太田述正コラム#5794(2012.10.20)
<赤露の東欧支配(その1)>(2013.2.4公開)

1 始めに

 表記に係る、アン・アップルバウム(Anne Applebaum)の新著 'Iron Curtain: The Crushing of Eastern Europe' を書評をもとにご紹介し、コメントを付したいと思います。

A:http://www.ft.com/intl/cms/s/2/748823b6-184b-11e2-80e9-00144feabdc0.html#axzz29oCJCXcS
(10月20日アクセス。以下同じ)
B:http://www.independent.co.uk/arts-entertainment/books/reviews/iron-curtain-the-crushing-of-eastern-europe-194456-by-anne-applebaum-8190145.html
C:http://standpointmag.co.uk/node/4659/full
D:http://www.economist.com/news/books-and-arts/21564814-how-soviet-empire%E2%80%99s-ambitions-contained-seeds-its-own-destruction
E:http://www.standard.co.uk/arts/book/captives-of-the-cold-war-8197069.html

 なお、アップルバウム(コラム#17、945、1762、2549、3310)は、1964年生まれのエール大学士、(奨学制度で留学した英国の)LSE修士の米国の(ピューリッツァー賞受賞)ジャーナリストであり、現在のポーランドの外相と1992年に結婚しています。
http://en.wikipedia.org/wiki/Anne_Applebaum

2 赤露の東欧支配

 (1)総括

 「・・・アップルバウムは、前の本、'Gulag' でソ連政府が、どのように自国民を駆り集め、投獄し、押しつぶし、彼らに何世代にもわたって精神的外傷を与えたかを記述した。
 この本は、正当に寿がれ、ピュリッツァー等の賞を獲得した。・・・
 ・・・この本でも主題は同じだ。
 すなわち、社会の破壊とソ連の独裁制の押しつけだ。ただし、それが東欧に拡大されるわけだ。・・・」(B)
 
 「<この本、>『鉄のカーテン』は、ソ連帝国の東方領域の包括的な歴史ではない。
 それは、ほぼ全面的にわずか三つの国である、(アップルバウムがその言葉の流暢な使い手である・・・ところの)ポーランド、元の東独、そしてハンガリー、に焦点を当てている。
 これは、この本の長所でありかつ短所でもある。・・・」(C)

 「・・・アップルバウムは、よく調査された説明・・・を通して、説得力ある形で、モスクワの政府が、最初から、完全な支配(domination)を狙いつつ、純全体主義の押しつけを急ごうとしなかったのは、欧米をして推測をさせておくとともに、共産党支配に対する地域の支持を確保するためには慎重にことを進めることが賢明だったからだ、と主張する。
 名目的な権力が託されたところの、モスクワ政府によって訓練を受け<、送り込まれ>た共産党の<それぞれの地域の>指導者達は、自分達の市民の支持を獲得できると信じていた。
 人々は新しい未来を欲しており、共産主義者たちはその一つを提供したのだから・・。
 <ところが、>これらの戦後の指導者達は、どれだけ少ししか彼らが信頼されていないかを発見してぞっとした。
 1946年のポーランドでの国民投票は、共産主義者達に有利な複雑な投票方式で実施されたというのに、党を支持した票はわずか4分の1だったのだ。
 共産主義者達は、これを受け、圧力を増大させるとともに、独立的な力の諸源泉のコントロール権を消滅させるか奪取した。
 ラジオと新聞、ボーイスカウトと音楽クラブ、農場と製鉄所、等の全てが国家のコントロール下に入った。
 そして、赤軍は、強固にそれぞれの地域にとどまり、そのまま1990年代までその状態を維持した。・・・」(A)。
 
 (2)ナチスドイツの支配との比較

 「・・・それは、ナチスの下におけるそれとは違った形の悪だった。
 例えば、ナチスは、奴隷(helot)民族を創り出すことを希求して、ポーランドにおける高等教育を禁止した。
 共産主義者達は、対照的に、彼らが高い価値を置いた科目を彼らが欲するように教える限りにおいて、大学教育を重んじた。
 <ナチスによる>民族性(ethnicity)による抑圧は、<共産主義者達によって、>ほんの少しの例外を除いて、階級と宗教による迫害でもって置き換えられたのだ。・・・」(C)

(続く)