太田述正コラム#6309(2013.7.5)
<皆さんとディスカッション(続x1951)>

<太田>(ツイッターより)

 BBCが引きこもりの長文記事を載せている。
http://www.bbc.co.uk/news/magazine-23182523
 先進国共通の現象らしいが、100万人以上いる日本は別格か。
 だけど、なぜ大部分の人は引きこもらないのか、考えれば不思議かも。
 対策だけど、(本来の)出家制度を参考にしたらどうかしらん?

<NGii4yt50>(「たった一人の反乱」より)

≫人間主義的説明を試みる前のコラム#1204にたまたまでっくわしたが、ズバリのコラムを見っけた人は教えてくれたまえ。≪(コラム#6305。太田)

 ・・・コラム#5402、・・・5414、・・・5416 のことでしょうか?

<Ckk87GpG0>(同上)

≫相変わらず具体性のない質問を繰り返すばかりなので、ボクもざっくりした答え方をすることにしよう。≪(コラム#6307。太田)

 該当コラムの抜き書きまでして聞いているのだから、これほど具体的な質問も無いですけどね。

≫キミは「煩悩の超越」について、それを、悟るための方法論と受け止めてる≪(同上)

 私は「欲望が「一切」無くなる…が、何故同じ状態だと…」と「状態」と言っているので方法論のことを言っているのではないことは明らかです。
 前段の「スッタニパータを読めば分かり…」の下りも、釈迦は目指すべき目標を語っているのであって手段を語っているのではありません。

 具体的かつ簡単にお聞きしましょう。
 瞑想/座禅をすることで精神的肉体的に効能があることまでは分かりますが、それが何故、狩猟採集時代の自分に戻ることになるのですか?
 何らかの科学的裏づけがあるのですか?
 科学的裏づけが無い以上、「以上を、私の言葉に置き換えるとこういうことになりそうです。人間は、狩猟採集時代に適合的な遺伝子しか基本的に持っていないため、農業社会やその後の工業社会には不適合な状態になっており、(かねてより指摘しているように、非人間主義的に行動しがちになっているほか、)長命化ともあいまって、様々な慢性的な精神的肉体的疾患に悩まされるに至っている。座禅とは、狩猟採集時代の自分、つまりは本来の自分、換言すれば、外界(自然及び他人)と一体であった自分、恒常的ストレスと無縁であった自分、を再発見するための営みであり、座禅に習熟すれば、(人間主義的に行動するようになるとともに、)精神的肉体的疾患が軽減されたり精神的肉体的疾患に罹りにくくなる。」

 ↑これは太田さんの想像に過ぎません。
 科学的裏づけが無いにもかかわらず仏教・悟りは人間主義だと断言するのは間違っています。

<B8RYmqcE>(「たった一人の反乱」より)

>科学的裏づけが無い以上、・・・これは太田さんの想像に過ぎません。
>科学的裏づけが無いにもかかわらず仏教・悟りは人間主義だと断言するのは間違っています。

 あなたは少なくともある程度は太田コラムを読んでいる風なので、太田さんが「科学的裏付け」(典拠ね)のない主張をするわけがない、ということはよく解ってるよね?
 格好付けず、素直に、「それを論じたコラムが探せませんので教えて下さい」と聞いたら?↓

 「既にとりあげたことがある話ではあるけれど、狩猟採集社会の人間主義性に関する最新の研究成果がまとめて紹介されている記事があったので、
さっそくご紹介したいと思います。」(コラム#4850)・・・

 「既にとりあげたことがある話」がどのコラムを指すのかは探せん・・・orz

<太田>

 B8RYmqcEクン、サンキュー。

 さてさて、またかよー。Ckk87GpG0クン。
 そう言えば、昨日、下掲↓に答えるの忘れてたな。

≫「人間主義的境地に至る」という文言が入っている以上、立論の柱が『狩猟採集社会時代の記憶・遺伝子…』一本槍であることは変わらないですね。瞑想/座禅は『狩猟採集社会時代』に還るという目的のための手段の一つに過ぎないわけですから。≪(コラム#6307。Ckk87GpG0)

 瞑想/座禅は『狩猟採集社会時代』に還るための手段の一つなのではなく、人間主義化するための手段の一つなんだよ。
 (キミ自身も、「<太田さんは>悟りは人間主義者になることと断言してらっしゃる」(コラム#6303)と「断言」し、また、すぐ上で、ボクが「仏教・悟りは人間主義<化>だと断言」してるって「断言」しとるでねえの? キミ、自分が何言ってんのか分かっとんのかね?)

