太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/

太田述正コラム#6361(2013.7.31)
<日支戦争をどう見るか(その10)>(2013.11.15公開)

3 終わりに代えて--私が考えていること

最初に、関西オフ会の4日前に読み、私に大きなヒントをくれた記事
http://www.nytimes.com/2013/07/24/books/a-religious-legacy-with-its-leftward-tilt-is-reconsidered.html?hpw&_r=0
(7月24日アクセス)のさわりをご紹介しましょう。

 「何十年にもわたって、戦後の米国の宗教史で支配的であったのは、福音派キ
リスト教の勝利の物語だった。
 この物語によれば、1940年代から、福音派の上げ潮がその力とアイデンティ
ティを主張し始め、最終的には、そのよりリベラルな相手方たる主流 派
(mainline)プロテスタントを、教会の会衆席<(=信徒数)>において、奉納
盆(offering plate)<(=宗教的寄付金)>において、そして投票箱におい
て、潰走させたのだ。・・・
 しかし、今や、宗教史家達の中核において次第に増えつつある人々が、メソジ
スト、長老派、英国教会といった色あせた体制の遺産について、その人 権や人
種的正義、次第に増えつつある「霊的(spiritual)だけれど宗教的ではない」
衆生はもとより、バラク・オバマの陰影的 (shaded)道徳的現実主義(moral
realism)にさえ、ずっと(enduring)影響力を及ぼしてきたことを追跡するこ
とによって、考え直しつつある。・・・
 <そもそも、>福音派について研究するのであれば、彼らが憎んだ人々との関
係において研究すべきでは<、というわけだ。>
 憎んだというのは適切な言葉なのであって、この感情は双方向において働いて
いた。
 スコープス裁判(Scopes trial)<(注23)>に関して1926年に『キリスト教
世紀(The Christian Century)』・・事実上、主流派プロテスタンティズムの
家庭雑誌・・に掲載された社説は、原理主義的キリスト教を、近代的かつ合理的
な信仰への進軍 の途上における一時的迂回たる「過ぎ去った事象」である、と
切り捨てた。

 (注23)州がカネを出している学校において進化論を教えることを禁じたテネ
シー州の法律にあえて違反した高校教師のジョン・スコープス (John Scopes)
を裁いた裁判。結局、1925年7月に、技術的理由でスコープスは無罪放免となっ
たが、問題提起を狙ったスコープスの目的は達成された。
http://en.wikipedia.org/wiki/Scopes_Trial

 しかし、1940年代に、福音派は、主流派の指導者達・・その多くは後に、1956
年にビリー・グラハム(Billy Graham)<(注24)(コラム#2388)>師によっ
て創始された雑誌である『今日のキリスト教(Christianity Today)』におい
て、共産主義者であると非難された・・によって擁護されたところの、国連その
他の大義に対して<反対>動員をかけた。

 (注24)1918年〜。「現代<米国>の最も著名なキリスト教(南部バプテスト
教会)の福音伝道師、牧師、神学校教師、福音派キリスト者。 <米国>の伝道
師と呼ばれる。」米ホイートン大学で人類学を学ぶ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%8F%E3%83%A0
 「ホイートン大学・・・は・・・イリノイ州ホイートンにある、私立の福音主
義の大学。シカゴから40km西に位置する。」卒業生に坂西志保がい る。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%B3%E5%A4%A7%E5%AD%A6
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9D%82%E8%A5%BF%E5%BF%97%E4%BF%9D

 『キリスト教世紀』は反撃し、グラハム氏は、マジソン街流(Madison
Avenue-style)<(注25)>行商人であって、「怪物的クリシュナ神
(monstrous juggernaut)」を率いて「プロテスタントのキリスト教を半世紀昔
に戻そう」としているとした。

 (注25)グラハムが「<ニューヨークの>マディソン・スクエア・ガーデンな
ど<で>大衆を前にしての連続伝道」を行った(ウィキペディア上 掲)ことに
ひっかけている。
 なお、マディソン街とマディソン・スクエアとの関係については下掲参照。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%BD%E3%83%B3%E8%A1%97

