楽は別物?

<鯨馬>

  -- 太田述正コラム#7070での誤解について--

 コラム#7070(2014.7.21)<2014.7.20関西オフ会次第(続)>(未公開)を見て絶句しました。

> <鯨馬>
>
>  中国にだって、例えば、李世民がいる。
>
> <太田>
>
>  うー誰だったっけ。
>
> <鯨馬>
>
>  宋の祖だ。

 やりとりの再現にはデフォルメは避けられないとはいえ、私はそんな恥ずかしい間違いはしません…。
 中国史上の名君として私が挙げたのは二名で、李世民と「宋の太祖」つまり趙匡胤です。

軍事に優れた秦皇、漢武
内政に秀でた唐宗、宋祖

と並び称されることに基づきます。

 これは毛沢東が詠んだ漢詩のなかの一節に出てきます。

 毛沢東が見た中国史の英雄の評価が知れて大変面白い漢詩です。
http://kanshi.roudokus.com/shinensyun-moutakutou.html
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惜秦皇漢武
略輸文采
唐宗宋祖
稍遜風騒
一代天驕成吉思汗
只識彎弓射大雕

惜むらくは秦皇と漢武は
略(ほぼ)文采に輸(おと)り
唐宗と宋祖は
稍(やや)風騒に遜(ゆず)る。
一代の天驕
成吉思汗も
只だ弓を彎いて大雕(だいちょう)を射るを識るのみ

 だが惜しいことに、秦の始皇帝と漢の武帝は大体において文才に欠けていたし、唐の太宗と宋の太祖は風流を解することやや乏しかった。
 かの一代の天の驕児と言われたジンギスカンも、ただ弓を引いて大鷲を射ることしか知らなかった。
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 ちなみに同じURLによれば

【秦皇】 秦の始皇帝(BC259-210)
【漢武】 漢の武帝(BC159-BC87)
【唐宗】 唐の太宗李世民(599-649)
【宋祖】 宋の太祖趙匡胤(927-976)

を指します。

 この詩は陳舜臣「小説十八史略」を読んだときに宋のあたりで出てきました。
 そこでは趙匡胤は人情味あふれるエピソードがいくつかありました。

・皇帝の推戴をうけるとき泥酔したふりをした
・自分が帝位を簒奪した旧主を保護するよう帝位継承者に求めた
・言論を理由に士大夫を殺さないよう帝位継承者に戒めた

 そこで宋の太祖趙匡胤を人間主義的名君として挙げたというわけです。

<太田>

 や、それはそれは、大変失礼しました。
 支那の名君と言えば、貞観の治、と反射的に思い浮かべつつ、恥ずかしいことに、太宗が李世民だったことがすぐ思い出せず、怪訝な顔をした次第。
 そこで、宋の祖、と言われたものだから、まさか、趙匡胤をあなたが念頭に置いているとは思わず、てっきり、李世民を宋の祖だとあなたが説明した、と受け止めちゃったのですよ。

<鯨馬>

 ついむきになりお恥ずかしい限りです。
 華麗にスルーできない私の未熟さをお笑いください…。
 ・・・

<太田>

 どうして「まさか」だったのかをご説明しましょう。
 通例言われている、支那の2大名君である、太宗と康熙帝について、コラム#7070(未公開)で取り上げ、どちらも(名君か名君でないかはともかく、少なくとも)人間主義的名君ではない理由を説明しましたが、私は、どうしても安全保障を大前提として考えてしまうので、安全保障を擲っちゃったに等しい趙匡胤は、人間主義的名君であるかどうかを論ずるまでもなく、到底名君とは言えない、という認識だからなんですよ。
 もう少し具体的に申し上げましょう。
 太祖趙匡胤(927〜976年。皇帝:960〜976年)は、「有力軍人が皇帝に取って代わることは五代を通じて何度も行われてきたことであった<が、>このようなことが二度と行われないようにするために武断主義から文治主義への転換を目指した。・・・<太祖が亡くなって後を継いだ(注1)弟の>太宗は兄が進めた文治政策を強力に推し進め・・・その子の・・・真宗<の>代に・・・太祖以来の・・・文治主義がほぼ完成した。しかし文治主義は軍事力の低下を招<き、宋は、太宗死後28年目の1004年には遼、29年目の1005年にはタングートへの「朝貢国」に成り下がる羽目になり、太宗死後150年目の1126年には金によって滅ぼされてしまう(注2)>」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E5%AE%8B
わけです。

 (注1)太宗が太祖趙匡胤を殺害した、という説が有力。太祖死亡現場にいたのは太宗のみ、太祖の成人した息子が何人もいたのに太宗が即位、その後、南宋滅亡時まで、太宗の子孫が皇位を継承、等の状況証拠がある。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%83%E8%BC%89%E4%B8%8D%E6%B1%BA%E3%81%AE%E8%AD%B0
 仮にこの有力説が正しいとすれば、趙匡胤は自分の身一つ守れなかった無能な人物だ、ということになる。
 少なくとも、皇太子を定めていなかった点だけでも、彼は、危機管理意識が欠如していると言わざるをえないし、自分の死後の皇位の安定的継承に向けての措置を全くとっていなかった点を含め、名君どころか、皇帝失格の誹りを免れない。
 (注2)滅亡時には、「4歳から28歳までの多くの宋室の皇女達が連行され、金の王族達の妾にされるか(入宮)、洗衣院と呼ばれる売春施設に送られて娼婦とさせられた。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E5%AE%8B
 私見では、これは、趙匡胤の採用した文治主義が蒔いた種の必然的帰結だ。

