太田述正コラム#6599(2013.11.27)
<アングロサクソン・欧州文明対置論(その9)>(2014.3.14公開)

 (9)今後の展望

 「英語圏は、人種的親近感ではなく、「頭の血液<の親近感>でもって」定義される。・・・
 英語圏の諸価値、とりわけ、個人主義の独特の強調、は、インターネット時代に完全に適しているはずだ。
 そして、これらの諸価値は、どんな場所にも根付くことができる。」(D)

 「何よりも良いことには、英語圏の諸価値は持ち運びができる。
 それこそが、どうしてバミューダ(Bermuda)<(注18)>がハイチ(Haiti)<(注19)>ではなく、どうしてシンガポール<(注20)>がインドネシアではなく、どうして香港<(注21)>が支那ではないか、の理由なのだ。」(C)

 (注18)「バミューダ諸島(・・・Bermuda Islands)は、北大西洋にある諸島で<英国>の海外領土である。<英国>の海外領土の中でも、政治的・経済的な自立度が高い。金融部門と観光産業に支えられており、2005年には、一人当たりのGDPが・・・世界で最も高い数値を記録した。タックス・ヘイヴンとしても知られている。・・・<英>女王を国家元首とする独立国 (Commonwealth) に近く、単にバミューダとも呼ばれる・・・人口 推計(2007年) 66,163人・・・」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%80%E8%AB%B8%E5%B3%B6
 (注19)旧仏領。「人口 総計(2008年) 10,033,000人・・・」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%81
 (注20)「人口 総計(2012年) 5,410,000人・・・」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB
 (注21)「人口 総計(2009年) 7,026,400人・・・」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A6%99%E6%B8%AF

→バミューダなんてのは、あえて言えば芥子粒のような存在ですし、シンガポールも香港も、比較されているインドネシアと支那とは比べようもないちっぽけな存在であって、それぞれ単なる都市です。
 換言すれば、旧大英帝国領があれほど広大で人口も多かったというのに、本国及び拡大英国は別として、自慢できるのはこの3カ所くらいしかない、というわけです。
 そもそも、この3カ所は、バミューダはタックス・ヘイヴンだからこそ、また、シンガポールと香港は自由貿易港(都市)だからこそ、周辺諸国や周辺地域に比べて相対的な経済的繁栄を達成しているだけであって、人口1千万人を超えるような国または領域であれば、税金をゼロにしたり、関税をゼロにしたりはできないことくらいは誰でもすぐ分かります。
 また、この伝でいけば、日本の旧植民地・・世襲制スターリニズム下にある北朝鮮を除く・・である台湾と韓国という、相対的に大きな人口と領域を持つ国の経済繁栄ぶりと自由民主主義成熟度からして、イギリス文明の「諸価値」に比べて日本文明の「諸価値」の方が、より「どんな場所にも根付くことができ」、よりどこにでも「持ち運びができ」る、すなわち、より普遍性がある、ということにならざるをえません。(太田)

3 終わりに

 18世紀のスコットランドのヒュームやアダム・スミスら同様、ハンナンは、イギリス人に通暁した非イギリス人たる英国人として、イギリス人の本質を、それぞれ別の角度から剔抉したわけですが、ハンナンが、ヒュームやスミスに比べて知性に遜色があるため(?)、拡大英国と米国とを英語圏諸国として一括りにするという誤りを犯した点はともかく、イギリスと欧州大陸諸国とが文明的に別個であって両者が相互に対峙関係にある、と主張したことは大いに評価できます。
 これを踏まえ、我々としては、拡大英国と米国とを峻別するとともに、イギリス(アングロサクソン)文明と日本文明の比較を踏まえ、日本文明が最も普遍性のある文明であることを明らかにすべきでしょう。
 私の三次元イメージは、高空から俯瞰すれば、個人主義文明たるアングロサクソン文明とそれ以外の全体主義諸文明との中間点に中庸の文明たる日本文明が位置し、地平線から眺めれば、左のなだらかな稜線半ばにアングロサクソン文明、右の急峻な稜線と地平線の接点にそれ以外の全体主義諸文明を従え、山頂に日本文明が鎮座している、というものです。
 これは果たして、漢人がつい最近まで公然と抱いてきたところの、そしてイギリス人がかねてより密かに抱いているところの、それぞれの中華思想顔負けの、一日本人による超中華思想なのでしょうか。
 それを判断するのは、皆さんです。
 
(完)