太田述正コラム#5627(2012.7.29)
<皆さんとディスカッション(続x1617)>

<太田>(ツイッターより)

 オリンピックから落とされた種目の写真集だ。
http://www.sfgate.com/sports/slideshow/Former-Olympic-sports-46478.php
 アイスホッケーやフィギュアスケートが冬季オリンピックに移されたってのは当たり前だが、中には、これナニ?ってのもあるね。

<KC>

≫冬のかもめ(西島三重子作曲) 本来西島歌唱の所で取り上げたかったが、リンク切れでやむなくここへ。≪(コラム#5625。太田)

 ここにありますよ。↓
http://www.youtube.com/watchfeature=endscreen&NR=1&v=IL_zE-LfbuU

<太田>

 コラム#4688で紹介したのがリンク切れになっていたのですが、もう少し探すべきでした。
 なお、お示しのリンク先は、正しくはこちらでしたね。↓
http://www.youtube.com/watch?v=IL_zE-LfbuU


 引っ越しのどさくさでたまっていた雑誌類の一部を読んだので、印象に残った箇所を、私のとりあえずの感想ともども紹介しておきましょう。

 人間は、狩猟採集時代に最も適合的な遺伝子群を備えている、ということが、性差についての以下の説明からもよく分かります。↓

 「ホモサピエンスが進化的に誕生した舞台と考えられている「サバンナ様の生息地の中での狩猟採集を中心とした生活環境」・・・<の中で、>女性が、居住地の周辺での植物の採集や幼児の世話を担い、男性が居住地から離れた土地での動物の狩猟を担うという分業が成立していた・・・。・・・
 こういった環境への脳の適応としてしばしば紹介されるのが、得意な課題に関する性差である。心理学におけるこれまでの実験から明らかになっている、女性が男性より特異な課題として、「図形や物の配置に関する認知や記憶」、言語の流暢さや単語の思い出し」、「四則計算」、「手先作業の速さや的確さ」、「表情や心理の読み取り」などがあげられる。一方、男性が女性より得意な課題として「長距離のルートの把握や検出」、「物体の回転や移動などの空間的把握」、「標的に物を当てる能力」などがあげられる。これらの認知能力の違い・・・が、狩猟採集生活(における男女の分業)への適応と考えると容易に説明できる。
 男性の脳には、獲物に武器を当てて仕留め、居住地から離れた場所から(仕留めた動物が腐らないうちに)最短距離で戻る能力に淘汰が働いた。女性には、居住地近くで、位置が固定した植物を探し、子どもの世話をしながら触れあい、衣類などを作るといった能力に淘汰が働いた。・・・ちなみに、このような認知特性の性差は、男性ホルモンや女性ホルモンが、成長中の子どもの脳に作用した結果であることを支持する研究結果も発表されている。」(『學士会会報 No.895』17〜18頁)

 ところが、そこに農業革命(、後には産業「革命」、)が起こり、人間は、農業社会(、後には工業社会、)の中で、持ち合わせている遺伝子群が規定しているところの狩猟採集社会に適合的なクセ、に反した不自然な生活を強いられることとなり、現在に至っているわけです。
 下掲の文中に登場する、地中海南岸における女性の隔離やヴェール装着はかかる背景の下での人間の適応障害の現れである、と見ることができるでしょう。
 なお、ティヨンという学者は、いかにも欧州人らしい小むつかしい言い方をしているが、『義兄弟たちの共和国」は単に「母系社会」、「イトコたちの共和国」は単に「父系社会」という一般用語を用いるべきでした。
 その上で、どうして、「父系社会」中、地中海南岸社会においてのみ、イトコ婚が中心となったのか、を説明すべきだったのではないでしょうか。↓

