太田述正コラム#6619(2013.12.7)
<日本の暴力団(その2)>(2014.3.24公開)

 「暴力団のシノギにはどのようなものがあるのでしょうか。
 まず警察は・・・覚醒剤、恐喝、賭博、ノミ行為の四つを挙げています。
 覚醒剤は・・・すべて・・・国外で製造されており、日本に密輸入されているのです。・・・

→この中に売春が登場しないのは、日本では売春が事実上野放しであって実質的に違法行為ではない、という実情を反映している、と言えそうです。
 興味深いことに、イタリアと米国のマフィアでは、「売春と賭博は「名誉ある男」が行うビジネスではないとされており、ご法度とされている。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%A2
ところであり、売春をシノギにしない点ではたまたま同じであるけれど、歴史的に賭博が生業と言ってもよい日本の暴力団とはかなり様相が異なっていますね。(太田)

 大きな暴力団では表向きには、傘下の組員が覚醒剤を扱うことを禁止しています。・・・
 暴力団の処分で一番重いのが「絶縁」です。「絶縁」になると、「永久に組に復帰できない」というのが原則です。一方、「破門」は一定の年月が過ぎると、組に戻れる可能性があります。・・・
 しかし、最近・・・覚せい剤を扱ったという理由で処分を受けた<という>・・・話を聞かないのは、・・・現在、・・・「シノギ」のネタがあまりなく、覚醒剤は扱えば必ず儲かるものですから、上の者も見て見ぬ振りをしているのが現実なのです。・・・
 暴力団の伝統的シノギとしての「恐喝」とは、・・・「カツアゲ」とも呼ばれています。・・・
 伝統的シノギとしての賭博にはいろいろな種類があります。・・・
 バブル経済絶頂期の調査で、総計が1兆3019億円、当時の暴力団員数は約8万8000人でしたから、一人当たり年収は1479万円にも上りました。当時、暴力団の組員たちはなにより地上げで巨額のお金を稼いでいました。
 ・・・今はこうはいきません。
 ずっと縮減しているのです。・・・
 <恐喝の一類型であるところの、>みかじめ料・・・の相場なのですが、・・・概してソープランドやデリヘル、ファッションヘルスなどの風俗関係とギャンブルがらみが高く、「飲む」ことが主になっているような店、つまりスナックやバー、キャバクラ、高級クラブなどはそれほど高くはありません。
 ただし「飲む」店でもホストクラブはどういうわけか風俗店並みで、しかも大阪などでは支払いを拒むことができず、必ず払うと決まっているそうです。・・・
 最近、みかじめを払うと暴力団対策法や暴力団排除条例で払った方も罰せられるというので、飲食店ビルや風俗店ビルのオーナーたちが、ビルに入る全業者から家賃と一緒にみかじめを取り立てたりしています。・・・

→この抜け道も早晩ふさがれることでしょう。
 というか、現行法でも対処することは不可能ではなさそうであるところ、警察が手心を加えているのでは?
 いずれにせよ、暴力団は、日本の恥部を炙りだしてくれる存在である、と言ってよさそうです。(太田)

 暴力団系の土建会社、建設会社は公共工事の下請けに入ることが難しくなっています。全都道府県には暴力団排除条例があり、暴力団系企業の参入を拒んでいるからです。そうした系統でややシノギになっているのは、解体屋と産廃(産業廃棄物)の処分だけと言われています。・・・
 暴力団系企業は中国人など外国人を使って引き剥がし作業をやっている。外国人がどこまでアスベスト被害を承知しているか、業者がまるきり害を知らせていないのか、作業員がカネになるならと危険覚悟なのか、・・・
 <しかも、>暴力団系業者は・・・3分の1ぐらいを正規の手続きで処分して、後はアスベストを丸めて山の中に埋める。・・・
 だから暴力団系の解体業者は堅気の同業者に比べて競争力がある。料金も安くできるし、大きく儲けることもできる。・・・
 <また、>産廃処理業には運搬業、中間処分業、最終処分業の三つがある。暴力団が手がけているのは一番簡単な運搬業で、・・・彼らは廃材などを処分場に持っていかず、山の中で不法投棄する。」(41〜44、46、49、56〜62)

