太田述正コラム#4933(2011.8.16)
<皆さんとディスカッション(続x1295)>

<太田>(ツイッターより)

 8月15日がまた巡ってきた。
 太田史観的なもので先の大戦が回顧されるようになる時は来るのだろうか。
 来るとして、それはいつのことだろうか。
 この史観を最初に採択するのは「右」かそれとも「左」か。
 戦前の日本人は、2011年にもなって、そんなことがつぶやかれていると知って絶句するだろうな。

<ΛΛζζ>(「たった一人の反乱」より)

≫ようするにイギリスに階層間で対立ないしは差別があるから、今も階層間で言葉が違うっていう理解は根本的に誤りだって事じゃね。≪(コラム#4931。ΛΖΖΛ)

 どういうこと?イギリスには階層もなければ差別も対立もないってことか?とするとその国はイギリスではないだろ?
 生まれによって固定化された階層はないけど、経済力の差によって階層分けは厳然とされてるんだろ?
 金持ちの子のいく学校と、貧乏人のいく学校が違うから、のちのち言葉遣いの違いで差別されるってことだろ?

 <ΛΛΖΖクン(コラム#4931)、>部落差別がないなんて、関西人としてそんなことが言えないのはわかってる。
 部落の人達の就職については、エリートの話をしたわけではなく、小さい会社の事務仕事とか、土方とか、自営業で焼き鳥屋とか、靴屋とか、仕事はいろいろあるだろうよ。
 いろんな仕事をしてまともに暮らしてるっていいたかっただけだよ。

<ΛζΛζ>(同上)

>部落の人達の就職については、エリートの話をしたわけではなく、小さい会社の事務仕事とか、土方とか、自営業で焼き鳥屋とか、靴屋とか、仕事はいろいろあるだろうよ。いろんな仕事をしてまともに暮らしてるっていいたかっただけだよ。

 職業選ばされてる時点で普通じゃねえだろ。

<ΛζζΛ>(同上)

 何か噛み合ってない気がするんだけど、もともと、太田さんは根本的なところのイギリスの「階級」論にまでは立ち入ってないでしょ。
 だからこそ、昨日のディスカッションの該当議論の最後にコメントを付け加えて、「ボクのイギリス「階級」論は、コラム#92を参照のこと。」と言ってるんだと思ったんだけど・・・・・・。

>金持ちの子のいく学校と、貧乏人のいく学校が違うから、のちのち言葉遣いの違いで差別されるってことだろ? <(ΛΛζζ)

 こう主張するには演繹的に推定するだけじゃなく、何らかの典拠が必要だと思う。
 まぁ、何はともあれ、コラム#92と>>80の考えは相反するモノだから批判は下記コラムに対して頼むよ。
 『非階級社会(アングロサクソン論10)』
http://blog.ohtan.net/archives/50955741.html

 ・・・
 あぁ、改めて読んだら自分も>>80を誤読してトンチンカンな事を言ってる事に気付いた。
 取り敢えず>>69はイギリスには「階層もなければ差別も対立もない」という主張は含まれてないよ。
 あなたの主張も太田さんのコラムと相反している訳では無いね・・・・・・。

<太田>(ツイッターより)

 (コラム#4770に関し)「イギリスでは、所得、資産に応じて、微妙に生活様式、発音等の異なる階層は存在<する>」(コラム#92)が、日本では、「所得、資産に応じて」の「微妙」な「生活様式、発音等の異なる階層」すら存在しないってこと。

<太田>

 今回の英国の大暴動は、10代の若者達、というか、子供達が主役だった。
 彼らは、学校が夏休みで、或いは失業中で、或いは就職できなくて、何もすることがなったのだ。↓

