太田述正コラム#6401(2013.8.20)
<日進月歩の人間科学(続x34)>(2013.12.5公開)

1 始めに

 人間主義とも因縁浅からぬ、良心についての話題がNYタイムスに載っていたので、さっそくご紹介することにしました。
http://www.nytimes.com/2013/08/18/opinion/sunday/when-virtue-begets-vice.html?ref=opinion&_r=0
(8月19日アクセス)
 私の翻訳力のためではなく、話題の性格上、決して読みやすくないことをあらかじめお断りしておきます。

2 良心について

 「どうして徳(virtue)が時にはより多くの徳を生み(beget)、時には<より多くの>悪徳(vice)に導く(allow)のだろうか。
 <この難問を解明しようと多くの学者が研究を行ってきているが、>これらの研究は、いかに良心が働くかに興味深い光をあてることになっている。・・・
 <ある研究では、>我々は、好ましい(desirable)ふるまいにおいてのみならず、より気高くない(less noble)行為においてもまた、一貫性(consistency)を追求する<、ということが分かった。>・・・
 しかし、他の研究では、良いふるまいは、時に人々に対して悪くあることの免許証を与えられたような気持ちを抱かせることを示(show)した。・・・
 <一見相矛盾するこの結果の説明として、>我々が過去の行い(deed)のことを考える場合に・・例えば、遠い過去において起こったことに焦点をあてることによって・・我々は道徳的一貫性を示す(demonstrate)<、という説がある>。
 <実際、>はるか昔にやった尊敬すべき行為を思い起こした被験者達は、恥ずべき行為を思い起こした者達に比べて、より多くのボランティア的な仕事を行おうとする気持ちを報告した。
 これに対し、具体的な思考態度(mind-set)を用いて過去の行いを考える場合は、道徳的補償<要求>へと導く<、というのだ>。
 <つまり、>・・・最近<自分が>やった尊敬すべき行為を思い起こすと、ボランティアへの気持ちの減少へと導<く、というのだ>。・・・
 <このように、善を悪で補償する場合もあれば、その反対に、悪を善で補償する場合もある。>
 具体的に考えることは、目標・・例えば、良い人間であること・・に向けての我々の現状の進捗状況だけに(locally)に焦点をあてさせ、十分に休養をとるか全力を傾けるかのどちらかになってしまいがちだ。<すなわち、十分に休養をとってしまうことも大いにありうる、というわけだ。>
 過去の行為について、その時執着(adhere)していた倫理的諸原則ではなくて、それがどういう結果(effects)をもたらしたかでもって、その行為を考察すると、やはり、我々のふるまいを妥協(moderate)させてしまう<傾向がある、と言える>のかもしれない。・・・
 諸原則ではなく、どうなったか(outcomes)を考察することは、明らかに、実際的な(pragmatic)トレードオフ・・この場合は、当人の徳と当人の自利(self-interest)の間、すなわち、一つ君にあげるのだから、僕も一つもらってもいいのではないか、といったこと・・<についての悩み>に拍車をかける。
 しかし、ある倫理的原則に執着していたか否かでふるまいを思い起こした被験者達は、道徳的一貫性を示した。
 当初の行為が、何か費用が嵩み、従ってコミットメントを暗示しているものであった場合には、一貫性が最も確保されやすいのかもしれない。・・・
 前向きの(positive)道徳的アイデンティティ<を持つこと>は、我々をいい気持にさせるだけでなく、それが機能的な役割を演じるのかもしれないことを、研究者達は示唆してきた。
 研究者達の幾人かは、自分が信用できる人物(trustworthy)であることを他人に納得させる一番良い方法は、まず自分自身を納得させることだ、と述べる。
 健康的な良心を維持することは、<他人を>操縦するための最善の策略(ruse)なのかもしれない<、ということだ。>
 他<の研究>者達は、・・・そうすることは、近視眼的な誘惑に抗することをより容易にする、と主張する。
 自分が善であると考えれば、善であるという選択は自動的になされる<、というわけだ>。
 他人(や自分)に高尚なふるまいを推奨するためには、我々は、アイデンティティが重要であることを考察しなければならない。
 <そのためにも、>親切な行為の後では、何をやったかではなく、それがいかなる性格を顕現させたを褒めよ。・・・
 <逆に、>悪行(misdeed)の後では、その人ではなく、その行為に焦点をあてよ。」

3 コメント

 徳の高い、他人に信頼される善良な人間たれ、そのためには、自分自身を信頼し、目先の損得勘定にこだわらず、長期的視点で物事を考えよ、という教訓が、最新の人間科学から導き出されたわけです。
 一言で言えば、人間主義のススメですね。
 しかし、そのためには具体的にどうしたらよいか、は必ずしもはっきりしません。
 結局のところ、日本で生活をするか、座禅/瞑想をするか、がイチバン、ということではないでしょうか。