太田述正コラム#6722(2014.1.28)
<皆さんとディスカッション(続x2157)>

<太田>(ツイッターより)

 現在スウェーデンやフィンランドに住んでいる人々の直系の先祖と考えられる7,000年前の欧州人は、目は青かったけれど、浅黒い(dark)肌の色をしていたことが分かった。
 つまり、「白人」が生まれたのは農業時代に入ってからだってこと。
http://www.bbc.co.uk/news/science-environment-25885519
 驚き!

<はま>

 『--日本の世界史的使命/「アーロン収容所」再読(その15)--』の配信ありがとうございました。
 太田さんのコラムを長年読んできて、考え方が変わってきてるとは感じていましたが、忙しい時には全く読めない日々もありますし、明確に軌跡をたどれていたわけではなかったので、大変助かりました。
 太田さん自身も、そうとは意識していなかった時期もあるというのも納得でした。

 太田さんのエスノセントリズム的人間主義礼賛に対する欧米からの批判としては、「他人の好意をあてにするような人間関係は幼稚だ」というものが考えられます。
 また相手の事情を察して適当なところで妥協するなんてことは大の男のすることではなく、コンフォーミストだと非難、軽蔑されるかと思います。
 他人(や動物)を自分と同等に扱うなどというのは、恥だとさえ思っているのではないでしょうか。
 弱者(クジラとかチベット人とか)救済というエリート意識は大いに発揮しても。

 こういった個人主義に反撃するには、日本が勝ち続ける以外なかったように思いますが、第二次大戦で鬼畜米英に負けてしまいました。まさに相手が鬼畜であり、人種差別主義者で原爆も平気で落とすようなメンタリティだったから負けました。
 負けが確定したあと、どのように負けるかということで、アメリカに降伏する方がソ連よりましという選択はかろうじてでき、天皇制(国体)はなんとか守ることができたのでしょう。

 だから太田さんのおっしゃる人間主義礼賛には私も大賛成するものですが、日本が戦争に負けたからには、それはエスノセントリズムでしかないという扱いを受けても、むべなるかなという、そういう状況ではないでしょうか。

<太田>

 一つは、先の大戦で、戦争目的に照らせば、英国は敗北、米国とは引き分けであるということを連中に理解させることも、第三者に米英の参戦のせいで数千万人の死という大惨禍を戦後引き起こしたとことを連中に理解させることも可能である、と私は思うのです。
 これが、彼らの相対的劣位の文明(日>英>米)の歪みがもたらしたものである、という自覚への第一歩になることでしょう。
 もう一つは、支那が(欧米文明ではなく)日本文明の至上性を認め、日本文明の総体を継受しようとしていることです。これが凄まじい決定打になることでしょう。
 中共当局自身がそれを実質的に認めるまでにそれほど時間はかからない可能性もある、と私は希望的観測を交えて予想しています。
 (人民網を読んでおれば、実質的に既に認めてるのに等しい、と太田コラム読者には言われるかもしれませんがね。)
 しかし、こちらの方は、その過程で、ヘタをすると大変な副作用を起こす恐れがあることを心すべきでしょう。
 「提携」した日中に対する黄禍論の復活です。
 しかも、かつてのドイツ中心のものではなくて米英中心の黄禍論です。
 もっとも、このことも、私は中共当局は織り込み済みだと踏んでいます。
 中共当局が、政治的には・・正確には政治においてのみ・・日中対立を演出していることは、日本の再軍備/「独立」までの間に時期尚早的に米英で黄禍論が噴出することの回避にもつながっているわけです。

 ついでに、『アーロン収容所』についての補足です。
 会田が、ルールを守ることがどんな蛮行を可能にするかを同書で描いたことは、アングロサクソン文明への痛烈な批判になっています。
 それと、個別具体的対応を旨とする日本文明とのどちらが上位の文明なのか、ということを皆さんにお考えいただきたいのです。

 さて、本件がらみの本日の記事をまとめておきます。

 NHK会長の発言を捉えて、慰安婦問題と安倍首相の靖国参拝の両方を改めて非難したコラムだ。(どちらも、まさに同じ次元で全面的反論が可能。)↓

 Sorry We're Not Sorry: Japan TV Exec Revives Comfort Women Debate・・・
http://blog.foreignpolicy.com/posts/2014/01/27/sorrynotsorry_japan_s_nhk_head_says_all_warring_nations_used_comfort_women

 日中対立を全球的リスク要因と捉えるコラム2つだ。
 (そもそも対立なんかしてないわけであり、高みに立って日中両者をこき下ろすことがいかに噴飯ものかって改めて思うね。)↓