 まずは、一年も経たないうちに、グラハム氏の雑誌は、購読者数において『キ
リスト教世紀』を抜き去り、勝利を収めた。・・・
 <これは、>『キリスト教世紀』の編集者達の大部分は、同じエリート大学で
教育を受けていたところ、その主張とは裏腹に、プロテスタントの過半 の代表
であったことは一度もなかったということなのだ、<と指摘する学者もいる>。
 しかし、他の学者達は全く異なった見解をとる。
 ・・・主流派は、より広範な文化的勝利を収めているのに、歴史家達はそのこ
とを過小評価してきた、と。
 リベラルは、プロテスタンティズムにおいてこそ敗れたかもしれないけれど、
キリスト教統一運動(ecumenicalism)、世界主義 (cosmopolitanism)、及び
寛容、を米国における支配的信条(creed)として樹立することで、米国におい
ては勝利した、と。
 要するに、<リベラルには、>単なる世俗的な左派(secular left)以外の属
性があるというわけ<であって、>・・・<リベラルは、>リベラル的宗教
(liberal religion)<とでも呼ぶべき代物なのだ。>・・・
 保守的なキリスト教信者は、「こんなものは宗教ではないと考えるかもしれな
い」<が、>・・・宗教というものは、信じがたいほど様々な形態を とって立
ち現われるものなのだ。」・・・
 <この、リベラル的宗教、或いは>「霊的だけれど宗教的ではない」は、19世
紀の超絶主義者(Transcendentalist)達<(コラ ム#4412、4334、4860)>、
アルコホーリクス・アノニマス(Alcoholics Anonymous)<注26)>、ヨガ、そ
して「オプラの福音(the gospel of Oprah)」<(注27)>に至る軌跡<を
持っているのだ>。

 (注26)「1935年に<米>国・・・から始まり、世界に広がった飲酒問題を解
決したいと願う相互援助の集まりで、略して AA と呼ばれる。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%8E%E3%83%8B%E3%83%9E%E3%82%B9
 (注27)事実上の霊的指導者としてのオプラ・ウィンフリー・・黒人たる彼女
は、オバマが初めて大統領選に立候補した時に支持を表明した。・・
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC
について書いた Marcia Z. Nelson の著書'The Gospel According to Oprah'
http://en.wikipedia.org/wiki/Oprah_Winfrey
をもじったものか。

 今日の「霊的だけれど宗教的ではない」現象は、・・・<米国における>19世
紀央のリベラルなプロテスタンティズム<(注28)>に強く負って いる。・・・

 (注28)mid-centuryを19世紀央と訳したのは、リベラルなプロテスタンティ
ズム(liberal protestantism)ないしリベラルなキリスト教(Liberal
Christianity)・・聖書を字義通り受け取らず、聖書から窺われるキリスト教の
本質を掴もうとする・・は18世紀末に起源を持つ
https://en.wikipedia.org/wiki/Liberal_Christianity
からだ。
 「<米国における>」という限定を付してよいかどうかは確信はないが・・。

 <米国において、>宗教本クラブ群(religious book clubs)<(注
29)>・・・が、神学よりも個人的倫理と心の中の(inner)経験・・・<ない
し、>個人的な宗教経験・・・を重視するところの、 広範な基盤を持つ「中流
の(middlebrow)宗教文化」の創造に果たした役割<は大きい。>

 (注29)宗教本・・もちろんキリスト教本のこと・・クラブについては、少し
調べた限りではよく分からなかったが、ある1941年に創設された 宗教本クラブ
のことが下掲に出てくる。
http://www.wheaton.edu/wadecenter/Collections-and-Services/Collection-Listings/~/media/Files/Centers-and-Institutes/Wade-Center/RR-Docs/Finding%20Aids/S-Religious%20Book%20Club.pdf

(続く)

太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/