太田述正コラム#6388(2013.8.14)
<皆さんとディスカッション(続x1990)>

<太田>(ツイッターより)

 「…北朝鮮が最近、生活や思想の指針となる規範「党の唯一思想体系確立の10大原則」を39年ぶりに改定し、権力世襲の正当化や、金正恩(キムジョンウン)第1書記への忠誠を強調する内容を盛り込んだ…」
http://digital.asahi.com/articles/TKY201308130302.html?ref=comkiji_txt_end_kjid_TKY201308130302
 これを北朝鮮内部の危機が深刻である証左と見る朝鮮日報のコラムが面白い。
 第10条第1項の「白頭の血統で永遠に」 と第7条の「勢道排斥」は確かにそう読めそうだな。
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/08/13/2013081301342.html

<TA>

≫空母は、海兵隊同様、近代的な軍隊を持つ(中共のような)国に侵攻したり、その近傍で活動するためにはあまり役に立たない存在になってしまったけれど、(部分的にはともかく、全体として)非近代的な軍隊しか持たないならず者国家に人道的介入を行う場合等には有効です。≪(コラム#6386。太田)

 確かに、イラク戦争やアフガニスタン戦争での米海軍空母の運用を観れば、空母が時代遅れの兵器とは言えませんね。↓

 「米国の軍事専門家諸氏の間で、空母ユニットの戦略上の効果に疑いが持ち上がっている。しかし、これに勝る通常(核兵器でない)軍事力計画は、まだ考え出されていない。ロシアの専門家たちはそう見ている。・・・
 先日、米国の専門家ヘンリー・ヘンドリクス氏が公表した論文にはこうある。「空母を世界中に展開することを基本とする戦略は、近く、そして避けがたく、古びる」。しかし、ロシアの軍事アナリストの中で、こうした懐疑論に同意している者は、ほんの一部である。著名な軍事専門家アレクサンドル・ゴリツ氏はVORのインタビューに次のように答えている。
 ―空母。それは、作戦展開の際の間違いの無い手段である。アフガニスタンで作戦を展開する際、付近に地上基地がなかったため、ほぼ全ての空軍オペレーションが、空母のデッキを基盤に行われた。イラクでもまた、空母は中心的な役割を演じた。現代、ほぼ全ての軍事衝突において、空母は極めて重要な役割を演じてきた。米国が置かれた地政学的条件に鑑みれば、私には、空母なしの米軍の現代的軍事戦略など、想像することが出来ない。・・・
 いま、空母が果たしている多面的な機能。それが、より安価な、誘導ミサイルや無人飛行機に取って代わられつつある。しかし、それでも、米国が空母を完全に撤廃することは決してないであろう。「軍事輸出」誌の編集長、アンドレイ・フロロフ氏はそう語っている。・・・
 まだ空母の時代は終わっていない、と語るかのような事実がある。ロシア、インド、中国で、自前の空母ユニットを構築する計画が進行中である。・・・
 もっとも、空母についてどのような考えを持つかは、それぞれの海洋大国にそれぞれであって、その戦略的ないし戦術的コンセプトを比較することには意味が無い。」
http://japanese.ruvr.ru/2013_04_10/110371910/

 ↑「空母についてどのような考えを持つかは、それぞれの海洋大国にそれぞれ」だそうですので、「その戦略的ないし戦術的コンセプト」の評価(妥当性、合理性)は個別的に考えなければならない、と理解しました。
 そこで、中国の空母購入・建造の評価についてお聞きします。

 「この局での前回の収録の時は、私と残りの全員のパネリストが対峙する感じになったと申し上げたと思いますが、必ずしもそうでなかったらしいことが分かりました。
 というのは、前回も出演された川村純彦氏が、中共の海軍力整備は、(旧ソ連のヴァリャーグ級の)空母建艦計画も含め、対米核抑止力を確保するためであることを強調されていたからです。つまり、中共が空母を持つとしても、それは兵力投入用ではない、つまりは着上陸侵攻用ではない、だから日本向けではない、ということを示唆されていたということです。
 同氏はそのほか、中共の海軍力整備は、インド洋から南シナ海にかけての中共のシーレーン防衛のためでもないことも指摘されていました。いや、そもそも、いかなる国の海軍もシーレーン防衛はできないし、そんなことは考えていない、とまでおっしゃっていました。」(コラム#2589。太田)
 「中共が空母保有願望を公式に明らかにしました。・・・バカだね。止めときゃいいのに。<こう考えるのは、>海軍力における米国の恐るべき能力の高さを私は知っているからです。
 中共の軍部は、それが分かっていないのでしょう。
 金食い虫の張り子の虎をつくってどうしようというのでしょうか。
 ソ連の「脅威」華やかりし頃でさえ、ソ連は本格空母の保持を追求しなかったのはなぜか、をもっと考えて欲しいものです。」(コラム#2992、#3003。太田)

 太田さんが「バカだね。止めときゃいいのに」と述べるのは、「対米核抑止力を確保するため」であっても無意味、という意味でしょうか。
 また、併せて、インドおよびロシアの空母配備計画について、その目的がどういったものなのかをお教え下さい。

