太田述正コラム#5316(2012.2.22)
<米国の憂うべき現状>(2012.6.8公開)

1 始めに

 本日、米フォーリンポリシー誌電子版に掲載されたコラム
http://www.foreignpolicy.com/articles/2012/02/21/rotting_from_the_inside_out?page=full
に盛り込まれている個々の内容の多くは過去コラムで既出ではあるものの、表記について、これほどまとまって記述したコラムは珍しく、また、内容の重大性にも鑑み、ディスカッションで扱うにはもったいないと思い、急遽、本来コラムで扱うことにしました。
 (当初、裏付けデータを調べて添付しようと考えたのですが、果たせず、短いコラムになってしまったことをお断りしておきます。)

2 米国の憂うべき現状

 「・・・<米国は、高>卒率が多くの欧米諸国より低いだけでなく、55歳から64歳の高卒率が25歳から34歳の高卒率よりも高い、唯一の先進国だ。・・・
 ・・・大卒率も下がってきている。
 25歳から34歳の大卒率は、米国は、豪州、ベルギー、カナダ、デンマーク、フランス、アイルランド、イスラエル、日本、韓国、ルクセンブルグ、ニュージーランド、ノルウェー、スェーデン、そして英国よりも低い。・・・
 ・・・米国政府がインフラに使う金額は何十年にもわたって着実に減少し続けており、今や他の欧米諸国のはるか後塵を拝するに至っている。・・・
 「米国は、人口当たりで、世界の他のどの国よりも大きな額を医療に費やしているにもかかわらず、他の大部分の諸国よりも病床数と医者の数が少なく、病院と医者にかかる頻度が低い。
 これに加えて、「<人口当たりの>処方箋薬の利用、価格、そして消費は米国が世界最高のように見える。診断のための映像化(imaging)の供給、利用、そして価格についても同じだ。」・・・
 このことが、どうして米国が、平均寿命において、大部分のOECD諸国のはるか後塵を拝しているのかを説明できるのかもしれない。
 米国は、カメルーン、マダガスカル、ルワンダ、ウガンダ、そしてエクアドルといった全球的最強チーム(powerhouse)と肩を並べるところの、世界で最高水準の所得不平等度を持つ国の一つである、という独特の名誉も有する国だ。
 米国は、OECD諸国の中で子供の貧困率ではビリから四番目で、全般的貧困率ではビリからメキシコとトルコに次いでいる。
 そして、乳児死亡率が、先進国中、もっともひどい国の一つだ。・・・
 ・・・米国は、世界で最も肥満度の高い国の一つであり、米国人の約3分の1は肥満と考えられている。(うち、子供については、6人に1人がそうだ。)
 これに加えて、米国は、<人口当たりで>他国よりも・・支那、イラン、キューバよりも・・・はるかに大勢の囚人を抱えているし、殺人率も世界最高水準の国の一つだし、児童虐待と児童放置率についても同様だ。・・・
 現在、米国は全球的革新と競争力において6番目だ。
 これは悪くないではないかだって?
 喜ぶのはまだ早い。
 同じ報告書には、米国は、「過去10年間にわたる国際競争力と革新の能力の改善度」はドンケツであることを発見した、とある。・・・」

3 終わりに

 日本は人口減少/活力の低減、米国は上述したような第三世界化と、それぞれ憂うべき現状にあるわけですが、政治制度上の不備もあって、両国とも政治が機能不全に陥ってしまっている・・米国については上記コラムもその旨指摘している・・ことから、かかる現状を打開することができないまま徒に時間が経過している、という点で、日米両国は大変似通っています。
 しかし、日本の場合、与野党間で政策の基本面において大きな差異がないのに対し、米国の場合は、与野党間において世界観の違いに由来する政策の根本的な対立があることから、日本以上に展望が開けない状況にある、と言えそうです。