 あのね、まず、過去コラムからの下掲の引用を読み返してくれたまえ。

 「人々は公平、共感(empathy)、愛着(attachment)<=人間主義(太田)>の深い本能を持っている・・・。・・・
人々は頭頂葉(parietal lobe)の中の活動の低下を経験すること<=瞑想すること(太田)>によって、空間(space)へと誘われる・・・つまり、心(mind)は自分自身を超越し、より現実感があると感じるところの、より大きな存在<=(人間を含む生命を含む)自然(太田)>と一体となる能力を持っている・・・。」(コラム#2629(2008.6.20))

 上掲の後段については、もう一つの過去コラム(コラム#4707(2011.4.25))で、仏教に直接からめた形で再度登場する。

 「仏教の僧のうち、瞑想(座禅)に習熟した者は、・・・外界と自分自身とが一体になる感覚を経験するようになっている・・・。」

 このコラムでは、下掲のようなもう一つの科学的知見が紹介されている。

 「座禅(瞑想)は、恒常的ストレス<=非人間主義的であることからくる懊悩=煩悩(太田)>を減ら<す>・・・極めて効果的な方法である・・・。」

 (私による読み替えを各所に挿入(<>)したけど、)上掲の諸科学的知見を踏まえ、ボクは、仏教の悟りとは、己の本来的人間主義性を発見することによって、自らを人間主義化させることだ、と指摘しているのであって、狩猟採集社会時代云々は、「深い本能」という箇所等にヒントを得て、その更にずっと後で打ち出したボクの仮説だよ。
 (浅い、或いは顕在化した本能ではないのは、今は使い物にならないけれど、大昔には必要で顕在化していた本能なのではないか、とね。その大昔とはいつなのかを、今度は人類学や考古学の科学的知見を踏まえ、狩猟採集時代ではないか、と考えたわけだ。)
 更に言えば、芸術鑑賞=人間主義化論は、更にそのずっとずっと後で打ち出したボクの仮説だ。

 だから、ボクの仏教論に疑義があると言うのなら、ボクの仮説の方を取り沙汰する(のもいいが、それ)より前に、「上掲の科学的知見を踏まえ、ボク<が>仏教の悟りとは、己の本来的人間主義性を発見することによって、自らを人間主義化させることだ、と指摘している」点について、これを具体的に批判しなきゃダメじゃん。
 それには、ボクが依拠している科学的知見そのものと矛盾する他の科学的知見を見出した上でそれをぶつけることで疑義を提起するか、ボクの援用する科学的知見からボクのような結論は引き出せない(=読み替えはできない)ことを論証するか、しかないだろな。
 いやさ、「瞑想/座禅の効用の脳科学的説明・・人間主義的境地に至る・・・が間違いだとはまさか言えないはずだ。もちろん、挑戦する自由はキミにあるけどね。」(コラム#5305)って、ボク、既に一昨日に書き、やれるんならやってごらんって書いてるだろが。
 チミ、自分が何言ってるか分かってないだけじゃなく、ボクが書いたことが読めないほど目も不自由なんかい?

 おおそうだ。もう一点。

>私は「欲望が「一切」無くなる・・・「状態」と言っているので方法論のことを言っているのではないことは明らかです。・・・<そもそも、>「スッタニパータ・・・」<で>・・・、釈迦は目指すべき目標を語っているのであって手段を語っているのではありません。

 についてだが、キミは、コラム#6301で、「原始仏教=阿含経典で語られているところの釈尊の教え(常人にとってその実践はとても厳しい)と、人間主義の関係性を見出すことが私にはどうもできません。 無我、一切の執着の滅却、一切の欲から解脱した心穏やかな状態=涅槃寂静、といった実践を伴うこれらの根本原理・・・」て言ってただろ?
 「実践はとても厳しい」って方法論ってことだし、「実践を伴う・・・根本原理」ってのも方法論くさいよな。
 なのに、キミは、本日、突然、自分は目標(状態)のことを言ってる、と言い出した。
 キミは、自分が何言ってるか分かってない上、目も不自由で、その上、ウソつきなんかい?

