太田述正コラム#5194(2011.12.24)
<韓国・台湾をどう防衛するか>(2012.4.10公開)

1 始めに

 米フォーリン・ポリシー誌の電子版に韓国の防衛と台湾の防衛についての論考の紹介がなされていた
http://www.foreignpolicy.com/articles/2011/12/23/this_week_at_war_preparing_for_the_next_korean_war?page=full
ので、その孫紹介を行うとともに、若干のコメントを付したいと思います。

2 韓国をどう防衛するか

 最初の論考は、韓国の海軍大佐で元韓国大統領及び韓国海軍参謀長の顧問を務めたキム・ドゥクキ(Kim Duk-ki)が米海軍大学紀要(Naval War College Review)に寄稿したものです。

 「キムは、韓国の軍事投資を、在来型戦争から、積極的防衛諸措置であるところの、ミサイル防衛、改善された沿岸対潜水艦防衛、より良いサイバー防衛、等へとバランスを移すことを推奨する。
 ソウルを防衛するための戦車、火砲、歩兵への資金充当を減らすことは危険<だと思われるかもしれないが・・。>」

→北朝鮮が韓国への本格的な侵攻作戦などやるわけがない以上、そのための経費を削っても、韓国海軍艦艇の撃沈や、島への砲撃を一方的に北朝鮮にやられて、ほとんどなすすべもなかった状態の改善を図ることは当然でしょう。(太田)

3 台湾をどう防衛するか

 より重要なのは、パルディー・ランド大学院(Pardee RAND Graduate School)のエリック・スティーヴン・ゴンズ(Eric Stephen Gons)の博士論文である論考です。

 「米空軍のF-22ラプター(Raptor)は、その中共の敵対者よりはるかに勝っているが、ゴンズは、「距離の暴虐さ」が米空軍をして台湾上空での決戦で勝利を収めることを妨げる、という結論を下す。
 台湾まで飛ぶのに3時間かかるところの、グアムの米空軍基地は、台湾の防空のための意味ある(viable)唯一の米軍基地だ。
 米国は、沖縄と日本の本土に質の高い空軍基地をいくつか持っているが、これらの基地は中共に非常に近いので中共の対地攻撃の巡航及び弾道ミサイルの大量の在庫に対して脆弱だ。
 これに加えて、ゴンズは、米空軍は、これらの日本の基地が、中共による攻撃に対して高度に脆弱であろうことから、そこから、高価で数が限られている給油機と早期警戒支援機を運用するようなことはないだろう、と主張する。
 これは、F-22が、これらの基地から台湾に向けて作戦を行うことなどないことを意味する。
 結局、残るのはグアムのアンダーセン(Andersen)空軍基地だけ、ということになるが、たとえこの基地にF-22と所要の支援機を目一杯配置したとしても、継続的に台湾上空の哨戒を行えるのはわずか6機の戦闘機にとどまる。
 他方、これとは対照的に、中共の攻撃機群は、南東支那の、掩体に覆われ、かつ重度に防衛された少なくとも1ダースもの空軍基地群から運用され、欲するままに、数ダースないしは数百もの戦闘機を台湾上空に出撃させることができよう。
 6機のF-22だけでは、F-22を支援しているところの、台湾東側上空の米空軍の給油機と早期警戒機の網の目を潜り抜け、これらを撃墜することを防止するに十分なミサイルの数を携行できない。
 この場合、F-22は燃料が枯渇し、米国は少なくとも一時、退却を余儀なくされよう。
 ゴンズは、米海軍からの助力に余り期待しない。
 彼は、空母搭載の海軍の航空機の戦闘半径が相対的に小さいこと、他方、中共の対艦ミサイルの脅威が増大していること、から、提督達は台湾上空の航空作戦の危険を冒すことを逡巡するだろう、と推測する。
 台湾上空の軍事バランスをより平等にするためのゴンズによる最も効果的な示唆は、米空軍の爆撃機と米海軍の巡航ミサイルでもって、中共の空軍基地を攻撃することだ。
 これらの基地の大部分は強化された航空掩体を持っており、その幾ばくかは地下駐機場を持っていて、そのすべてが地対空ミサイルと対空火砲によって防衛されている。
 台湾に対する中共の空からの脅威を撃破するためには、持久的かつ高価につく爆撃作戦が求められるだろう。
 この、支那本土爆撃の必要性が、中共の行動を抑止することにつながるのか、それとも、ずっとはるかに高価な戦争へのエスカレーターになるのかは議論のあるところだ。
 仮に将来の中共の指導者達が、この爆撃の必要性が信頼性ある抑止力である、ないしは米国が爆撃を実行に移すであろう、と考えなければ、台湾上空での航空優勢を中共が明らかに容易に確立できるということが、中共を台湾を軍事力で再統一する試みへと誘うかもしれない。」

→これは、中共の空軍基地を攻撃すれば、台湾上空での航空優勢を中共は確保できない、と言っているわけであり、航空優勢を確保できない以上は、中共は、台湾海峡を渡って、あるいは台湾に空挺降下させて台湾に地上兵力を上着陸させることができず、従って台湾を奪取することなどできないことを意味します。
 むしろ、我々が注目しなければならないのは、米軍が空軍機や海兵隊機を沖縄を含む日本に前方配備しておくわけにはいかない、とゴンズがはっきり言っていることです。
 掩体に入っている軍用機について言えることは、掩体にすら入っていないところの、海兵隊の地上部隊についてはもっと言えるわけであり、普天間基地の沖縄内での移転どころか、本土内移転すら、軍事的にはナンセンスであり、米海兵隊を日本から完全撤退させるのが当たり前だ、ということです。
 日本には、今後、米軍の実働部隊は、空母機動部隊・・日本を留守にしていることが多い・・だけを駐留させる、ただし、台湾有事等の際に中共からの攻撃のコラテラルダメージを日本の一般住民が受ける可能性を少しでも減らす等のため、(在日米軍司令部/空軍司令部、在日米海軍司令部、在日米陸軍司令部ともども、)首都圏からは移転させる、その場合、中共から少しでも遠い、東北・北海道地区に移転させる、という選択肢しかない、ということです。(太田)