 しかも、宋は南宋として細々と生きながらえることになるも、やがて、1279年にモンゴルに滅ぼされてしまい、ここにおいて、漢人文明そのものがほぼその生命力を絶たれてしまうのです。
 このような歴史を踏まえれば、趙匡胤は、漢人文明を滅ぼす原因を作ったところの、支那史上、最も無能な皇帝、と言って語弊があれば、少なくとも、最も無能な統一王朝始祖であった、と言わざるをえないのではないでしょうか。
 要するに、国、いや、文明を滅ぼす原因を作ってしまっては、どんな人間主義的統治をしても・・私はそれすら趙匡胤がしたとは思いませんが・・名君ならぬ、暗君である、当然、人間主義的名君ではありえない、ということです。

 どうやら、私の主張についても私という人間についても、分かっていただいている人は、世界中でほぼ皆無・・そんなもん分かるに値しない、と言われちゃいそうですが(トホホ)・・のようですねえ。
 この類のことにはもう慣れっこになっていたつもりだったのですが、今回のこのやりとりは、私にとって、「絶句」なんて言葉では到底形容することができないくらいのショックでした。

<gfgt6I/w>(「たった一人の反乱(避難所)」より)

 ・・・
 韓国国防トップが異例の反論
「韓半島有事の際の在日米軍投入は韓米防衛条約に含まれるもの」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/07/21/2014072100535.html

 この中で軍消息筋は「韓半島有事の際における在日米軍の韓半島配備(投入)問題に関しては、すでに<米国と日本の間で事前了解ができているため>別途に日本の事前了解を得る事案ではない」と言ってるし、民主党の時の『確認』云々の話も怪しい。
http://j.people.com.cn/n/2014/0721/c94474-8758577.html

<太田>

 安倍首相、実のところ、周到に準備した上で発言してるのかもね。
 だって、米国政府がこれまで一言も本件についてコメントしてないだろ。
 安倍発言、事前協議制度の実効化を期していて、米国に対して、自分の発言にクレームつけるようなことがあれば日本は国連軍地位協定から脱退する、と匂わした上でやったのかもよ。(だったらどんなにいいことか・・。)
 もっとも、いざとなったら、米国は事前協議制度なんて無視して行動するだろうがね。
 (安保条約に事前協議制度は書いてないんだから、米国行政府としては、日本が反対したので韓国救援にかけつけられませんでしたなんて米議会に対して申し開きはできないんだからな。)


 それでは、その他の記事の紹介です。

 朝日電子版も、たまにはまともな小特集を組むんだねえ。↓

 「早稲田大学は泥仕合覚悟で小保方氏の学位を剥奪すべし・・・」
http://astand.asahi.com/magazine/wrscience/2014072100003.html?iref=webronza
 「小保方氏博士論文 早大調査報告3つの疑問・・・」
http://astand.asahi.com/magazine/wrscience/2014072100001.html?iref=webronza
 「小保方論文でネット公衆から逃げた早大調査委・・・」
http://webronza.asahi.com/bloggers/2014072100001.html

 そんなことより、なんでドイツが一位なんだよ。
 また、EUを国として扱うなってんだ。↓

 「なぜわが国を侵略した日本の好感度が世界4位なのか=中国は国民の素養に改善の余地あり―香港メディア・・・」
http://news.livedoor.com/article/detail/9064034/

 日本側から見れば、(対赤露の)人間主義的戦争だった大東亜戦争中の、ほぼ唯一の(植民地解放)利他主義的作戦だったのがインパール作戦に決まってんだろうが。
 インド側から見れば、独立闘争、イギリス側から見れば、帝国主義戦争で決まり。↓

 「インパール作戦70年 追悼や資料館…地元で継承広がる・・・
 インパール作戦には、植民地を巡る帝国同士の争いやインドの独立闘争など、多様な側面がある。・・・」
http://digital.asahi.com/articles/ASG7L6R5ZG7LUHBI04N.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASG7L6R5ZG7LUHBI04N

 「戦犯」シリーズの続きだ。↓
http://j.people.com.cn/n/2014/0721/c94474-8758588.html

 ロシアは、ウクライナ軍の戦闘機がマレーシア機を撃墜したと主張。
 ウソなのが明白、と私も思うが、その根拠くらいは書いてくれよな。↓

 ・・・At a Defense Ministry briefing Monday, journalists were presented with concocted data purporting to show that the Malaysian flight could have been shot down by a Ukrainian warplane — a lie that is the more bold because of the ease with which it can be disproved.・・・
http://www.washingtonpost.com/opinions/the-west-needs-a-strategy-to-contain-the-worlds-newest-rogue-state--russia/2014/07/21/01021db0-10fc-11e4-8936-26932bcfd6ed_story.html

 機体の断片が蜂の巣になってるったって、空対空ミサイルによる撃墜じゃないって証拠にはならんがな。↓

 MH17 crash: FT photo shows signs of damage from missile strike・・・
http://www.ft.com/intl/cms/s/2/1d6a9ac2-10e3-11e4-b116-00144feabdc0.html#axzz38Ahm3l5S
 Jet Wreckage Bears Signs of Impact by Supersonic Missile, Analysis Shows・・・http://www.nytimes.com/2014/07/22/world/europe/jet-wreckage-bears-signs-of-impact-by-supersonic-missile-analysis-shows.html?hp&action=click&pgtype=Homepage&version=LargeMediaHeadlineSum&module=b-lede-package-region®ion=lede-package&WT.nav=lede-package&_r=0
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太田述正コラム#7072(2014.7.22)
<米独立革命とキリスト教(その3)>

→非公開