太田述正コラム#5902(2012.12.13)
<日本の対米開戦はスターリンの陰謀?(その3)>(2013.3.30公開)

 (2)挿話2

 「私は、コスターが、米国史における最も不名誉な事柄の一つ・・112,000人の日系米国人を駆り集めて彼らの財産を没収して収容所に送り込んだ・・についてきちんと史実を記したことに、敬意を表したい。
 コスターは、真珠湾への「卑劣な攻撃」の余波として、人種主義者達・・とりわけそれはカリフォルニア、オレゴン、そしてワシントンの各州において猖獗を極めていたわけだ・・が、全ての日系米国人の抑留を求めた結果が、ローズベルトによる行政命令9102だった。
 ロバート・タフト(Robert Taft)<(注6)>上院議員は、「西部における孤立した収容所群に男性、女性、そして子供達を移した」この措置は、「自分がこれまで聞いたことのある刑事法の中で最もいいかげんなものだ」と呼ばわった。

 (注6)1889〜1953年。大統領と最高裁長官を務めたウィリアム・ハワード・タフトの息子。エール大学士、ハーヴァード・ロースクール卒。上院議員としては、ニューディールに反対し、第二次世界大戦参戦にも反対した。
http://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Taft

 真珠湾の3日後に、財務長官のヘンリー・モーゲンソー・ジュニア(Henry Morgenthau Jr.)<(注7)(コラム#5148)>は、FBI長官のJ・エドガー・フーヴァーに西海岸における日系米国人の駆り立てについてどう思うかと尋ねた、とコスターは述べる。

 (注7)1891〜1967年。コーネル大学で農学と建築学を専攻。1934年〜45年の間財務長官。
http://en.wikipedia.org/wiki/Henry_Morgenthau,_Jr.

 フーバーはぞっとする思いでおり、モーゲンソーに対し、司法長官のフランシス・ビドル(Francis Biddle)<(注8)>は、いかなる「検挙網も駆り立て手続き」も認めないだろう、とぶっきらぼうに伝えた」と。

 (注8)1886〜1968年。ハーヴァード大、同ロースクール卒。弁護士出身。戦後、ニュールンベルグ裁判の裁判官を務めた。
http://en.wikipedia.org/wiki/Francis_Biddle

→当時の米国にも正気の・・人種主義への汚染度の低い・・エリート達も少しはいた、ということです。(太田)

 <ところが、>フーヴァーが間違っていることが判明することになる。
 というのは、「移転」に反対していたビドルは、<結局、>ローズベルトの計画に同意したからだ。
 しかし、この決定を、ビドルは死ぬ時まで後悔し続けることになる。
 フーヴァーは、米国に忠誠心のある日系米国人と朝鮮人から得られた諜報を用いて、不忠誠な者達を突き止めていて、真珠湾攻撃から3週間以内に、FBIが海軍諜報局及び陸軍諜報局と共に、既に、大陸部米国の2,192人、ハワイの879人を逮捕していた、とコスターは記している。・・・」(B)

 (3)本の概要

 「『雪作戦』は、・・・コスターが、博士号を持つエコノミストにして財務次官補で有力なソ連の工作員であって雪作戦の主要人物たる、ハリー・デクスター・ホワイト(Harry Dexter White)について書いたものだ。・・・」(E)
 「『雪作戦--・・・』では、著者のジョン・コスターは、最近秘指定が解除された証拠とこれまで翻訳されなかった資料群とを用いて、ローズベルトが、我々が忘れることができないところの、永久に不名誉のうちに生きるだろうとの宣言を行った日についての本当の物語を語る。
 『雪作戦』は、スターリンとKGBが、二重スパイと共産主義シンパ・・うち最も記憶されるべきはハリー・デクスター・ホワイトだ・・からなる巨大な人脈を用いて、日本に米国との戦争を起こさせたかを、真珠湾爆撃の背後にあったところの、争う余地なきソ連の関与を証明することで、示している。・・・」(E)

 「著者自身が言うところによれば、この本は、以下を詳らかにしている。
・これまで無視され、かつ翻訳されたことがなかった史料群をもってする、ソ連の陰謀の暴露
・どのように、ハリー・デクスター・ホワイトが、米国史上最も破壊的な大逆の諸活動を行いながら逃げおおすことができたか
・どのように、日本と米国がロシアの工作員達とプロパガンダによって操られたか
・仮に雪作戦が失敗していたならば、どうして、ソ連が、ナチスドイツと帝国日本の合同した力によって崩壊させられていたかもしれないか
・そんな意識はなかったところのスターリンの傀儡(Stalin’s unwitting stooge)たる(ローズベルトの)財務長官が、日本との戦争を引き起こした(provoked)諸政策を推進すべく操られたこと
・全てが真珠湾<攻撃>で終わったわけではないこと。すなわち、偽装自殺を促したところの暴露に至るまでの間、どのように、戦後においても、ホワイトが、ソ連の工作員として活動を続けたか・・・」(D)

 「コスターは、彼の上司たる財務長官のヘンリー・モーゲンソー・ジュニアとモーゲンソーの上司たる大統領のフランクリン・D・ローズベルトよりもはるかに知能の高い男であったホワイトが、どのように、この二人の男を操って、日本との戦争を引き起こしたか、を描写する。
 フランクリン・ローズベルトは、ハーヴァードの学部時代に、全くもって取るに足らない人物だとみなされており、「アイヴィー・リーグ(Ivy League)<(注9)>の学生達によって求婚される対象たるセヴン・シスターズ(Seven Sisters colleges)<(注10)>諸校の女の子達は、彼のイニシャルのFDRを、「羽製のチリ払い(feather duster)」の短縮形として用い、上手なフットボール選手でダンス場の驚異であったにもかかわらず、彼のことを取るに足らない人物だと思っていたものだ」と。・・・」(B)

 (注9)米国東部の名門私立大学8校。ブラウン、コロンビア、コーネル、ダートマス、ハーヴァード、プリンストン、ペンシルベニア、エール。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0
 (注10)米国東部の名門女子私立大学7校。バーナード(コロンビア大学と提携)、ブリン・モア、マウント・ホリヨーク、ラドクリフ(1999年にハーヴァードに併合)、スミス、ヴァッサー(1969年に共学化)、ウェルズリー。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%96%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%BA_(%E5%A4%A7%E5%AD%A6)

(続く)