 ・・・Hardly any country in the world wants to take sides in the Sino-Japanese battle of national egos. Instead of harping on history, China and Japan should tackle concrete issues to reconcile their differences — and there aren’t that many.・・・
http://www.nytimes.com/2014/01/28/opinion/insults-over-islets.html?ref=opinion
 Anxiety Rising Over Relations Between Japan and China・・・
http://dealbook.nytimes.com/2014/01/27/anxiety-rising-over-relations-between-japan-and-china/?ref=world

<sPT.Djck>(「たった一人の反乱(避難所)」より)

 安倍は宗主国アメリカに50兆円貢ぐ模様
http://www.google.co.jp/gwt/x?gl=JP&hl=ja-JP&u=http://www.asyura2.com/12/hasan78/msg/877.html&q=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AF%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%81%AB%E3%81%84%E3%81%8F%E3%82%89%E8%B2%A2%E3%81%84%E3%81%A0%E3%81%8B&sa=X&ei=CQ_nUpWCFoTKkwXQ4ICwAQ&ved=0CCoQFjAA
 ↑
 アメリカは日本を虐待すればする程従順になると見切っているか。
 心理学の理論しかり 衝撃と畏怖作戦とか。 

<NK>

 北京<から>・・・23日・・・帰宅いたしました。・・・
 中韓接近、日中開戦近しで、今年は大変ですね。
 日中間のANAの機内放送からも中国語が消え、日本語、英語だけになりました。

<太田>

 <NK>さんの、現在の日中関係等の認識、完全に誤っている(と少なくとも私は)思います・・・。

<NK>

 私は中国研究家でも中国専門家でもありませんし、また文献主義偏重を一般にあまり評価していませんが、<中国にも自宅を持ち、>・・・多数の中国人識者とも面談しています<し、>・・・中国以外の海外での見聞も入っています。
 少なくも「完全に誤り」といわれたことはわが生涯で太田さん以外にはありません。
 多くの日本人に私の現場体験を含む判断(中国情報)は評価され歓迎されています。

<太田>

 それでは、その他の記事の紹介です。

 なかなか読ませる記事二つ。
 前者は製造企業内での人間主義的管理の崩壊を示す事例、後者は人間主義の病理を示す事例。↓
 「アクリ事件「製造現場では10円の賃金格差が軋轢生む」と識者・・・」
http://news.infoseek.co.jp/article/postseven_238803
 「給食パンでノロ集団食中毒 1枚ずつ検品時に汚染、問われる異物対策・・・」
http://news.infoseek.co.jp/article/sankein_snk20140128524

 横井小楠ならぬ吉田松陰こそ戦前の日本の規定者?↓

 「韓国の植民地化、知識人が語る吉田松陰と米国の「責任」・・・
  吉田松陰は韓半島(朝鮮半島)への侵略を主導した伊藤博文や桂太郎などの師匠であり、著書『幽囚録』を通じ、朝鮮半島や満州の征服などを説いている。明治維新後の日本は、吉田松陰の主張をそのまま実践するかのように、韓国を併合し、満州を占領するなど、侵略戦争を繰り広げた。李教授は「安倍首相は『最も尊敬する人物』に吉田松陰の名を挙げたことがある。安倍首相が靖国参拝に先立ち、吉田松陰の墓に参拝した意味を十分に把握すべきだ」と述べた。・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/01/28/2014012801338.html

⇒確かに、吉田松陰は、以下のように膨張主義を唱えた。

 「『幽囚録』で「今急武備を修め、艦略具はり礟略足らば、則ち宜しく蝦夷を開拓して諸侯を封建し、間に乗じて加摸察加(カムチャッカ)・隩都加(オホーツク)を奪ひ、琉球に諭し、朝覲会同すること内諸侯と比しからめ朝鮮を責めて質を納れ貢を奉じ、古の盛時の如くにし、北は満州の地を割き、南は台湾、呂宋(ルソン)諸島を収め、進取の勢を漸示すべし」と記し、北海道の開拓、琉球(現在の沖縄。当時は半独立国であった)の日本領化、李氏朝鮮の日本への属国化、満洲・台湾・フィリピンの領有を主張した。松下村塾出身者の何人かが明治維新後に政府の中心で活躍した為、松陰の思想は日本のアジア進出の対外政策に大きな影響を与えることとなった。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E7%94%B0%E6%9D%BE%E9%99%B0

 しかし、下掲のように、国学や水戸学にも膨張主義が見られたし、幕府内にも少なくとも膨張主義的修辞を用いる首脳が存在した。だから、それは何も吉田松陰に限った話ではなかった。

