太田述正コラム#6779(2014.2.25)
<資本主義と不平等(その9)>(2014.6.12公開)

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<脚注:ピケティの発想の背景--フランスとその現状>

 「<フランス>は、この10年間で200万人近いフランス市民が自分達の国を去り、豪州、ブラジル、カナダ、支那、米国、その他の場所で<新たな>機会を求めたことを目撃してきた。
 フランスからの前回のこのような集団的脱出は、フランス革命の間に起こった。
 当時、貴族の大勢が、(むなしく)国王の復帰を待つために<フランスを>去ったものだ。
 しかし、最近の移住は、<このような>政治的動機によるものではなく、経済的な動機による。
 出発して行く人々には、圧倒的に若者達・・移民たちの70%は40歳未満だ・・、及び、フランスで勉強し、自分達の諸スキルをよその場所に提供する<ことにした>ところの、上級学位の保持者達だ。
 移民達は、<フランス>経済の<他の国々に比べて>相対的に低い諸給与、及び、恒常的に高い失業率・・現在では10.9%・・、によってやる気を削がれ、フランソワ・オランドが大統領になってからも、ひたすら<その数が>増え続けている。・・・
 亡命者の名簿群には、恐らくは豊かな、何十万人もの引退者達も含まれている。
 彼らは、少なくともその黄金の年月の一部を他の国々で消費をしていることになる。
 フランスの高コスト生活に嫌気がさし、彼らはより歓迎される諸環境を求めて<フランスを留守にして>いるわけだ。・・・
 フランスは、依然、異常なまでの美しさに恵まれている国であり、毎年7,000万人の観光客を惹きつけている。
 また、フランスは、今でも成功を収めている多国籍諸企業、良く教育された若者達、有能な軍隊、及び鉱物資源、を擁している。
 では、同時に経済的にして精神的であるところの、我々の不思議な弱さは、一体何に起因しているのだろうか。
 より深い説明が二つある、と私は思う。
 第一は、カトリシズムと共和主義の二重の遺産だ。
 フランス人のカネに対する姿勢(stance)を理解するためには、良く知られた、バルザックの一節である、「あらゆる大資産(great fortune)の背後には大罪がある」、を振り返らなければならない。
 <つまり、彼らは、>あたかも、物質的成功への渇きが、他者達の欲望(desire)を拒む(deprive)欲望を抱いたり自分達の夢を売り払ったり(prostitute)したことから生じたかのように<思っているのだ>。
 <こうして、>フランスの左と右の指導者達は、汚い金銭(filthy lucre)を非難し続けてきた。
 「私の、そしてフランス自身の、敵は、一貫してカネであり続けてきた」、と1969年のアンドレ・マルロー(Andre Malraux)によるインタビューでシャルル・ドゴール(Charles de Gaulle)は述べたものだ。
 負けてなるものか、と、オランドは、2012年の<大統領>選挙運動中に、自分の「敵は国際金融」だけだ、と宣言している。
 フランスの病(malaise)の第二の説明は、広範な大勢順応主義(conformism)だ。
 これは、逆説的にも、部分的に、我々の革命史に由来している。
 フランス人は、大革命を200年以上前に行ったため、彼らは、今日、革新(renovate)し適応する必要性から免れている、と思っているように見えるのだ。
 フランスの昨今の敗北主義に対する一つの不調和な音符が、この国の出生率が旧世界の最高の諸国の一つであることだ。
 未来についての陰鬱感に対して、我々は、揺り籠群を再び<赤ん坊達で>満たすことによって戦っているように見える。」
http://www.latimes.com/opinion/commentary/la-oe-bruckner-france-gloom-and-doom-20140223,0,5771679.story#axzz2uISWGmbc
(2月25日アクセス)

⇒フランスの経済学者と言えば、経済表のフランソワ・ケネー(Francois Quesnay。1694〜1774年)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%AF%E3%83%BB%E3%82%B1%E3%83%8D%E3%83%BC
、セイの法則のジャン=バティスト・セイ(Jean-Baptiste Say。1767〜1832年)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%EF%BC%9D%E3%83%90%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%BB%E3%82%A4
、数理経済学の祖のアントワーヌ・オーギュスタン・クールノー(Antoine Augustin Cournot。1801〜77年)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%8C%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%AE%E3%83%A5%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%83%BC
、一般均衡理論の父のレオン・ワルラス(Marie Esprit Leon Walras。1834〜1910年)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%AF%E3%83%AB%E3%83%A9%E3%82%B9
くらいしか思い浮かばず・・ノーベル経済学賞を受賞した、ジェラール・ドブルー(1921〜2004年)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC
は、フランス人だが米国の学者と言ってよい・・、英米はもとより、ドイツ語圏に比べてさえも、その数も質も遜色がある、という印象を私は抱いてきたが、フランスにカネ儲け嫌いないし金持ち嫌いの文化があるとすると、腑に落ちる、というものだ。
 ピケティは、このような文化の下にあるフランスの昨今の経済的停滞と人口の流出の根本原因を、米国を中心とするフランス以外の世界の国々を覆っている、カネ儲けないし金持ち志向の文化に求め、国際的再分配課税による、これらの国々の文化の是正を追求する形で、(近代)経済学批判を行っている、と理解することができるのかもしれない。
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(続く)