太田述正コラム#2794(2008.9.16)
<単独著についての最終調整>(2012.1.24公開)

 (このコラムは公開しません。)

1 始めに

 私の兵頭二十八氏との共著『属国の防衛革命』(光人社)については、見本ができ、本日私に送付したということなので、近日中に店頭に並ぶと思います。
 さて、私の単独著である『防衛省への”最後通牒”』(仮題)(金曜日)の方ですが、本日編集者との間で最終調整が行われたので、その模様をご紹介しておきましょう。
 なお、こちらの本には、金曜日の佐高信・編集委員の「解説」が末尾につきます。

2 最終調整の模様

 (1)20 思いやり予算――宗主国に搾取され続ける属国・日本 への追加

<太田>

 20 思いやり予算――宗主国に搾取され続ける属国・日本 の冒頭のところに、

 英語版のウィキペディア(http://en.wikipedia.org/wiki/Protectorate。2007年6月19日アクセス)は、「保護国(protectorate)とは、主権国家<等の>・・政治的存在(political entity)が、宗主国(protector)と称されるより強い国家と公式に条約によって不平等な関係を取り結び、この宗主国が外交的にあるいは必要に応じ軍事的に、この政治的存在を第三国等から守ることを約束し、その見返りとして、この政治的存在が宗主国に対し、特定の諸義務――両国の関係の実態に応じ内容は大いに異なり得る――を通常負うものを指す」としており、この保護国を日本、宗主国を米国、条約を日米安保条約と読み替えれば、ぴったりあてはまることが分かるはずだ。
 米国の保護国日本が、宗主国にいかに「搾取」されているか挙げてみよう。

を挿入して下さい。

<編集者>

 これは、「20 思いやり予算――宗主国に搾取され続ける属国・日本」の箇所ですね。

 ご趣旨は了解いたしました。ただ、率直に申し上げて、この一文を挿入することには、やや疑問を感じます。

 まず、百科事典の翻訳文が入ることで、急に文章が固く、難解になることが気になります。せっかくここまで、平易で読みやすい語り口で来たリズムが、ここでいきなり壊されてしまうように思えるのです。

 また引用元がWikipediaということで、その信頼性をどの程度に受け取るかは、人によってかなり異なると思います。さらに、2007年6月のアクセスというのも少し気になる点です。掲載するとすれば、最新情報を確認する必要があるかと思います。

 さらにこの本は、学術的に事実を論証することが目的ではなく、一般向けに、平易に、太田さんの視点から、防衛省/庁の問題点や日本の安全保障政策の問題点について解説することが主眼だと思います。
 とすると、このような学問的な定義に踏み込む必要はあまりないのではないか、という気もいたします。

 入れるとしても、この章の末尾に、(注)として入れるぐらいではないでしょうか。

 以上、大変差し出がましい意見で恐縮なのですが、ご検討頂けますでしょうか。よろしくお願いいたします。

<太田>

 注でも結構ですから、必ず入れて下さい。
 理由等は次の通り。

1 属国(保護国)云々を論じるのに定義を明らかにしないと印象論に堕してしまうから。

2 実態論だけでなく、憲法9条(の政府解釈)と日米安保によって、日本は法理論上も米国の属国(保護国)そのものであることを明らかにしたいから。

3 以上を、私の言葉ではなく、権威ある・・ブリタニカ等に比べて遜色がないことが既に明らかになっている・・典拠たるウィキペディアの言葉で裏付けたいから。

4 共著とダブっている数少ない部分の一つが属国論であり、共著の方ではウィキペディアの話が確か入っているから。
 両方を読み比べた読者が、そのことに気付いてあれこれ憶測する虞れがある。

 なお、ウィキペディアの最新版によらなかったのは、いずれにせよ、ウィキペディアだとアクセス年月日を入れなければならないところ、最新版でも中身は基本的に同じだが、

「主権国家等<たるprotectrate>が」

という一言が(去年の中身から)落ちてしまっていて、日本の読者には分かりにくくなってしまっていることから、(そして、これは表現の簡素化であって、定義そのものの変更ではないことから、)最初に私のコラムでこのウィキペディアに言及した時の時点のものにした。

<編集者>

  では、多少整理して(Wikipediaの解説部分は、句点の追加以外は変更せず)、次のようにして追加させて頂きたいのですが、いかがでしょうか。
――――――――――――――――――――――――――――――
(注)
 英語版のウィキペディアでは、「保護国(protectorate)」を以下のように定義している。
「保護国とは、主権国家<等の>……政治的存在(political entity)が、宗主国(protector)と称される、より強い国家と公式に条約によって不平等な関係を取り結び、この宗主国が外交的にあるいは必要に応じ軍事的に、この政治的存在を第三国等から守ることを約束し、その見返りとして、この政治的存在が宗主国に対し、特定の諸義務――両国の関係の実態に応じ内容は大いに異なり得る――を通常負うものを指す」
 この「保護国」を「日本」、「宗主国」を「米国」、「条約」を「日米安保条約」と読み替えれば、ぴったりあてはまることが分かるはずだ。
 ※http://en.wikipedia.org/wiki/Protectorateより引用。二〇〇七年六月一九日アクセス。「……」は引用者による省略。<>は引用者による補足。

<太田>

 それで結構です。

 (2)18 自衛隊のインド洋給油は諜報活動の隠れ蓑だった の末尾

 下記は、編集者の示唆に基づき、全面的に書き直したものです。(太田)

             記

 ところで、海自艦艇による補給活動に名を借りた情報収集・監視活動だけで日本の軍事的な国際貢献として十分なのだろうか。
 〇七年八月三〇日、日本を訪問したメルケル独首相は小沢一郎民主党代表と会談した。この際、メルケル首相は「日本はアフガニスタンにおける対テロ戦への支援、つまりは海自艦艇のインド洋派遣を続けるべきだ」と述べたと報道された。しかし実際のメルケル首相の発言は、かなりニュアンスが違うものだった。
 実際には「もし日本が国際社会でより大きな役割を果たそうと思っているのなら、より大きな責任を果たさなければならない」と発言しているのだ。また、ドイツがアフガニスタンで国際治安支援部隊(ISAF)に派兵していることにも触れている。
 これは、海上自衛隊による補給活動に名を借りた情報収集・監視活動という軽易な貢献に加え、アフガニスタン本土における陸上自衛隊ないし航空自衛隊による貢献を求めた、と受け止めるのが自然だろう。
 これに対して小沢代表は、「ISAF自体の内容には賛成できないが、(国連決議のある)ISAFのようなものには、政権を取っていれば積極的に参加すべきだと思う」と発言した。その後小沢代表は『世界』に寄稿した論文で、「ISAFは国連の決議でオーソライズされた国連の平和活動であり、それに日本が参加することは憲法に抵触しない」という趣旨の主張をしている。
 小沢代表がそこまで言った以上、仮に民主党中心の政権ができた場合に、小沢「内閣」が海上自衛隊による「補給活動」をとり止めるのであれば、それこそアフガニスタン本土への陸上自衛隊ないし航空自衛隊の派遣を行う必要が出てくる。
 海上自衛隊の派遣は止め、陸上自衛隊ないし航空自衛隊の派遣も行わないということになれば、小沢「首相」は宗主国米国によって更迭され、民主党を中心とする政権はその時点で瓦解することになる、とあえて予言しておこう。