太田述正コラム#4894(2011.7.27)
<軽度の精神障害のメリット(その2)>(2011.10.17公開)

 (4)経営者編

   ア テッド・ターナー

 「・・・CNNという24時間TVニュースの発明者であるテッド・ターナー(Ted Turner)<(注1)>は、双極性障害を患ってきた。

 (注1)1938年〜。米国のメディア王で慈善事業家。ブラウン大学中退。3度結婚して離婚。
http://en.wikipedia.org/wiki/Ted_Turner
 彼の精神障害の話は、ウィキペディアには全く出てこない。

 しかし、この状況が彼が億万長者になるのを助けた。
 彼は21歳の時に彼の家業を相続したけれど、彼の創造性とありきたりではないアプローチは大きく彼の業績に貢献した。・・・
 同じく精神病学の教授であるジョン・D・ガートナー(John D. Gartner)著の2005年に出版された『軽躁病の強み(The Hypomanic Edge)』というもう一冊の本は、軽躁病は多くの米国人に尋常ならざる水準のエネルギー、創造性、熱意と野性的な冒険的勇気(daring)を与えることを示唆している。」

   イ アンドリュー・カーネギー

 「スコットランド系の巨人のアンドリュー・カーネギー(Andrew Carnegie)<(注2)(コラム#1581、1575、1776、4432)>は、容赦なく、短気で、凶暴なまでに競争的であると同時に「金持ちのまま死ぬ者は不名誉だ」と語り、自分の巨大な富を投げ与えた夢想家であるという、古典的な泥棒貴族だった。

 (注2)1835〜1919年。スコットランド生まれの米国人。公的教育を受けていない。USスティールの創業者にして慈善事業家。
http://en.wikipedia.org/wiki/Andrew_Carnegie
 やはり、彼の精神障害の話は、ウィキペディアには全く出てこない。

 カーネギーは、何事であれ中途半端には行わなかったのであって、怪物と理想家の奇怪な混淆物だった。
 彼は、超人間的な衝動力(drive)を持っていた。
 「上昇する男は何か、例外的で自分の固有分野の領域を超えることをしなければならない。彼は注意を集めなければならないのだ」と。
 彼の急進的(radical)ふるまいの全ては、軽躁の古典的症候群だった。」

  ウ ラリー・エルソン

 「21世紀の事例研究の対象は、ソフトウェア会社のオラクル(Oracle)の恐ろしく金持ちの創立者たるラリー・エリソン(Larry Ellison)<(注3)>だろう。

 (注3)1944年〜。ユダヤ人の養子として育てられる。イリノイ大学Urbana-Champaign校中退。4度結婚して離婚。
http://en.wikipedia.org/wiki/Larry_Ellison
 またまた、彼の精神障害の話は、ウィキペディアには全く出てこない。

 彼は、早口、超活動的であること、爆発的なかんしゃく(temper)、そして物理的リスクへの向こうみずな(daredevil)意欲(appetite)という、軽躁の臨床的徴候群の多くを示す。
 その競争相手を叩き潰すことへの欲求で彼以上に知られているボス的人物はほとんどいない。
 時々、私は、こういった種類の諸慣習は、遺伝的に組み込まれているのか、それとも成功の結果として獲得されたのか、を考えることがある。
 結局のところ、億万長者が怒りを噴出させたり操作的ふるまいをしたりすることは多くの人が許容するけれど、彼らは一文無しの新参者がこのようなふるまいしたら拒絶するだろう。・・・」
 (以上、Dによる)

 (5)留保

 「しかし、以上のすべてに、<著者>は、非常に大きいただし書き(proviso)をつける。
 一つは、精神的に不均衡な指導者たちは、危機の時代においてのみ成功することができる、ということだ。
 ウィリアム・テクムシー・シャーマン(William Tecumseh Sherman)<(コラム#2882、3668、4426)>が1861年に言ったように、「きびしい(hard)時代においては、誰が正気で誰が精神異常なのかを見分けることは困難(hard)」なのだ。
 危機が収まるにつれて、正気と精神異常の区別が再起動してきて、後者はその有用性を失う。
 戦時にはうまくいき(prosper)、戦時の間の平時にはのたうった(flounder)ところの、チャーチルの軌跡は、このことを例示している。
 もう一つのただし書きは逆説であり、<著書>が援用するところの「ゴールディロックス(Goldilocks)原理(Principle)」<(注4)>だ。

 (注4)童話の『3びきのくま(Goldilocks and the Three Bears)』 に由来する、ほどよい加減を良しとする原理。
http://en.wikipedia.org/wiki/Goldilocks_Principle
 「景気が過熱しておらず、さりとて不況でもないというほどよい加減の状態の経済を指してしばしば「ゴルディロックス経済」(Goldilocks economy)と呼ぶ。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/3%E3%81%B3%E3%81%8D%E3%81%AE%E3%81%8F%E3%81%BE

 <この場合での>ゴールディロックス原理とは、精神異常は適度である場合(in moderation)においてのみ有益である、というものだ。
 過度の精神異常・・文字通りの精神病者(outright psychosis)・・は、強さと活力を弱める(debilitating)一方、過小の精神異常は何の意味もない。・・・
 彼の「同斜人(homoclite)」<(注5)>ないし「規範従者(rule-follower)」・・精神的に尋常な人を指す彼の造語・・は、罠で誘惑した(snare)ところの棘を露呈させる。

 (注5)「地層が同じ方向で同じ角度に傾いている場合、同斜構造という。 」
http://www.rnac.ne.jp/~oshu/naruse-dam/mocreport.htm

 彼の言うところによれば、同斜人達は、「極めつきの中流階級」なのだ。
 「あらゆる意味で「道の真ん中を歩む人々(middle-of-the-roaders)」なのだ。
 彼らは、盲目で、愛想がよく(affable)、すなお(docile)だ。
 「[トニー・]ブレアは、古典的な同斜人的家系(stock)、堅固なる(solidly)中流階級、完璧に信心深い(soundly religious)<人々>の出身だ」と彼は記す。
 <米大統領の>ジョージ・W・ブッシュもリチャード・ニクソンも<英首相の>ネヴィル・チェンバレンもそうだ。
 <著者>が同斜人でもって意味しようとしたことは、正気であることではない。
 それは、凡庸(mediocrity)であり、中位性(middlingness)であることなのだ。・・・」(B)

(続く)