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太田述正コラム#6747(2014.2.9)
<『「里山資本主義」のススメ』を読む(その11)>(2014.5.27公開)

3 終わりに代えて

 日本におけるバイオマス発電の可能性は藻谷らが示唆している以上なのかもしれない、という気にさせるコラムを、ここで掲げておきましょう。

 「・・・日本の国土で安定して得られ、かつクリーンなエネルギー源で、コスト計算が可能なもの(コストが割高になるとしても計算が可能なもの)は、地熱発電と木質原料であろう。・・・
 国土の68%をも占める森林の木質資源(国土に占める森林面積の割合はフィンランド、スウェーデンに次ぐ)を本格的に活用するには、運搬用の道路を造り、専用のトラックや本格的刈取り機を導入するなど、大きな資本を伴う林業の再編も必要となる・・・。
 しかし、国産燃料が実現可能であるなら、外材との価格差を考慮してもなお、実行すべき課題であると考える。・・・
 エネルギー源が何であれ、いわば大きなやかんを利用している。化石燃料の燃焼か核分裂によるものかは異なるが、発生する熱を利用して蒸気タービン(と接続された発電機)を回すことに違いはない。
 近年、導入されつつあるものに、ガスタービンによる発電がある。ガスタービンのみでも発電可能であるが、ガスの燃焼熱を利用して蒸気タービンも同時に回すことができる。・・・
 すなわち、ガスタービン複合発電(GTCC:Gas Turbine Combined Cycle)である(図2)。今ふうに言うとハイブリッド発電で、発電効率がアップした。この技術と石炭のガス化を組み合わせたのが、石炭ガス化複合発電(IGCC)である。・・・
 石炭ガス化複合発電技術の開発により、低品位の石炭が利用でき、かつ排ガスも抑制された。この技術を利用した発電設備は、すでに商用発電の段階に達している。・・・
 この石炭を、より環境負荷が低く、しかも国産の樹木に置き換えようというの<だ。>」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39784
(1月30日アクセス)

 さて、日本文明に次ぐ優れた文明であるアングロサクソン文明においても、藻谷らが紹介する、日本における里山資本主義等の勃興に対比しうるところの、その持前の反産業主義の再勃興の兆しがうかがえます。
 以下は、フィリップ・ロスコー(Philip Roscoe)の新著の書評からです。
 ちなみに、ロスコーは、英セント・アンドリュース大マネージメント准教授です。
http://www.st-andrews.ac.uk/management/aboutus/people/academic/philiproscoe/

 「経済学は、人間の誤ったイメージを体現しているだけでなく、人間をその誤ったイメージに合致するように作り変える、とフィリップ・ロスコーは主張する。
 それは、「それが理論化している手先(agent)・・自利的にして計算高く、不正直でさえる・・を実在化させる」と。
 それは、我々一人一人を「一人企業家(entrepreneur of the self)」に鋳造し直す、と。・・・
 金銭的インセンティヴの悩ましいのはそれが機能しないからではない。
 それは、しばしば、少なくとも短期的には機能するのだ。
 しかし、それは、専門職としての誇り、制度への忠誠心、及び、公的精神、といったその他の動機付けのより気高き源泉を「外に押し出してしまう(croud out)」のだ。
 彼らは、彼らが前提とする類の抜け目なく金銭ずくの人物を実在化させるのだ。 
 人口に膾炙している智慧がいつも教えてくれるように、もしあなたが人々をならず者(knave)のように扱えば、彼らはならず者のようにふるまうようになるものなのだ。
 ロスコーの物語におけるもう一つの悪漢は計測(measurement)だ。
 点数付け諸システムは、生活の質、知的業績、性的魅力、その他のこういった手に触れられものを含む、太陽の下にあるあらゆるものについて存在している。
 政府と企業のソフトウエアの中に埋め込まれることで、これらの諸システムは、彼らが計測すると主張している行いそのものを形作るのだ。」
http://www.theguardian.com/books/2014/jan/23/spend-therefore-philip-roscoe-review
(1月24日アクセス)

 人間主義の日本文明下の我々が先頭に立ち、一番見どころのあるアングロサクソン文明下の人々の人間主義の徹底化を図ることから始め、最終的には、人間主義を世界に普及させることによって、自然との関わりを含めた、より人間、そして人間以外の生き物、更には自然、に優しい世界を作ることを目指そうではありませんか。

(完)

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