太田述正コラム#5076(2011.10.26)
<中野雅至『天下りの研究』を読む(その5)>(2012.2.11公開)

 「・・・営利企業への再就職は意外なことに少ない。
 事務次官を見ると、民間企業が主流になっていないことが如実にわかる。・・・
 <また、>財閥系企業への再就職<も>少ない。天下ろうとする省庁と天下り先との力関係、天下り先の独立性が、天下りに大きな影響を与えていることが如実にわかる。・・・
 <すなわち、>天下り先の中心は非営利法人であり、天下り先としての非営利法人には明らかに格付けがなされている。最も格上なのは特殊法人・認可法人・独立行政法人であり、その後に財団・社団という位置づけになっている。・・・
 特殊法人が最も格上の存在とされているのは、法律に基づく組織であること、与えられた仕事と省庁との関連性が強いこと、資金・人員規模の大きさ、労働条件、社会的地位などからである。
 財団・社団については・・・天下りと補助金などの関連が指摘されるように、行政委託型公益法人が・・・天下り先<として>・・・最も多いと推測される。行政委託型公益法人とは「特定の法令等により、各官庁から制度的に事務・事業の委託等、推薦等を受けている公益法人の総称」・・・であるが、この定義からわかるように中央官庁の仕事を代行しているという意味で、相互の関係も密接であるがゆえにさまざまな癒着も生じやすいと見なすことができる。
 営利法人・非営利法人以外に・・・意外と多いのが公職への再就職である。・・・
 最も公職が豊富なのは<、多数の大使ポストを抱えるがゆえに、>おそらく外務省であろう。・・・また、財務省の場合も、公正取引委員会委員長・会計検査院院長などの格の高い公職がある。さらに目立たないが、恵まれているのは裁判官や検察官の法曹関係者であり、公証人が主たる天下りポストである。・・・
 最後に、各省に共通する公職ポストとして審議会等の常勤委員がある。」(232〜234頁)
 「特殊法人・認可法人・独立行政法人・(ある程度の規模で省庁との距離が近く、理事が天下りポストになっているような)行政委託型公益法人などが、高級官僚の2回目以降の天下り先の確保のために、自ら出資したり影響力を及ぼして組織を作るというケースも多い・・・。・・・
 特殊法人などは高級官僚に一方的に支配されているような印象が強いが、特殊法人のプロパー職員の天下り先を作ったり、関連企業に押しつけるという行動が見られるにもかかわらず、特殊法人に対しては天下り規制がないのである。
 その典型が日本銀行であり、彼らは民間の金融機関に対する影響力の強さもあって、民間金融機関に多数の職員が天下ってきた。・・・
 さらに、悪質なものとしては、非営利法人の役員がその子会社の役員を兼任して、報酬の二重取りが生じるケースなど、天下り役員の処遇の悪さを子会社の報酬をプラスすることでカバーしようとするケースも指摘されている。」(237〜239頁)

→以上のようなことは、常識として知っておくと良いでしょう。
 ちなみに、財務省(大蔵省)から会計検査院への天下りは以前(コラム#2366で)言及したことがあります。(太田)

 さて、本書において、ようやく、TAさんの言う「歴史的な経緯や原因分析などの記述」(コラム#5075)が第四章「天下りを成立させる要素」(243〜325頁)でなされていましたが、TAさんとは違って、私にとっては、本書の、それまでの、天下り実態の客観的記述よりも更に面白くなかったため、読み飛ばしてしまいました。
 中野は細部にとらわれて大きな絵柄が書けない人なんだな、と痛感した次第です。
 なお、中野が、しばしば指摘されるところの、早期退職勧奨慣行・天下り原因論に(、彼の下掲のような記述ぶりを見る限り、)コミットしていない点は評価できます。

 「戦後日本の公務員制度において競争促進的なものとして真っ先にあげることができるのは早期退職勧奨である。天下り問題と関連して何かと問題視される早期退職勧奨であるが、組織編成や人員構成を公的にコントロールされるだけでなく、雇用が保障されている公的部門にあっては、早期退職勧奨によって年長者を引退させポストを空けない限り、キャリア官僚といえども早期に昇進させるという<競争的>人事運用はできない<からだ>。」(264頁)

 続く、第五章「天下りが引き起こすさまざまな問題と天下りを規制する枠組み」(327〜363頁)は、政官業癒着の実態を取り上げていますが、ここは、常識的な話の羅列に過ぎず、やはり私は読み飛ばしてしまいました。
 ただし、一般の読者諸公のために、その中から二点だけご紹介しておきましょう。
 後者は、過去に言及したことがあります(コラム#1077、1119、2209、2361)し、また、自動的に国税OBに税理士資格を付与したり裁判官等OB等に公証人資格を付与したりすること自体への批判を過去に(コラム#2267で)行ったこともあります。

 「財務省・国税庁は退職する国税庁職員に対して税理士の顧問先を斡旋するのが一般的なのだが、・・・<天下りを受け入れるのは、>国税OBの現役職員への影響力を考えて<のことな>のが一般的だ・・・。」(337頁)
 「会計検査院は独自の天下り先を持たないため、各省が所管する特殊法人への再就職が主なものとなり、その結果、各省にさまざまな情報が漏れるだけであなく規律と緊張感のある会計検査ができない・・・。」(355頁)

 第六章「天下りの実態」(365〜390頁)についても、常識的な話、ないしは論理的に誰でも推測できる話の羅列に過ぎず、引き続き、私は読み飛ばしてしまいました。

(続く)