 いや、そもそも、キミ、『スッタニパータ』、ホントに読んでんの?
 全体から引用するのは面倒だから、岩波版で、ボクが傍線を引いた箇所を、巻末から遡る形で、(しかし、本来の順序で)いくつか転載してみたのが下掲だ。

 「971 衣食に関しては恣ままならず、慎しんで村を歩み、罵られてもあらあらしいことばを発してはならない。・・・
  1050 世の中における種々様々な苦しみは、執着(しゅうじゃく)を縁として生起する。・・・
  1082 この世において見解や学問や思想や戒律や誓いをすべて捨て、また種々のしかたをすべて捨てて、妄執をよく究め明して心に穢れのない人々、--かれらは実に≪煩悩の流れをのり超えた人々≫であるとわたしは説くのである。」
  1119 つねによく気をつけ、自己に固執する見解をうち破って、世界を空なりと観ぜよ。そうすれば死をわたることができるであろう。・・・」

 このいずれのセンテンスも、方法論なのか目標なのか、考え始めると分からなくなるが、キミはその全てが目標(状態)の話だと言い切れるかあ?
 正直なところ、小乗的に読むと方法論だし大乗的に読むと目標だ、というボクのような見方もできるって思うはずだぞ。

<DYCKNU3c>(「たった一人の反乱(避難所)」より)

≫つまり、ジャータカというのは、全体として、自分の命すら犠牲にするくらいの決意を持って、自然・・・(人間を含む)生き物を含む・・のため、 奉仕をしなさい、そうすれば、回りまわってきっと、来世ならぬこの現世において、オツリが来るくらいいいことが自分の身の上に起こるよ、というこ と、すなわち人間主義、を教えようとしているのさ。≪(コラム#6307。太田)

 ↑はわかります。
 しかし現世利益の結論に結び付けたいがためとはいえ、↓のような解釈は捻じ曲げが強引すぎませんか?

≫自ら虎に食われた人(同じく前世の釈迦)だって、ひょっとして実際には食われることなく・・・≪(同上)

<mq831K5U>(同上)

 「(注28)パーリ語経典経蔵小部の『ジャータカ』及び漢訳大蔵経の本縁部に収録されている各種の話(ジャータカないし本生譚)の中で、釈迦の前生が「飢えた虎とその7匹の子のためにその身を投げて虎の命を救った」といったような、利他主義を実践する場面がいくつも出てくるが、これらの話を含め、『ジャータカ』は、釈迦入滅後の「紀元前3世紀ごろの古代インドで伝承されていた説話などが元になって・・・そこに仏教的な内容が付加されて成立したものと考えられて」おり、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%82%AB
釈迦自身が利他主義を勧めた形跡はない。」(コラム#5414)

 釈迦自身が利他主義を勧めた形跡はないから、利他主義でないように解するのが自然じゃん。

<DYCKNU3c>(同上)

 こんにち仏教として扱われている膨大な体系は、すべて歴史上の人物である釈迦自身が残したものではなく後世の弟子たちが釈迦の権威を借りてこしらえた一連の創作物を指します。
 歴史上の釈迦自身による形跡うんぬんを言い出したら、この世に仏教はひとつも残っていないことになるので、それをもって仏教的であるかないかの根拠には使えないと思われます。

<mq831K5U>(同上)

≫↑はわかります。
 しかし現世利益の結論に結び付けたいがためとはいえ、↓のような解釈は捻じ曲げが強引すぎませんか?≪(DYCKNU3c)

 「↑はわかります」と受け止めたあなたの部分を大事になさって下さい。ご自愛を!

<太田>

 それでは、その他の記事の紹介です。

 エジプトの軍部は自傷行為をやらかしたとさ。↓

 <昨年12月にモルシによって採択された憲法じゃ、軍は大統領が行った宣戦に拒否権を発動できるし、国防相は現役将官とされてるし、軍部中心の国家防衛委員会だけが軍事予算監修権を有するとされてるし、軍が文民を起訴できるとさえされている。これ以上何を望むのって。↓>
 ・・・the widely reviled constitution that Morsi's allies passed in December didn't just dial back progress on women's rights and sneak in more fulsome declarations of adherence to Islamic law; it also enshrined the military's place atop the country’s political hierarchy. Article 146 gives the military veto power over presidential decisions to declare war. Article 195 mandates that the minister of defense be a general. Article 197—a highly valued sop to the generals’ interests—instructs that only a military-dominated body (called the National Defense Council) can oversee the military's budget. The constitution even has a provision preserving the military's right to prosecute civilians. Egypt’s generals didn’t want to abrogate this constitution; they are its biggest fans. It is thus hard to see what the military gains by overthrowing the president・・・
 <それもこれも、米国からの年10億ドル超の軍事援助や軍の息のかかった諸企業という利権の維持のためのはずなのに、モルシ追放で何が起きるか分かったもんじゃないとさ。↓>
 Egypt's generals no more wanted Morsi's ouster than they wanted Mubarak's almost three years ago. What they want is to continue to enjoy their perquisites—including more than $1 billion a year of military aid and some of the choicest cuts of the Egyptian economy. Their ouster of Morsi puts both of these things at risk.・・・
http://www.slate.com/articles/news_and_politics/foreigners/2013/07/egypt_s_military_ousts_mohammed_morsi_the_country_s_generals_now_face_economic.html

