太田述正コラム#5898(2012.12.11)
<日本の対米開戦はスターリンの陰謀?(その1)>(2013.3.28公開)

1 始めに

 書評類をもとに、ジョン・コスター(John Koster)の『雪作戦--どうやってソ連のスパイがローズベルトのホワイトハウスに真珠湾攻撃を引き起こさせたか(Operation Snow: How a Soviet Mole in FDR’s White House Triggered Pearl Harbor)』の概要をご紹介し、私のコメントを付したいと思います。

A:http://nation.time.com/2012/12/07/pearl-harbor-2-0/
(12月8日アクセス)
B:http://www.huntingtonnews.net/45689
(12月9日アクセス。以下同じ)
C:http://usdailyreview.com/tag/john-koster
D:http://www.rafu.com/2012/12/operation-snow-takes-a-different-look-at-pearl-harbor/
E:http://www.easternodyssey.com/history-books/item/652-operation-snow-how-a-soviet-mole-in-fdrs-white-house-triggered-pearl-harbor
 (出版社による紹介文)
F:http://dailycaller.com/2012/09/26/are-libyas-unheeded-warnings-echoes-of-pearl-harbor/
(著者による、本の中の1エピソードについてのコラム)

 「ジョン・コスターは、・・・賞を受賞した『ウーンデッド・ニーへの道(The Road to Wounded Knee)』<等>の著者であり、・・・元米陸軍軍人であって、半ダースもの言語に流暢で、ニュージャージー州で奥さんで、やはり賞を受賞した児童文学者のシズコ・オーボー(Shizuko Obo)<(注1)>と暮らしている。」(B)

 (注1)「ハチ公についての<英語の>本はいくつも出版されてる<が、そのうちの一つが>『HACHI-KO』。サブ・タイトルは『THE SAMURAI DOG』(@_@;)
 著者はアメリカ合衆国在住のShizuko Obo Kosterさん。
 日本人やな。
 東京の多摩川高校を卒業して、英語の学位を取り、<米>国の教師の免状を持ってるんやて。
 んで、1992年に『Paul A. Witty Award』っちゅう文学の賞も取ってはって、アメリカ文学界では有名な人らしい。」
http://slackintime.blog23.fc2.com/blog-entry-294.html

 なお、この本について、タイム誌電子版の書評(A)を読んだ「はやぶささん」がその日のうちに紹介コラムをアップした
http://tamaeigo.blog.so-net.ne.jp/2012-12-08
ことに敬意を表しておきたいと思います。

2 日本の対米開戦はスターリンの陰謀?

 (1)序

 「「歴史は常に勝者によって書かれる。二つの文化が衝突した場合、敗者は抹消され、勝者は歴史書群を書く。この歴史書群においては、自分達の大義は栄光で包まれ、征服された敵は軽侮(disparage)される。

→コラム#5895で私が記したことをもじって言えば、引用を通じて「客観的現象を語るのなら、それを勝者たる国(米国)の他人の書いた本だけでなく勝者たる国の国民である自分の書いた本にも適用せにゃあダメじゃん」というのが私の感想です。このシリーズをお読みになれば、私の言わんとすることがお分かりいただけることでしょう。(太田)

 <また、>ナポレオンが喝破したように、「歴史とは、合意された寓話に過ぎないのだろうか?」(ダン・ブラウンの『ダ・ヴィンチ・コード(The Da Vinci Code)』より)。
 「私がそれを書こうと思っているのだから、歴史は私に親切なものになるだろう。」(ウィンストン・チャーチル)。彼は、まさにたくさんの歴史書を書くことでそれを実行した。・・・」(B)

→チャーチルに対し、彼が書いた歴史書たる『第二次世界大戦回顧録』でもって1953年のノーベル文学賞を授与したノーベル委員会
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%AB
は、この本をフィクションと認めたからこそ授与した、と信じたいところです。しかし、一般読者は到底そうは思わないでしょう。したがって、この賞の授与は、やはり問題であった、と言わざるをえません。(太田)

 「・・・米国人達は、長きにわたって、1941年12月7日<(米国時間)>の真珠湾爆撃の原因について議論を行ってきた。
 多くの者は、見事な日本の軍事的一撃(coup)であった、または、米国の諜報諸機関の失敗であったと主張してきたし、ローズベルト政権の陰謀であったと主張してきた者さえあった。
 しかし、歴史家達が真珠湾爆撃に関心を持ち続けてきたというのに、この運命的な日についての真実は、現在に至るまでミステリーであり続けている。・・・」(E)

→これまでのどの主張とも異なる、新たな主張をコスターが行っている、という含意であるわけです。
 本当にそうなのか、そしてそれにコスターは成功しているのか、を以下検証して行きたいと思います。(太田)

(続く)