<太田>
 
 中共が現在保有しているのは、ロシアが現在保有しているのと同じ型のカタパルトの付いていない中途半端な空母ですが、現在本格的空母を2隻建造中とみられ、近い将来には原子力空母も建造予定とみられており、3隻そろったところで、ようやく1隻を即応体制に置けるようになります。
 しかし、致命的な問題は、中共が広い太平洋にSOSUS網を構築しておらず、また、地勢的に見通しうる将来にわたって、SOSUS網を構築することができない点です。
 つまり、中共は、米国の攻撃型原潜の位置を把握できないまま、いざとなったら、一方的に(常に中共の空母に「随伴」することになるであろう)米国の攻撃型原潜等による多数の巡航ミサイルの集中攻撃を受けることになり、対ミサイル防衛システムによる防戦空しく、殆んど瞬時に撃沈されることでしょう。

 後の方のご質問ですが、近い将来にインドは3隻のカタパルト付の空母を保有し、1隻を即応体制に置くことを目指しており、米国と同様の空母運用構想を、ただし、恐らく、米国と違って全球的にではなく、「狭い」インド洋で実現に移そうとしています。
 他方、ロシアは、カタパルトの付いていない中途半端な空母・・航空機搭載巡洋艦と称している・・を1隻保有しているだけであり、空母に罹る将来計画も明らかにしておらず、要は、米国と張り合う軍事大国であったソ連時代が忘れられず、形だけ空母的なものを保有してお茶を濁しているだけです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Aircraft_carrier
http://en.wikipedia.org/wiki/Kuznetsov-class_aircraft_carrier
    
<ねこ魔人>

 --お詫び--

 申し訳ございませんでした、たしかに、太田<コラム>を読み込んでいる者であるならば、日本文明とアメリカ文明を同一視することはありえない間違いで、日本にも失礼な
話でした。
 ただ、日本とアメリカは同じく自由民主主義的体制を採用していたということが、発言の主旨です。
 また、浅はかな主張によるお目汚しも申し訳ございませんでした。
 今後精進してまいります。

<太田>

 それでは、その他の記事の紹介です。

 安倍政権の集団的自衛権の依拠「学説」については、疑いの余地なくはっきりしましたね。
 「米国以外に」は、単に、公明党用の切り代でしょう。↓

 「安倍晋三首相が設置した有識者による「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二元外務事務次官)が年内にまとめる報告書に、集団的自衛権を共に行使する対象国を米国以外に拡大する提言を盛り込むことが・・・分かった。・・・
  座長代理の北岡伸一国際大学長が共同通信に明らかにした。「密接な関係にある国が攻撃を受け、日本に重大な被害が及ぶとき」に集団的自衛権が行使できるとの趣旨の提言を検討しているとした。」
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013081301001773.html

 へーそんな本があったんだー。
 なお、後段についてだけど、少なくとも東南アジアの人々・・ただし華僑を除く・・は質の同じ歴史問題だと考えてるようだけどね。
 マレーシアの現地ガイドの話(コラム#6386)を想起して欲しい。↓

 「・・・『アーロン収容所――西欧ヒューマニズムの限界』(中公新書、初版は1962年)をめぐる論争がありました。同書の著者であるルネサンス研究者の会田雄次氏と、日本研究者のルイ・アレン氏のあいだの論争で、池田雅之編著『成文堂選書17 新版 イギリス人の日本人観――英国知日家が語る“ニッポン”』(成文堂、1993年、369〜99ページ)がその一部を収載しています。・・・
 大戦中の日本軍による欧米人捕虜処遇問題の克服と、欧米の帝国主義支配や植民地責任の追及は、質のまったく異なる歴史問題である・・・」
http://blogos.com/article/68027/

 先の大戦の時の構図とおんなじで、主敵は支那じゃなく米国であることが、次第にはっきりしてきたね。↓

 「首相参拝、中韓より米の反応見極め、時機模索・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130814/plc13081408110006-n1.htm
 「安倍政権の外交  「日米にも悪影響」英紙がコラムで苦言・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013081402000111.html

 米国の労働者階級は、カネがなく将来の展望もないため、結婚しなくなくなりつつあるとさ。↓

 ・・・The disappearance of well-paying jobs for America’s working class -- those with no more than a high school education -- is taking a toll on marriage,・・・
 <製造業が海外移転し、高卒じゃ碌な仕事にありつけなくなっている。↓>
 Well-paying jobs with benefits and pensions continue to vanish for those who lack college degrees or other post-high school educations as manufacturing jobs fly overseas to lower-wage countries.・・・
 <大卒の女性の結婚率は約60%、高卒の女性の結婚率は30%未満。↓>
 Marriage is becoming a luxury reserved for the wealthy and well educated. While some 60 percent of US women with a bachelor’s degree are married, for example, less than 30 percent of those who never graduated from high school are.・・・
http://www.csmonitor.com/Commentary/the-monitors-view/2013/0813/Decline-in-marriage-it-s-the-economy

