太田述正コラム#5708(2012.9.7)
<インドの経済(続)(その1)>(2012.12.23公開)

1 始めに

 ドイツのシュピーゲル誌がインドに関する長編記事を載せていた
http://www.spiegel.de/international/world/india-caught-between-superpower-dreams-and-harsh-realities-a-851247.html
ので、この記事に拠って、引き続き経済に焦点をあてつつ、インドを取り上げたいと思います。

2 インドの光と影

 (1)光

 「・・・これほど携帯電話使用者の多い国はほぼない。
 通信産業がこれほど速く成長しているところはほぼない。
 今日では、400を超える民間TVチャンネルから視聴するものを選ぶことができる。
 また、インド亜大陸は、再生可能なエネルギーにおいて大いなる前進を遂げつつある。・・・
 インドは今や、世界最大の武器輸入国だ。・・・
 弾頭の在庫を増やして来たところの、核大国でもある。・・・
 インド人は、数年前に何個もの衛星を宇宙に送り込んだし、つい先週には火星探索計画を発表した。・・・」

 (2)影

 「・・・世界中の栄養不良の子供の3人に1人は<インドに>住んでいる。
 そこでは、全人口の半分が一日2ドル未満で生きている。
 人口の半分がトイレがなく、25%がいまだに読み書きができない。
 それは、スキャンダルと言ってよいほど電力供給の信頼性がなく、7月末には、7億人近くの人が光と電気なしの2日間を過ごした。・・・
 建設現場での事故率は1,000人あたり165件だ。・・・
 (国内総生産の約14%を生み出している)農業で働いているのはインド人の半分超であるのに対し、(GDPの約6%を生み出している)情報テクノロジー部門で働いている人は約250万人だ。・・・
 <農村の窮状は、>農村の住民をしてナクサライト(Naxalites)<(注1)>に参加せしめている。

 (注1)「インドの武装革命至上主義者の称。1967年3月西ベンガルのナクサルバーリー[(Naxalbari)]で土地なき農業労働者たちによる地主の土地占拠闘争が展開され,5月に警官隊と衝突したあと武装闘争を開始した。彼らは当時成立した西ベンガルの左翼統一戦線の路線を拒否し,左派共産党除名の活動家によって指導されていた。同じころアーンドラ・プラデーシュ州の少数部族の農民たちも武装闘争を展開し,これ以後武装革命を至上とする活動家は地名にちなんでナクサライトと称される。」
http://kotobank.jp/word/%E3%83%8A%E3%82%AF%E3%82%B5%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88
http://en.wikipedia.org/wiki/Naxalite ([]内)
 
 これは、毛沢東主義の叛乱諸集団であって、大土地所有者と大企業と戦うのに暴力を用いており、インドの600を超える地区(district)の約3分の1で現在活動している。
 人権監視(Human Rights Watch)という機関は、その7月の報告書の中で、人権侵害の咎で、インド政府とナクサライトの双方を非難している。
 北部からアーンドラ・プラデーシュ(Andhra Pradesh)州にはるばる至るところの、「赤い回廊(red corridor)」<(注2)>では、叛乱者達が繰り返し警察官達を襲い、当局と銃撃戦を演じている。

 (注2)下掲のサイト掲載の地図を参照。
http://en.wikipedia.org/wiki/File:India_Naxal_affected_districts_map.svg

 600人を超える人々がこれらの紛争によって昨年死亡した。
 21世紀になって、共産主義の支那よりも民主主義のインドにおいて、毛沢東がより多くの支持者を持ちうるというのは、歴史の皮肉だ。・・・
 <しかし、>毛沢東主義も、はたまた、隣国のパキスタンからのテロの恒常的危険も、この亜大陸における最大の内生的脅威ではない。
 それは、貧困と、就中、腐敗なのだ。・・・
 インドは、トランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency International)の腐敗認識指数(Corruption Perceptions Index)<(注3)>で95位とされているが、これは中華人民共和国や多くのアフリカ諸国よりも腐敗していることを意味する。・・・

 (注3)「1995年以来毎年公開しているもので、公務員と政治家がどの程度腐敗していると認識されるか、その度合を国際比較し、国別にランキングしたものである。 2009年の調査では、・・・10の機関が調査した13種類のアンケート調査の報告書を統計処理して作成されている。指数は、最も清潔な状態を意味する10から、最も腐敗していることを示す0までの範囲で採点されており、7割の国が5未満で、開発途上国では9割以上の国が5未満となっている。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%85%90%E6%95%97%E8%AA%8D%E8%AD%98%E6%8C%87%E6%95%B0
 ちなみに、最新の報告書(2011年)では、ニュージーランドが1位で、日本はドイツと並ぶ14位、英国は16位、米国は24位、フランスは25位、台湾は32位、韓国は43位、イタリアは69位、ブラジルは73位、中共は75位、インドは95位、インドネシアは100位、ベトナムは112位、パキスタンは134位、ロシアは143位、ビリは北朝鮮とソマリアで182位同士だ。
http://cpi.transparency.org/cpi2011/results/

 しかし、インド人達は、単に最も高いレベルにおける腐敗に頭に来ているのではない。
 毎日の生活において、賄賂を払わなければほとんど何事も成就できないのだ。
 非公式のリストによれば、今や賄賂は首都でも当たり前になっている。
 住民は、運転免許証のためには100ドルもの、そして私有車の登録のためには1,000ドルものわいろを支払わされる。
 これに較べれば、日常的な交通見回りをする警官に平均10ドルの賄賂を払うことなど、お安いものだ。・・・」

(続く)