太田述正コラム#6048(2013.2.24)
<フォーリン・アフェアーズ抄(その17)>(2013.6.11公開)

1 始めに

 TAさん提供のForeigh Affairs Report, February 2013, No.2 から、3篇をご紹介しましょう。

2 紹介

・アッシュ・ジェイン 「民主国家同盟D10を立ち上げよ--なぜ民主国家によるフォーラムが必要か

 ジェインは、米国務省政策企画部スタッフ等を経て、現在、ジャーマン・マーシャルファンドの非常勤フェローにしてユーラシアグループ(注一)・コンサルタントです。(50)

 (注一)「世界最大の政治リスク専門コンサルティング会社として知られている。1998年に政治学者のイアン・ブレマーによって設立された。立ち上げ当初は、同氏の専門分野であり、社名の由来でもある旧ソビエト連邦や東欧諸国にフォーカスしていたが、現在は全世界の分析を行っている。同社のアナリストは、アジア、中南米、中東、ユーラシア、欧州、北米、アフリカなど世界各国の政治、経済、社会、安全保障などの動向をウォッチしている。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97
 ニューヨーク、ワシントン、ロンドン、東京にオフィスがあり、150人を超えるスタッフと80カ国の500人の専門家と契約を結んでいる。英エコノミスト誌は、「一見役に立たない政治学の学位を持つ学究に霊感を与えた」とし、ウォール街に、初めて政治学という学問分野を体系的に持ち込んだと評されている。
http://en.wikipedia.org/wiki/Eurasia_Group
 なお、イアン・ブレマー(Ian Bremmer。1969年〜)(コラム#3967、5291)は、「スタンフォード大学で修士号および博士号取得。スタンフォード大学フーバー研究所研究員を経て、1997年からワールドポリシー研究所上級研究員。1998年にユーラシアグループを設立した。またコロンビア大学でも教鞭をとっている。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%9E%E3%83%BC

 「NATO同盟は、価値を共有する諸国間の協調を育んできた長い歴史をもっており、すでに戦略ビジョンも拡大されている。だが問題は、その任務が防衛と安全保障領域に限定されていることだ。現在われわれが直面している脅威に対処していくには経済制裁、対外援助、広報外交などの外交政策が広く必要になるが、これらはNATOの役目ではない。民主空間の拡大、人権擁護、トランスナショナルな正義などもNATOが手がける領域の枠外にある課題だ。」(47)

→ジェインが、(冷戦終了後の)NATOの「戦略ビジョン<の>拡大」・・これが何を意味するのか必ずしも定かではありませんが・・について言及している一方、NATOの「加盟国の<東方への>拡大」については言及していないのは理解に苦しみます。
 加盟国の拡大には余り興味のなさそうな彼のことですから、指摘してもせんないことかもしれませんが、彼には、NATOの加盟国を日本を含む太平洋諸国にまで広げること、(そのために必要な日本の集団的自衛権行使の禁止の解除、)また、米国への安全保障面でのただ乗り回避のための、NATO加盟国間で国防支出の「強制」割当制といった措置の導入、等について語って欲しかったと思います。
 なお、彼が言う「共有<された>価値」とは自由民主主義ということになるでしょうが、「<加盟国の>民主空間の維持」、及び、「<加盟国の>人権擁護」、をNATOが行っていることは、結果として「民主空間の拡大、人権擁護」に資していることになるでしょう。
 とにかく、安全保障が国際秩序を維持発展させる基盤である以上は、安全保障面で自由民主主義諸国が一体となることの重要性を私なら強調していたところです。(太田)

 「G8<については、>このフォーラムを、価値を共有する民主国家のフォーラムとして位置づける試みがなされた時期もあったが、G7がロシアをメンバーに迎え入れたことによって、G8は、イラン、シリア、北朝鮮、そしてロシアの問題を検討するフォーラムとしての機能を事実上失ってしまった。」(47)

→ここは完全に同意です。
 サミットへのロシア招致は、米国がかつて赤露を先の大戦時に、対日独伊の連合国(United Nations)・・そのまま国際連合に移行・・に招致したことに匹敵するところの、ロシア無知に由来する愚行でした。
 米国の国際音痴には真に甚だしいものがあり、何度失敗しても、懲りることがないのです。(太田)

 「米国務省のイニシアティブ<で、>・・・2008年に、民主的価値を共有する9カ国の外交担当省庁の政策担当部門の責任者がトロントに集まり、グローバル安全保障上の課題を議論する公的な対話メカニズムが立ち上げられた。この9カ国は、・・・ヨーロッパからはイギリス、フランス、ドイツ、イタリア・・・アジア・太平洋からは日本、オーストラリア、韓国、北米からは、カナダとアメリカ・・・<だ。>
 この・・・世界のGDPの60%を担い、世界の軍事予算の4分の3以上をもつ・・・9カ国における外交政策担当者の対話は、トロント後もワシントンとソウルで続けられている。・・・
 <仮にこれをD9と呼ぶとして、D9を>戦略的協調のための効果的なメカニズムにするには、より高官レベルのフォーラムとし、各国の政策決定チャンネルの一部に位置づける必要がある・・・。」(48〜49)

→ジェイン自身は、これに更にEU(欧州連合)を加え、D10にすることを提唱しています(48)が、その必要はないでしょう。
 D9も基本的に安全保障のためのフォーラムであるところ、EUの外交軍事機能は極めて脆弱で、見通しうる将来にかけて、その状況に変化はない、と考えられるからです。
 私自身は、G8を廃止し、D9で置き換えることを提唱したいところです。
 つまり、D9を、自由民主主義諸国の、経済面等を含めた、総合安全保障政策の基本を総合調整するフォーラムに仕立て上げ、自由民主主義諸国全体の軍事安全保障を担う(地域的に更に拡大された)NATOを統制させる、というイメージです。
 D9には、ロシアを事実上排除することと、韓国と豪州を引き込むことによって、ロシアに自由民主主義化を迫るとともに、程度の差こそあれ、対中共媚態を示しつつある韓国と豪州、とりわけ韓国を、(おだて上げ、責任意識を持たせることによって、)しっかりと自由民主主義陣営につなぎ留める、という効果もありそうです。
 それにしても、D9の萌芽となる試みを米国政府が5年前からやっていた、という話は初耳であり、大変興味を掻き立てられた次第です。(太田)

(続く)