 昨日の未公開のコラム#6387でベラーに触れた時、日本語ウィキペディアで彼が亡くなっていることを知ったが、まだ、日本国内じゃ報道されていなかったんだ。↓

 「米宗教社会学者ロバート・ベラーさん死去・・・」
http://www.asahi.com/obituaries/update/0812/TKY201308120436.html

 オプラ・ウィンフリー「事件」をコラム#6382で紹介したが、その後の報道の方が面白いな。↓

 <「事件」はスイスのブレムガルテンで起こったが、この「事件」が起きる直前、同町が受け入れている亡命希望者に対し、同町当局が、町の中をうろついたり公共プール等を利用することを禁じたことが報じられていた。↓>
 ・・・Bremgarten, a picturesque Swiss town of 6,430 residents located about 20 km (12 miles) from Zurich・・・ have announced last week that asylum seekers housed by the federal government in Bremgarten’s army barracks won’t be allowed to move around town freely or use the local swimming pool and other sports facilities.・・・
 <人権擁護諸団体は、亡命希望者がアフリカやアジアから来ていることを指摘し、町当局は人種主義的である、と非難した。↓>
 Bremgarten’s decision has quickly drawn criticism from human-rights groups and incited accusations of racism, since the refugee center’s residents come from Africa and Asia.・・・
 <しかし、そんなことは、受け入れ地方公共団体がどこでもやっていることなのに、どういうわけかブレムガルテンのケースだけが報じられたもの。↓>
 There is no specific reason why the Bremgarten ban made the news when others didn’t・・・
 <やはり最近、フランスからの労働者が怠惰で傲慢だとして、その職探しをスイスの職安が拒否しているとの報道もなされた。↓>
 Also recently, local media reported that the country’s recruitment agencies are refusing to find jobs for French workers because Swiss employers consider them to be “lazy and arrogant.・・・
 <しかし、スイスは人口比で見た場合、積極的に亡命希望者を受け入れてきたと言える。↓>
 For all the talk about xenophobia, however, Switzerland has had a generous asylum policy, in line with its humanitarian traditions, which include hosting the U.N. refugee agency as well as the International Red Cross. And while 50,000 refugees may not seem like a high number, Switzerland is a small country of only 8 million people. ・・・
 <また、亡命希望者の犯罪率が高いのも確か。↓>
 Police records show that asylum seekers are responsible for many of the cases of theft, burglaries, sexual assaults and other infractions committed in their host communities.・・・
 <スイスの犯罪率は世界でも低い方。↓>
 Switzerland still has one of the world’s lowest crime rates.・・・
 <ところで、スイスの観光団体はオプラに謝罪したが、動物保護団体はオプラがワニ革のバッグを買おうとしていたとして彼女を批判した。↓>
 Switzerland’s tourist body apologized to Winfrey, Swiss animal-rights group Vier Pfoten, or Four Paws, criticized her for wanting to buy a $35,000 crocodile bag, saying she should have been aware of cruel methods used to obtain the skins of exotic animals.・・・
http://world.time.com/2013/08/13/switzerlands-xenophobia-its-not-just-about-oprah/
 <オプラに批判された店員及び店は、店員は人種主義者ではなく、単に英語がよくできないことから生じた誤解だったと弁明した。↓>
 ・・・The unnamed clerk says the entire situation was simply a misunderstanding and she was willing to show the bag, but was offering up a less expensive model at the time. She tells Swiss media she was in no way racist. She has apologized. The storeowner says spotty English was to blame.・・・
 <オプラ自身も、店名は言わなかったのに、スイスで、と言ったために、店名が明らかになったこと、話が大げさになったこと、を謝罪した。↓>
 Now Winfrey has apologized too, saying to a group of press, “I’m really sorry that it got blown up. I purposefully did not mention the name of the store. I’m sorry that I said it was in Switzerland. I was just referencing it as an example of being in a place where people don’t expect that you would be able to be there.”・・・
http://entertainment.time.com/2013/08/13/a-lot-of-people-sorry-about-oprah-winfrey-purse-incident/

 精神障害に対し、通常の病気と同じ認識で解明し、対処しようとする学界を批判したコラムだ。↓

 <例えば、統合失調症の発症は低い社会的経済的階層に生まれたことと相関度が高いが、統合失調症を単なる病気と見てそれを「治療」する方法を発見しようとし、心理的社会的諸要因を無視する傾向があるんだと。↓>
 ・・・We know, for instance, that low socioeconomic status at birth is associated with a greater risk of developing schizophrenia, but the lion’s share of research into schizophrenia today is carried out by neurobiologists and geneticists, who are intent on uncovering the organic “cause” of the disease rather than looking into psychosocial factors.
 <これじゃ、貧困をなくすことなんかが視野に入ってこないってさ。↓>
 Though this research may very well bear fruit, its dominance over other forms of research, in the face of the known connection between poverty and schizophrenia, attests to a curious assumption that has settled into a comfortable obviousness: that socioeconomic status, unlike human biology, is something we cannot change “scientifically.”・・・
http://opinionator.blogs.nytimes.com/2013/08/11/bursting-the-neuro-utopian-bubble/?ref=opinion
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太田述正コラム#6389(2013.8.14)
<日支戦争をどう見るか(その24)>

→非公開