太田述正コラム#5484(2012.5.16)
<日進月歩の人間科学(続x27)(その2)>(2012.8.31公開)

 (2)反社会性人格障害と精神病質の違い

 「反社会性人格障害(ASPD<=anti-social personality disorders>)<(注3)>の人々は、「衝動的で、苛々していて(irritable)怒りっぽく(hotheaded)、存在しないかもしれない脅威を感じてこの状況を「解決」するために暴力を用いるという、古典的な酒場での喧嘩シナリオ的な反動的攻撃を行う。」

 (注3)コラム#5248。ただし、「反社会性人格障害」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%8D%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E6%80%A7%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E9%9A%9C%E5%AE%B3
という言葉は、実際の陳述書からは落とした。

 「<しかし、>それが終わった後、彼らは一定の後悔と良心の呵責を覚えることがある。罪の意識を感じることもある。彼らは、不安[諸障害]と鬱と薬物使用(substance misuse)だらけになる。」・・・。
 精神病質者は、同様に暴力的で攻撃的で、薬物を使用することもしばしばありがちでもあるけれど、これとは対照的に、良心の呵責を覚えることがなく、自分が行う攻撃を冷徹に計画する。
 もう一つの違いは、ASPDの人と精神病質の人は、どちらも幼少時代に虐待を経験していがちではあるが、ASPDの人とは違って、精神病質者は、結果としての心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder=PTSD)の症候群を呈することがない。
 というか、真逆なのだ。
 精神病質者は不安をほとんど感じないし、事実上恐怖心もない。
 ASPDだけの人と比較すると、脳スキャン研究は、精神病質者は前部吻側前頭前皮質(anterior rostral prefrontal cortex=arPFC)と呼ばれる部位と大脳側頭極(temporal pole)として知られる部位の分量が減少していることを見出した。
 これらの部位は自分自身の考えと感情、及び他人の心中を理解するために重要だ。・・・
 ・・・成人がASPDであると自信をもって診断するためには、この人の反社会的ふるまいが小さい時から始まり、それが小児期行為障害(childhood conduct disorder=CD)<(後出)>とレッテル張りをされ、恒常的に反抗的で時々狂ったふるまいで特徴づけられるところのものでなければならない。・・・」(B)

 (3)ビジネスの世界と精神病質者

 「・・・ビジネス界の指導者達の25人に1人は精神病質者である可能性がある・・・
 この率は、一般人における率よりも4倍も高い<(注4)>・・・

 (注4)繰り返すが、米国の金融中枢(ウォール街)で働く人々の10%は精神病質者であり(コラム#5479)、この率は一般人における率よりも10倍も高い。

 精神病質者は、完全に非道徳的であり、自分の権力と利己的愉楽だけにしか関心がないが、ビジネス環境においては、その強みが活かせるので、一般<環境>においてよりも高い率で存在している。
 この環境においては、貪欲が良いことであると見なされ、利潤をあげることが最も重要な価値なのだから、精神病質者が幅を利かせるわけだ。
 精神病質者は魅力的で操作的な傾向もある。
 そして、企業社会たる米国おいては、それが指導力(leadership)として容易に通るのだ。・・・
 <しかし、>調査の結果が示唆しているのは、精神病質者は、実際にはマネージメントの実践者(managerial performers)としては失格(poor)であるというのに、その弱点を、上司や部下をうまく魅惑することで覆い隠すことができるので、企業の出世階段をよじ登ることに長けているのだ。
 だから、本当に有能なチーム指導者と精神病質者とを区別することはほとんど不可能なのだ・・・。
 実際のところ、どんな群衆の中においても、・・・精神病質者を見分けることは困難な場合がある。
 <というのも、>彼らは、全員が容赦なき連続殺人鬼というわけではないからだ。
 幸せで愛に満ちた家庭に育った精神病質者は、例えば、社長(CEO)になったりして、彼らのエネルギーをそれほど暴力的ではない方向に導くことに成功するかもしれないのだ。・・・」(C)

 「・・・私は長年にわたって、社会の中での我々の人生において、狂気性の方が合理性よりも強力な内燃機関である、と考えてきた。
 次いで、私は、様々な心理学者達から、社会を形成することに関して最も強力な狂気は精神病質である、というのが彼らが全員一致している見解である、と聞かされた。
 通常の人のわずか1%しか精神病質者はいないが、ビジネス界の指導者達の4%が精神病質者だからだ。
 彼らの脳の変則(anomaly)こそが我々の世界を形作っているのだ。・・・
 スコット(Scott)<(注5)>は、サンビーム(Sunbeam)のトップであった時やその前の会社でトップであった時に、より容赦なく、より冷酷無比に(remorselessly)精神病質的にふるまえばふるまうほど、より多くの報酬を受け取ったものだ。

 (注5)アルバート・ダンラップ(Albert John Dunlap。1937年〜)の間違いだと思われる。
 彼は米陸軍士官学校卒で、サンビーム・オスター(Sunbeam-Oster)の時の会計醜聞によって破滅したが、それ以前にスコット・ペーパー(Scott Paper)の再建を手掛けた時の容赦なき合理化によって悪名をとどろかせた。
http://en.wikipedia.org/wiki/Albert_J._Dunlap

 資本主義は精神病質者に報酬を与えたところ、私はそれが一度だけのことだとは思わないのだ。・・・」(D)

(続く)