太田述正コラム#5384(2012.3.27)
<黙示録の秘密(その1)>(2012.7.12公開)

1 始めに

 私は、やや誇張して言えば、終末論(eschatology)/千年王国(millennium)思想は、欧州文明特産と言っても過言ではないところの、世界に害悪を撒き散らした凶悪思想である、ということを、累次申し上げてきていますが、その原点たる黙示録そのものを、これまで取り上げたことがありませんでした。
 このたび、エレイン・パゲルス(Elaine Pagels)が 'Revelations: Visions, Prophecy, and Politics in the Book of Revelation' を上梓したので、書評等をもとに、この本の概要をご紹介するとともに、私のコメントを付すことにしました。

A:http://www.washingtonpost.com/entertainment/books/elaine-pagelss-revelations-tracing-reinterpretations-of-the-apocalypse/2012/02/27/gIQA8pnhvR_print.html
(3月10日アクセス。書評(以下同じ))
B:http://www.newyorker.com/arts/critics/books/2012/03/05/120305crbo_books_gopnik?currentPage=all
(3月22日アクセス(以下同じ))
C:http://www.nytimes.com/2012/03/21/books/revelations-by-elaine-pagels.html
D:https://www.kirkusreviews.com/book-reviews/elaine-pagels/revelations-visions-prophecy/#review
E:http://www.thejewishweek.com/blogs/well_versed/revelation_elaine_pagels_and_jewish_cult_behind_book_revelations
F:http://online.wsj.com/article/SB10001424052970203753704577253611876502848.html (本の抜粋)

 なお、パゲルスは、カリフォルニア州のパロアルト生まれで、スタンフォード大の学士、修士、ハーヴァード大の博士で現在プリンストン大学の宗教学教授であり、著書 'The Gnostic Gospels' (1979) で三つの賞を受賞している女性です。
http://en.wikipedia.org/wiki/Elaine_Pagels

2 黙示録

 (1)序

 「・・・黙示録(The Book of Revelation)<(注1)>・・・は、新約聖書の最後の書であり、歴史的ないし道徳的規範的(morally prescriptive)ではなくて啓示的(=黙示的=apocalyptic)である、唯一の書だ。・・・」(C)

 (注1)「タイトルの「黙示」とはギリシャ語の「アポカリュプス(古典ギリシア語: 'Aπōκάλυψις)」の訳であり、原義は「覆いを取る」ことから転じて「隠されていたものが明らかにされる」という意味であり、英語では「revelation」<だ>。黙示録という名前<が日本で>定着しているが、本来、「黙示」は法律用語では「もくじ」と読んで、「明示」の反対語である ことからも明らかな通り、 訳語としては「啓示」が相応しい。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A8%E3%83%8F%E3%83%8D%E3%81%AE%E9%BB%99%E7%A4%BA%E9%8C%B2

 「黙示録は、聖書の最も変わっている書であるとともに、最も議論の多い書でもある。
 それは、物語や道徳的教えではなく、光景(vision)ないし夢、そして悪夢であるところの、四人の騎士(Four Horsemen)<(注2)>、啓示、地震、疫病、そして戦争、だけを提供している。

 (注2)「小羊(キリスト)が解く七つの封印の内、始めの四つの封印が<順次>解かれた時に<順次一人ずつ>現れるという。四騎士はそれぞれが、・・・[征服]、そして[戦争]と飢饉と[死とを象徴している。]・・・第一の封印が解かれた時に現れる騎士<は>白い馬に乗っており、手には弓を、また頭に冠を被っている。[彼は、征服する]役目を担っているとされる。・・・第二の封印が解かれた時に現れる騎士<は、>赤い馬に乗っており、手に大きな剣を握っている。<彼は、>地上の人間に戦争を起こさせる役目を担っているとされる。・・・第三の封印が解かれた時に現れる騎士<は、>黒い馬に乗っており、手には食料を制限するための天秤を持っている。<彼は、>地上に飢饉をもたらす役目を担っているとされる。・・・第四の封印が解かれた時に現れる騎士<は、>青白い<[green/greenish-yellow]>馬(蒼ざめた<[pale/pallid]>馬)に乗った「死」で、側に黄泉([Hades])を連れている。・・・<彼は、>地上の人間を死に至らしめる役目を担っているとされる。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A8%E3%83%8F%E3%83%8D%E3%81%AE%E9%BB%99%E7%A4%BA%E9%8C%B2%E3%81%AE%E5%9B%9B%E9%A8%8E%E5%A3%AB
http://en.wikipedia.org/wiki/Four_Horsemen_of_the_Apocalypse ([]内)