→こんなことがまかり通っているのは、間違いなく、警察が手心を加えているからでしょう。(太田)

 「なぜ暴力団に入ったのか、という・・・1981年<の>・・・調査報告があります・・・。・・・
 組員の「格好のよさにあこがれて」が49%を占めます。・・・
 次に「享楽的な生活ができるから」が23%、「特に目的はない」が22%、「自分のような者でも認めてくれるから」が20%、「当面の生活の維持のため」が20%、「義理・人情の世界にあこがれて」が16%などと続きます。・・・
 構成員、準構成員を含め、暴力団に入ったときの年齢は18〜19歳が一番多く37%、次に16〜17歳が24%、20〜21歳が20%、22〜23歳が12%となっています。
 つまり暴力団には、中卒や高卒が多く、大卒は少ないということが、この数字からも分かります。・・・
 組員になると、女性は敬遠しそうなものですが、逆に「格好よい」「貢いでくれる」などと、女性にもてています。・・・
 女のヒモになるのは組員の基本的なシノギの方法です。・・・
 <また、>組員の妻や愛人に・・・美人や妖艶な女性が多いの・・・<は、ムショ暮らしになる等、>いざという時、「売り物」にな<り、家計を支えることができ>るからです。・・・
 組に入るような人は子供のころから悪ガキです。ヤンチャ、不良、番長、いろいろな呼び方があるでしょうが、要するに親も手に余すワルが多いのです。・・・
 暴力団は「無職渡世」といわれるくらいで、職業を持たないからヒマです。・・・
 部屋住みの間、組長や兄貴分が、こづかい程度の金銭はくれます。・・・
 そうこうしながら、がんばっていると、組長から親子の盃を許されるときが来ます。・・・
 <もっとも、>現代では組員の4割程度しか親子盃<(注4)>を経験していないという調査もあります。・・・

 (注4)稲川会のトップレベルの親子(しんし)盆だが、実写がある。揃いの紋付袴を着て神式で執り行われ、酒の毒見までなされる。そして、会歌まで登場する。まことに興味深い。こういった暴力団の儀式の型だけでも無形文化財で残さなければ・・。
http://www.youtube.com/watch?v=lNxL_tHWIP0
http://www.youtube.com/watch?v=fhZ9snrcerw
http://www.youtube.com/watch?v=-HZtFlKmLqk 
http://www.youtube.com/watch?v=g2rmSJt62Uc
http://www.youtube.com/watch?v=gz4rfh7Zksc
http://www.youtube.com/watch?v=A_aHu1Le90g
http://www.youtube.com/watch?v=dDYjqPqsyGs

 親子の縁を結び、正式に暴力団の組員になれば、部屋住みの時代とは逆に、組員が組長のために、お金を差し出すようになります。組で決められた毎月の会費や、「義理」とか「義理ごと」とかいわれる慶弔交際費などとは別にです。・・・
 組員は組の名前を使ってもいいという許しの下、飽くまでも自分の才覚と努力でシノギを行います。同僚(つまり兄貴分)と一緒に動く場合もありますが、基本は自営なのです。ある面、全国展開するフランチャイズのコンビニチェーンに加盟する店舗のオーナーに似ているとも言えます。」(65〜68、70〜73)

→大変面白いけど、コメントが出てきません。
 例えば、どうして、暴力団員などという、リスクだらけの男性が女性にモテるのでしょうね。
 読者の皆さんのご意見をお聞かせいただきたいものです。
 それはそれとして、暴力団に入ろうとする若者が選択できる、(傑出したタレントが求められるスポーツや芸能以外の)魅力ある他の進路を増やさなければならないところ、技能士ないしマイスター制度
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC
等の質量ともの充実が強く望まれます。(太田)

(続く)