 「ジェルメーヌ・ティヨンという2008年に100歳で亡くなった、フランス<の>・・・民族学者はその著書『イトコたちの共和国』(・・・みすず書房・・・)の中で、・・・人類は非常に長い間、狩猟・採集生活を送ってきま<けれど>、その社会では、食糧の限界に応じて、人口が増えすぎないように、単婚で独自の産児制限を行い、外婚制により女性を交換して周辺の集団と連帯して争いを避け、「ゼロ成長」を保ちつつ、生存を確保してき<たとし、>・・・この外婚制によって義兄弟たちが連帯する社会を、「義兄弟たちの共和国」(いわゆる未開社会)と名付けました。
 ところが、食糧生産<(=農業)>革命以降、子供を沢山持っても食べさせることができたので、一夫多妻も行われ、他集団を征服し、男性を捕虜にして奴隷として使用したり、女性を捕えて子供を産ませたりするという、非常に征服的、拡大主義的社会が出来上がっていったとティヨンは考えました。人口が増えれば、生産力も軍事力も高まります。この<農業>革命と技術革新に基づく、新石器革命にはじまり、肥沃な三日月地帯(メソポタミア)を中心に旧世界にまで拡がった社会、すなわち地中海社会の特徴は、近親相姦も辞さないほどの強い内婚志向を持つ社会、アラブ社会でよく知られる父系のイトコ同志(ママ)の優先的なイトコ婚によってイトコたちが連帯する社会であり、この第二の社会をティヨンは、「イトコたちの共和国」と名付けました。この内婚志向と父系親族の強い身内意識は、地中海南岸だけに限られるわけではなく、地中海北岸のキリスト教地域でも比較的最近まで見られました。・・・ヴェンデッタ<の起源はここに求められます。>・・・自らの集団の高貴さの根拠として、血統の純粋さを求めるために娘たちの処女性にこだわり、妻たちの不貞にはとりわけ厳しくあたります。・・・娘たちを幽閉<(隔離?)>したり、ヴェールを被せたりしてきたのです。・・・これらの風習は、イスラームが誕生するはるか以前から、地中海社会の特徴の一つであったと、ティヨンは考えています。しかもこれらの風習は、とくによそ者と接触する機会の多い、都市の風習でもあります。
 その後に現れるのが、市民たちが連帯する第三の社会、「市民たちの共和国」です。」(上掲41〜42頁)

 ところが、日本文明だけは、1万年にもおよぶ定着的狩猟採集社会(縄文社会)を経験したために、本来的に定着的であるところの農業社会に移行してからも、狩猟採集社会下のクセを維持しようとするベクトルが強く働き、適応障害を起こす弥生モードと適応障害を起こさない縄文モードを交互に繰り返すことになった、というのが、かねてから申し上げているところの、私の仮説です。
 さて、以上を踏まえて、現在の日本における、少子化と、その背景にある男女関係の、他の先進諸国と比較した特異性は、日本が現在縄文モード下にあることで説明できるような気がしてきました。
 すなわち、日本の縄文モード化が、母系社会化、ひいては産児制限の行き過ぎ・・縄文時代の産児制限意識と産児制限技術の進歩の組み合わせ・・をもたらした、と説明するわけです。
 
 「2010年の調査によると、20代から40代までの結婚比率は日本が64%、アメリカが46%、スウェーデンが41%、フランスが38%・・・<だ>が、非婚比率は日本が30%であるのに、各国は29%、28%、26%・・・である。その秘密は同棲比率が日本は1%強でしかないのに、フランスの29%を筆頭に、スウェーデンが26%、アメリカが12%となっているからである。その結果、婚外子の比率は日本では2%でしかないのに、スウェーデンは55%、フランスは53%、アメリカは41%となっている。・・・合計特殊出生率を比較してみると、いずれも1980年代は1.75程度であったが、最近では、アメリカ2.01、フランス2.00、スウェーデン1.91と上昇しているのに、日本は1.39と長期低迷している。」(『無限大 No.131』日本アイ・ビー・エム株式会社 40頁)