 クライマックスの戦闘シーンで、イエスが聖なる戦士として立ち現れ、悪魔は立穴に投げ入れられ、神を信仰して死んだ人間全員が地球を千年にわたって支配する。・・・」(F)
 「・・・黙示録は、恐らく、1世紀末に、現在のトルコの沿岸のすぐ沖のパトモス(Patmos)という小島のヨハネ(John)<(注3)>という名前の難民たる神秘主義者(mystic)によって書かれた。

 (注3)「伝統的な理解では『ヨハネによる福音書』、『ヨハネの手紙一・二』、『ヨハネの黙示録』の著者をすべて使徒<(apostle)>ヨハネであると考えてきた。・・・『黙示録』の著者は、自らを「しもべヨハネ」と称し、「神のことばとイエスのあかしとのゆえに、パトモスという島にいた」と記しているが、これは伝承による使徒ヨハネの晩年の境遇と一致する。また、新約聖書において「小羊」という言葉をキリストの象徴として用いているのは、『ヨハネの黙示録』と『ヨハネによる福音書』だけである。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A8%E3%83%8F%E3%83%8D%E3%81%AE%E9%BB%99%E7%A4%BA%E9%8C%B2

 (ただし、このヨハネは、彼女の執拗な主張によれば、イエスが愛した、或いは、同じ名前を冠した福音書の著者たる、ゼベダイ(Zebedee)の<子の>ヨハネ<(注4)>ではない。)

 (注4)「ゼベダイの子らは新約聖書に登場するイエスの弟子、使徒ヤコブ<(Jacob)>(大ヤコブ)と使徒ヨハネの兄弟2人を指す。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BC%E3%83%99%E3%83%80%E3%82%A4%E3%81%AE%E5%AD%90
 「ヨハネは兄のヤコブとともにガリラヤ湖で漁師をしていたが、ナザレ<(Nazareth)>のイエスと出会い、その最初の弟子の一人となった。ペトロ<(Peter)>、兄弟ヤコブとともに特に地位の高い弟子とされ、イエスの変容<(Transfiguration)>の場面や、ゲッセマネ<(Gethsemane)>におけるイエス最後の祈りの場面では、彼ら三人だけが伴われている。『ルカ<(Luke)>による福音書』ではイエスから最後の晩餐<《lord's supper=last supper》>の準備をペトロとヨハネの2人が仰せつかっている。『ヨハネによる福音書』ではイエスが十字架にかけられたときも弟子としてただ一人「[イエスの愛しておられた]弟子<[The Beloved Disciple]>」が十字架の下にいたと書かれている。・・・また、『ヨハネ福音書』ではイエスの墓が空であることを聞いてペトロとかけつけ、真っ先に墓にたどりついたのもこの弟子であり、伝統的に使徒ヨハネのことだと信じられている・・・。ヨハネは初代教会においてペトロとともに指導的立場にあった。古い伝承では使徒たちの中で唯一殉教しなかったとされる。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%BF%E5%BE%92%E3%83%A8%E3%83%8F%E3%83%8D
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%81%AE%E6%84%9B%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%8A%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%9F%E5%BC%9F%E5%AD%90 ([]内)
http://ejje.weblio.jp/content/%E6%9C%80%E5%BE%8C%E3%81%AE%E6%99%A9%E9%A4%90 (《》内)

 彼女は、劇的な活劇(action)を巧みに要約する。 
 ヨハネは、自分が神の座の前にいることに気づき、キリストの象徴(image)たる子羊を見、七つの封印が施された巻物を受領する。
 これらの封印は次々に解かれ、その都度、神秘的な光景が現れる。
 神への供え物として14万4,000の「初物(firstfruit)」が蓄えられる・・有名な「喜悦(rapture)」<の場面>だ。
 様々な大災厄を知らせるところの、7つのトランペットが奏でられる。
 そして、星々は落ち、太陽は昏くなり、山々は爆発し、野獣達が出現する。
 6番目のトランペットの音がすると、2億人の騎士達が全人類の3分の1を絶滅させる。
 この全てが千年<王国>へと導く。
 それは、全てのものの終わりではなく、千年にわたるキリストによる地上の統治であり、今度はそれが、最終的に、火の湖での悪魔の終焉に導き、本当のクライマックスとなる。
 我々の知っている天と地は破壊され、よりよき天と地によって置き換えられる。・・・」(B)

(続く)