 アラブ諸国は、一国を除き、モルシ追放を称賛した。↓

 Arab leaders from Saudi Arabia to Syria rushed Thursday to congratulate Egypt for deposing its elected Muslim Brotherhood president, signaling a rare moment of unity in the divided and still overwhelmingly undemocratic region.・・・
 <アラブ諸国の大部分は、依然、独裁体制の下にあり、モルシを支えるイスラム同朋会は、彼ら共通の仇敵だからだ。↓>
  In many of those nations where autocrats still rule, the Muslim Brotherhood poses the most potent challenge.・・・
 <これまで各国のイスラム同朋会と誼を通じてきたカタールも、新太守はモルシ追放を称賛したが、これは政策変更を意味する。↓>
 Even Qatar, which had alienated its neighbors by cultivating ties with the Brotherhood regionwide, also offered warm congratulations to Egypt’s army, signaling a break with the past on the part of its new emir, Sheik Tamim bin Hamad al-Thani, who inherited power from his father last week.
 <サウディアラビアとその仇敵であるシリアのアサド大統領もモルシ追放を称賛した。↓>
 The acclamations put Sunni powers on a par with the leader they are trying to topple, Syrian President Bashar al-Assad, who gloated at the Brotherhood’s failures in an interview Wednesday. ・・・
 <イスラム系が選挙で政権を担っているチュニジアだけが、モルシ追放を非難した。↓>
 Only in Tunisia, the birthplace of the Arab Spring uprisings two years ago, did the elected, Brotherhood-affiliated government condemn Morsi’s ouster, calling it a “flagrant coup.”
 <アラブ世界には属さないが、やはりイスラム系が選挙で政権を担っているトルコも、モルシ追放を非難した。↓>
 Non-Arab Turkey, whose Islamist government has a history of strained relations with the country’s own military, also warned about the implications for the future of democracy in Egypt.
 <以上は一般論的な説明だが、これに加えて、モルシが、シーア派の牙城のイランと友好関係を樹立する一方で、シーア派系のアサド政権にスンニ派十字軍的に戦いを挑む、という支離滅裂的なことをやったことが、モルシの評判を落とした。↓>
 Much of the relief elsewhere was rooted in anxieties about the challenge posed by local Brotherhood affiliates. But Morsi had won few friends with a foreign policy that zigzagged from an attempt to mend Egypt’s historically poisonous relationship with Shiite Iran to an endorsement of jihad against Shiite “infidels” in Syria.
 <とりわけ、後者について、エジプト軍部は、エジプトが戦乱に巻き込まれるという強い懸念を抱いた。↓>
 That policy switch, announced last month, may have sealed his fate by sending signals to the Western-backed military that he was becoming more radical in ways that could entangle Egypt in the region’s brewing sectarian conflict,・・・
 “It was an incredibly foolish mistake by Morsi,” he said. “He supports a rapprochement with Iran, then veers 180 degrees in the other direction and goes for jihad in Syria.”・・・
http://www.washingtonpost.com/world/middle_east/arab-leaders-happy-to-see-morsi-gone/2013/07/04/3878cede-e4d8-11e2-bffd-37a36ddab820_print.html 

 次に暴かれるのはどの国だ?↓

 「フランス情報機関も大量の個人情報収集・・・NSAの活動は非公開ながら議会の承認を得ているが、<フランスの>DGSEの活動は法的裏付けがない違法行為・・・」
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130705/erp13070509140002-n1.htm

 そのフランスは売春は合法だが売春斡旋は違法であるところ、(とりわけ女性の)身体障害者にセックス身代わり者(sexual surrogates)を斡旋するのを合法にせよ、との運動が起こってるって。↓

 ・・・while prostitution is legal here, soliciting potential clients and serving as an intermediary between prostitutes and clients are not. ・・・
 Her association is lobbying for a change in the law to allow disabled people, their parents, their friends or directors of approved institutions to arrange meetings with sexual surrogates, who typically charge around $130 a session. She speaks of the “sexual distress” of many of France’s 1.8 million disabled people of working age, especially women. ・・・
 <売春が合法の国の大部分(スイス、ドイツ、デンマーク等)じゃ売春斡旋も合法だと。↓>
 Sexual surrogates are legal in most countries that allow prostitution, like Switzerland, Germany and Denmark. In Switzerland, several associations offer training for sexual surrogates. ・・・
http://www.nytimes.com/2013/07/05/world/europe/disabled-people-say-they-too-want-a-sex-life-and-seek-help-in-attaining-it.html?ref=world&_r=0&pagewanted=all
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

太田述正コラム#6310(2013.7.5)
<世俗化をもたらした宗教改革?(その5)>

→非公開