太田述正コラム#6026(2013.2.13)
<湾岸諸国はどうなる?(その3)>(2013.5.31公開)

  エ とりわけアラブの春のインパクトは大きい

 「現在の<湾岸>諸体制にとって完璧な嵐とも言うべき。チュニジア、エジプト、リビア、イェーメン、そしてシリアにおけるアラブの春の諸革命は、真面目に政治改革と現行の独裁諸体制除去とにコミットした湾岸諸国民と湾岸を拠点にした諸運動に希望を与えただけでなく、自分達の統治者達を支える政治的経済的諸構造が不可避的に崩壊することを自覚するに至ったところ彼らの新しい諸敵を、民主主義志向の活動家達ないし幻滅した市民達以外の何ものかである、とを描写することを、湾岸の諸君主国家にとって、より困難にものにした。・・・
 ・・・大部分の湾岸の諸君主国の当初の対応は、際立って反アラブの春的だった。
 このことは、統治者たる諸家族と関係諸政府に対して、著しく非正統化的効果をもたらした。
 多くの市民達の目には、彼らが、自分達自身を明確かつ時代錯誤的な反革命ブロックとであるとする位置決めをしたように映った。
 驚くことではないが、湾岸諸君主国の中での、2011年以降の新しい反対者達は、自分達の心情を、個々の国における個別の諸事情と諸圧力に応じて異なった形で表明した。
 これには、貧しい方の湾岸諸君主国における、殺人だろうが殉教だろうが何でもありの全面的な市街暴動から、豊かな方の湾岸諸君主国におけるより巧妙な(subtle)、知的、更にはインターネットを駆使さえした「サイバー反対者達」に至るまで、の幅があった。
 しかし、この全てのケースにおいて、諸体制は、それまでよりも一層大きな抑圧で対応せざるを得ず、それが統治する諸家族を一層非正統化することとなった。・・・
 これまでのところ、カタールだけが、実際にこのような不器用な対処ぶりを免れることができた。
 それは、おおむね、その恵まれた諸事情とそのアラブの春に対するいささか異なったスタンスのおかげだ。・・・
 状況がエスカレートを続けるにつれ、湾岸の諸君主国は、弾圧と検閲を一層進めることに固執しているように見える。
 彼らは、精緻な警察国家と検閲制度を持ち込んだ。
 また、外国人<傭>兵を導入した。
 アブダビの場合は、遠く離れたコロンビアと南アフリカからだ。
 そして、純正な市民社会諸組織をの殆んど全てを閉鎖した。・・・
 この地域の君主国の安定性に係る三つの核心的諸仮定の全てが、今や、確かに、かつ、永久に、正しくないことが露呈してしまった。
 <この仮定とは、>政治的黙従の見返りにその市民達に富を分配し続けるに足る十分な諸資源が各政府にあるということ、湾岸の諸市民の大半が非政治的である、ないしは、部族制度を統治(governance)の唯一の真正なる制度であると見ているということ、そして、統治者達自身が、敬虔で平和的で一般的に善意であるということ<、の三つだ>。
 現実には、もちろんのことだが、大量の湾岸諸国民の非自発的失業者、多数の諸所における貧困、炭化水素輸出から脱して<産業を>多様化することにおおむね失敗したところの経済における諸資源の減少、が存在する。
 しかも、明確に近代的で相互に連携した、そして、どんどん教育水準の上昇してきたところの、若い市民達からなる人々がいて、彼らは、古い諸ルールでもって生きて行くことを欲さず、現状に対する侮蔑を公然と表明しており、また、多くの場合、中東・北アフリカにおける他の場所でのアラブの春の諸運動との連帯感を表明している。
 最後に、これが最も重要なことなのだが、諸体制がこれらの声を沈黙させようと行った悪しき弾圧と恣意的拘束は悲劇的であったけれど、にもかかわらず、これらの、選挙されたわけではない、<従って、>責任を負う立場にない統治者達が、石油の時代より前の部族的にして情け深い統治者達と似通った存在である、という幻想を打ち払うことを助けたのだ。」
http://mideast.foreignpolicy.com/posts/2012/11/13/gulf_autocracy_in_question?wp_login_redirect=0
(著者によるコラム)

→以下、中締めです。
 中共と湾岸諸国は、どちらも非自由民主主義的体制を持っていて、そのどちらも体制の危機に直面している、という点で共通しています。
 また、このどちらも、それなりの正統性を持っている・・方や国家統一と外国勢力の駆逐、方やスンニ派イスラム教を含むところの「麗しき」部族的伝統・・点、そして、現在、カネで忠誠を買い取っている面がある・・方や改革開放による経済高度成長、方や(湾岸諸国全体として見た場合の)石油・天然ガス収入の分配・・点、更には人口の二重構造による搾取がある・・方や都市住民と農村住民の分断と後者の搾取、方や国籍保持者と外国人労働者(バーレーンの場合はシーア派住民)の分断と後者の搾取・・点でも共通しています。
 この両者のどちらが先に崩壊し始めるのか、大変興味があるところです。(太田)

(続く)