 「日本では江戸時代後期に、国学や水戸学の一部や吉田松陰らの立場から、古代日本が朝鮮半島に支配権を持っていたと『古事記』・『日本書紀』に記述されていると唱えられており、こうしたことを論拠として朝鮮進出を唱え、尊王攘夷運動の政治的主張にも取り入れられた。幕末期には、松陰や勝海舟、橋本左内の思想にその萌芽をみることができる・・・安政五カ国条約の勅許の奏請にあたり、間部詮勝は「(13、4年ののちは)海外諸蛮此方之掌中ニ納候事、三韓掌握之往古ニ復ス」る状況を実現することができると朝廷を説得したとされる。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%81%E9%9F%93%E8%AB%96
 (なお、下掲も参照した。
https://ds.lib.kyutech.ac.jp/dspace/bitstream/10228/3356/1/human18_p1_16.pdf )
 そもそも、下掲のように、維新政府部内で征韓論を唱えた者は、土佐藩と佐賀藩の出身者・・西郷は薩摩藩出身だが、「征」韓には反対している・・ばかりであり、(吉田松陰の薫陶を受けたところの)長州出身者たる木戸孝允は反対論を唱えたところに象徴されるように、維新政府が吉田松陰の対外膨張論の影響を受けていた、とするのは困難だ。
 (征韓反対論者は単に征韓時期尚早論に過ぎなかったのではないか、という問題については、いずれ改めて論じたい。)

 「<1873年、>参議である板垣退助は閣議において居留民保護を理由に派兵を主張し、西郷隆盛は派兵に反対し、自身が大使として赴くと主張した。後藤象二郎、江藤新平・・・副島種臣・・・らもこれに賛成した。いったんは、同年8月に明治政府は西郷隆盛を使節として派遣することを決定するが、9月に帰国した岩倉使節団の岩倉具視・木戸孝允・大久保利通らは時期尚早としてこれに反対<した。>」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%81%E9%9F%93%E8%AB%96 (太田)

 中共の市民運動家が守るべき3つのラインがある、との記事。↓

 <政治の領域に踏み込むな、地方レベルの問題への取り組みに留めよ、街頭運動を行うな。↓>
 ・・・Chinese civil society actors have long known there are three red lines they mustn't cross if they don't want to end up on Beijing's list of troublemakers. The first is between the political and the non-political: If the issues they engage with are political in nature, civil society actors must find ways to depoliticize them and present them as technical issues instead. The second line is between national and local: Any attempt to establish cross-regional organizations or movements must be strictly avoided. Everything must be kept localized and uncoordinated with activities in other locations. The third is street campaigns. Criticizing the authorities in conference rooms, advocacy reports, or on the web is one thing. Once critics take to the street, it's a different ballgame. ・・・
 <今回、中共幹部の資産公開等を訴えた市民運動家が有罪となったことで、習近平が改革志向ではないと捉えるべきではない。単に、改革は党主導のものだけよ、ということ。↓>
 The sentencing of Xu -- and the crushing of the New Citizens Movement that it represents -- does not necessarily mean that the new leadership will not contemplate any political reform. But the party will not allow any outside force to dictate reform's timing, pace, or agenda; if reform happens, it will be from the top down. ・・・
http://www.foreignpolicy.com/articles/2014/01/27/clique_bait_xu_zhiyong_anti_CCP_rumors

 当初キリスト教では殉教的自殺が流行ったが、ローマのコンスタンティヌス帝が自殺を犯罪としてから、キリスト教教会は自殺は悪魔の所業ということにした。1750年前後までは、自殺者は重罪者として死体が「処刑」され、財産は没収された。(とにかく、キリスト教は極端だわ。)↓

 ・・・The early Christian martyrs may have marched willingly to death, but no sooner was Christianity instituted than Constantine made suicide a crime. Throughout the middle ages and until roughly 1750 (when the word also came into common usage), self-murder was Satan's work: suicides would be retried, though dead, then hanged, drawn and quartered, their property given over to the state.・・・
http://www.theguardian.com/books/2014/jan/27/stay-jennifer-michael-hecht-review

 高齢者も頭脳は衰えないってさ。
 記憶力は減退しても知恵は増すって。↓

 ・・・an increase in crystallized intelligence can account for a decrease in fluid intelligence・・・
http://newoldage.blogs.nytimes.com/2014/01/27/the-older-mind-may-just-be-a-fuller-mind/?_php=true&_type=blogs&hpw&rref=health&_r=0
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

太田述正コラム#6723(2014.1.28)
<個人の出現(その1)>

→非公開