 ところで、イギリスだけは、最初から、母系社会でもなく父系社会でもない、「市民たちの共和国」的な個人主義社会であり、日本とはまた違った意味で例外的な存在です。
 そこのところをどう考えたらよいかは、もう少し検討してみたいと思います。


 それでは、その他の記事の紹介です。

 現在連載中の「中共と毛沢東思想」シリーズ(未公開)とも関連する記事だ。↓

 「環境問題に端を発した中国江蘇省のデモが、一気に地元政府批判に飛び火した。「一般市民は浮かばれない」と訴え、政府庁舎や警察を襲撃。経済発展を遂げた上海周辺の都市で暴動に発展するのは珍しく、役人の腐敗や格差に対する市民の不満が限界に達している実態を浮き彫りにした。 ・・・
 騒ぎが広がり、省や中央政府を巻き込むのを恐れる保身の論理。無断で計画を進めるのも、突然中止するのも政府の都合で、住民不在だ・・・
 事態収拾のためのプロジェクト中止で、企業の法的権利が無視されていることも忘れてはならない・・・」
http://digital.asahi.com/articles/TKY201207280600.html?ref=comkiji_txt_end

 さっぱり分からなかったけど面白かった。
 とにかく、日本の主要メディアも、英米の主要メディア並みに、電子版に、これくらい詳細な書評を載せるようにしてもらえるとありがたいな。↓

 「NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか――天才数学者の光と影・・・」
http://book.asahi.com/ebook/master/2012072400049.html

 野田首相が低評価なのは、世界中で日本国内だけのようだね。↓

 「・・・朝鮮日報が発行する時事週刊誌『週刊朝鮮』・・・<は、>消費税増税や原発再稼働などで示された野田首相の決断、指導力を高く評価し「日本政治には珍しい強力な指導力を持った人物の登場」と、政治の変化にも注目している。」
http://sankei.jp.msn.com/world/news/120728/kor12072821150005-n1.htm

 上掲といい、下掲の記事といい、朝鮮日報の、日本に係る韓国民啓蒙努力には敬意を表せざるをえない。↓

 「・・・開化期の日本は、旧体制と反体制が銃火を交えて戦い、勝った方が政権を取った。朝鮮は、旧体制と反体制が権力掌握のため暗闘を繰り広げた。日本は、旧体制にせよ新体制にせよ、究極の目標は新たな立憲君主制だった。朝鮮では「新朝鮮」は眼中になく、政権獲得だけに没頭した。
 著者は「今の韓国と韓国人の自画像を見ているようではないか」と問いかけた。」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/07/29/2012072900263.html

 金正恩夫人の小さい頃の写真が載ってるよ。↓
http://english.chosun.com/site/data/html_dir/2012/07/27/2012072701517.html

 米国のポルノ産業の男優や女優達の多くがセックス中毒患者であり、また、同産業で「働く」ことがどんなダーティジョッブであると見なされているのか、が窺える記事だ。
 恐らく、日本のポルノ産業とは対蹠的なのではないか。↓
http://www.thedailybeast.com/articles/2012/07/27/jennie-ketcham-interview-recovering-from-sex-addiction.print.html

 妊娠8か月以降も働き続けることは、それが特に、24歳以上の、しかも肉体労働に従事している女性の場合、たばこを吸い続けるのに匹敵する悪影響を胎児及ぼすんだって。↓

 ・・・Women who worked after they were eight months pregnant had babies on average around 230g (0.5lb) lighter than those who stopped work between six and eight months.・・・
 the effect of continuing to work during the late stages of pregnancy was equal to that of smoking while pregnant. ・・・
 ・・・the effect of working during pregnancy was possibly more marked for those doing physically demanding work.
 The birth weight of babies born to mothers under the age of 24 was not affected by them continuing to work, but in older mothers the effect was more significant.・・・
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2012/jul/28/working-eight-months-pregnancy-smoking
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太田述正コラム#5628(2012.7.29)
<中共と毛沢東思想(その2)>

→非公開