太田述正コラム#6216(2013.5.19)
<米孤立主義とリンドバーグ(その7)>(2013.9.3公開)

→フライングタイガースを支那に送り込んでいたローズベルトが「本当に戦争に赴きたかったとは思わない」とは、オルソンも寝ぼけたことを言ったものです。
 彼が、「とりわけ、それが欧州に部隊を送り込むことであれば・・」と付け加えている・・つまり欧州以外に部隊を送り込むことにはそれほど抵抗感がないというわけです・・ことで、罪一等を減じてやってもよろしいが・・。
 それはさておき、英国のチャーチル首相は、日本に米国を武力攻撃させるべく東アジアで工作するとともに、米国に参戦させるべく、米国内で大々的な秘密工作をやったわけであり、その結果が大英帝国の過早の瓦解であったことを知っている我々としては、嘲笑せざるをえません。
 それにしても、英国という外国による、このような秘密工作に暗黙の了解を与えて、自分に反対する人々の失権を図ったローズベルトのことを淡々と記述するオルソンが私には理解できません。
 どこの国でも、外国からカネをもらった政治家は即失脚させられるけれど、これはカネをもらったどころの騒ぎではありません。
 このような大逆罪を犯したローズベルトは、本人が死亡しているとは言っても、その名誉剥奪が米国内でなされてしかるべきでしょう。
 (議会に諮ることなくフライングタイガースなる米軍部隊を支那に送り込んで、いわば私戦を日本に仕掛けた点でもそうです。
 また、ローズベルトの時からですが、トルーマンは、日本の一般住民の大量虐殺を目的とした、日本の都市の焼夷弾攻撃、及び広島・長崎への原爆投下を行った点で、国際的にその名誉剥奪がなされるべきでしょう。)(太田)

 (6)エピローグ

 「米国史上初めて平時に徴兵制を導入した選抜訓練兵役法(Selective Training and Service Act)・・・<が>1940年<にようやく成立した。>・・・
 <また、さんざん孤立主義を唱えたというのに、>米国が参戦した時、リンドバーグは、自国のために空を飛ぶことを欲した。

→オルソン自身は皮肉をこめてこう言っているのでしょうが、既に指摘したように、これは何の不思議もないのであって、オルソンを含め、いかに、現在の米国人が、今なお、戦前から戦中にかけての米国人の人種主義について、皮相的な受け止め方しかしていないか、がよく分かります。(太田)

 ローズベルトはそれを認めなかったが、リンドバーグの友人達は、彼が南太平洋で試験飛行の民間人コンサルタントとして奉仕できるようにした。・・・」(E)

 「<孤立主義者の危惧の念は、>殆んどが杞憂に終わった。
 つまり、我々は何十万人もの男達を失ったけれど、それは孤立主義者達が恐れた数よりもはるかに少なかった。
 また、孤立主義者達がもう一つ言っていたのは、我々の経済は全面的に崩壊するだろうというものだった。
 しかし、実際には、我々の経済は巨大なる躍進を遂げた。
 戦争中には経済ブームとなった。
 大部分の米国人はこの戦争中、まことにもって順調だったのだ。」(E)

→朝鮮特需の日本とベトナム特需の韓国のことをすぐ思い出しますね。(太田)
 
 「ローズベルトは、二つのカネに換算できないものを達成した。
 それは第一に、米国人達は、ひとたび参戦するや、団結と不退転の決意をもって戦争遂行を行ったことだ。・・・
 第二に、大統領令によってではなく、世界の諸出来事によって孤立主義的感情が掘り崩されるのにまかせるという、ローズベルトの意思決定は、戦後、米国が全球的リーダーシップを引き受けることを促進した。
 孤立主義は、1920年代と30年代にかくも猖獗を極めたけれど、現実によって信用を無くし、爾来、いまだに復帰を果たしていない。」(B)

→孤立主義への復帰など果たしてもらっては困りますが、米国単独介入主義は、一刻も早く止めて、自由主義世界協調介入主義に転換してもらう必要があります。(太田)

 (7)批判

 「リンドバーグは、疑う余地なく、最も有名な孤立主義者だったけれど、彼の重要性が<この本>では過大に描かれている。」(D)

→いずれにせよ、「最も有名な孤立主義者」もまた、「最も有名な介入主義者」たるローズベルトとうり二つの、人種主義者であった、ということは間違いなさそうです。(太田)

 (8)外伝

 「<リンドバーグの>妻のアン・モロー・リンドバーグ(Anne Morrow Lindbergh)は東部育ちだった。
 彼女は、ニューヨーク地区で育った。
 彼女は、著名な銀行家・・J・P・モルガン(Morgan)のパートナーで後に大使、そして上院議員になった・・の娘だった。
 だから、彼女は、極めて国際主義的でかつ親英であるところの、東部の欧州的上流階級出身だった。・・・
 彼女の家族、事実上彼女の家族のメンバー全員、及び彼女の友人達、更には彼女が一緒に大きくなった人々は、<夫のリンドバーグとは>反対の陣営に属していた。・・・ <リンドバーグの物語の最も奇妙な部分は、・・・1957年から75年にかけて、彼が、ドイツで、全てドイツ人の異なった3人の女性との間に7人の子供をもうけたことだが、>・・・これらの女性は、みな、彼が誰であるかを知っていた。
 うちの一人は彼の秘書であり、彼の仕事の多く・・ドイツでの事業関係・・を行った。
 しかし、彼女達は、自分の子供達のためにこのことを秘密にした。
 自分達の母親が亡くなってから、何人かの子供達は、彼らの父親が誰かを発見し、そのことが公になった。
 しかし、我々が知る限りでは、彼の妻は知らなかった。・・・
 そして、米国内の彼の子供達は、この話が明るみに出るまで、このことを知らなかったのだ。」(E)

→有名人、とりわけカネのある有名人たる男性には女性が群がる、ということですが、生前、これほど大規模な不倫を隠し通したリンドバーグも偉かったし、相手の3人のドイツ人女性達もまた偉かった、と言うべきかもしれませんね。
 それにしても、リンドバーグは、この点では、ドイツ崇拝を貫徹した、といったところでしょうか。(太田)

3 終わりに

 米国のことを知れば知るほど、その文明後進国ぶりが分かってきます。
 そんな国が戦後名実ともに世界覇権国となった不幸を我々は世界の人々と共有しているわけですが、なお恐ろしいことに、日本はそんな米国の属国になる道を選んで現在に至っているわけです。
 「独立」を叫ぶ私の問題意識と焦燥感が、少なくとも数万人規模の日本人の共感を得られるまで、私の命とまでは行かなくても、私の気力体力が持てばいいのですが・・。

(完)