 ・・・The marauding bands that set London alight and shut down town centers across Britain were made up, unprecedentedly, of often very young teenagers. This has not been an uprising of the dispossessed, the unemployed, or particular ethnic groups, but a violent convulsion of kids on holiday from high school. According to the Metropolitan Police, just under two thirds of those arrested on the second day of the London disturbances were teenagers. Many were 13, 14, 15 years of age.・・・
 <だから、これは、いかなる意味においても、抗議行動ではなかった。↓>
 This has not been, in any conscious sense, a protest・・・
 <保守党を中心とする連立政権の予算削減は、大部分がまだ実行に移されていない。↓>
 Since its election 15 months ago, the Conservative government has announced cuts in services and benefits that will have drastically negative effects on young people・・・
 <しかし、夏休みの、或いは失業中の、或いは就職先を探している、若者達の時間をつぶしてやる経費の削減だけは実行済みだった。↓>
 But few of these changes have yet taken effect, let alone had time for their impact to really hurt. The exception is youth services. Youth clubs have already closed, youth workers have been sacked, and programs that in previous years have occupied urban youngsters in the long summer break are not running. As a result, many young people have “nothing to do.”
 <彼らは怒っていないし、疎外とアノミーにもだえてもいない。彼らは退屈していただけだ。だから、階級対立が原因のフランス革命でも人種差別が原因のワッツ暴動でもなかった。『蠅の王』的な出来事だったのだ。↓>
 They are not furious, not writhing with alienation and anomie. They are bored. It is neither the French Revolution nor the Watts riots<(注1)>. It is more like Lord of the Flies<(注2)>.・・・
http://www.thedailybeast.com/newsweek/2011/08/14/si-n-simon-on-britain-s-riots.print.html

 (注1)1965年にロサンゼルスで起こった黒人暴動。
http://en.wikipedia.org/wiki/Watts_Riots
 (注2)『蝿の王』。「1954年出版の<イギリス人>ウィリアム・ゴールディングの小説。・・・未来の大戦中、疎開地へ向かう飛行機が墜落し、乗員である少年たちは南太平洋の無人島に置き去りにされる。当初は法螺貝を中心に規則を作り、協力し合っていた彼らであったが、次第に内面の獣性が目覚め、些細なことで対立を繰り返してゆく。やがて闇に潜む「獣」に脅え、狂気にとらわれた少年たちは、ついに自らの仲間である少年を集団で手にかけるまでに至る。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%9D%BF%E3%81%AE%E7%8E%8B

 『蠅の王』的なだけでなく、『時計じかけのオレンジ』的な様相があった。↓

 ・・・there were also Clockwork Orange<(注3)> dimensions (Alex and his “droogs”) alongside Lord of the Flies aspects (Jack Merridew’s murderous boy tribe) to all these events. ・・・

 (注3)『時計じかけのオレンジ』。「イギリスの小説家アンソニー・バージェスによるディストピア小説。1962年発表。又は、アンソニー・バージェスの原作からスタンリー・キューブリックにより映画化されたアメリカ映画。1971年公開。・・・暴力やセックスなど、欲望の限りを尽くす荒廃した自由放任と、管理された全体主義社会とのジレンマを描いた、サタイア(風刺)的作品。・・・主人公である不良少年の一人称の物語であり、ロシア語と英語のスラングで組み合わされた「ナッドサット言葉」が使用されている。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%99%82%E8%A8%88%E3%81%98%E3%81%8B%E3%81%91%E3%81%AE%E3%82%AA%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B8
 
 <これは、イギリスの社会規範の薄さが露呈した、ということだ。↓>
 Anthony Burgess’ and William Golding’s warnings about the thinness of our social norms have proved ominously prescient.・・・
 <21の先進国中、英国における子供達の扱いは最低だ。(この点は、昔からそうだろ(太田)。)↓>
 The UNICEF report that in 2007 placed Britain at the bottom of 21 industrialized countries in the way it treated its children・・・
 <階層間移動率はどんどん低下している。↓>
 ・・・The wellbeing of the top and middle depends on the relative wellbeing and opportunities of those at the bottom. Societies cohere or they perish. England on this score fares astonishingly badly. Our social housing estates are, in Lynsey Hanley’s words, vast people lockers. Once in, very few move out. A third of the bottom 10 percent of wage earners in 2001 to 2002 were still there in 2008 to 2009,・・・
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2011/08/16/2003510845

 私は、コラム#4770で、「私は、かねてより、イギリス社会の凝集性(安定性)はその大昔から受け継がれてきた、コモンローの存在によって担保されていると指摘してきたところ、比較的最近、これに加えて、イギリス人の間における同情(sympathy)心の遍在性も指摘するようになっているわけですが、この同情心が、どのような場でどのようにイギリス人に注入されるのかを、今後究明する必要がありそうです。」と記したところだが、私がこれを究明しきる前に、イギリス人の「同情心」が薄れ、社会の凝集性(安定性)が損なわれるに至っちゃった・・「階層」が「階級」化しつつある・・、ということのようだね。
 私のとりあえずの仮説を述べておこう。
 「同情心」の源泉であったところの、イギリスのエリートが備えていた、「中世」における「騎士」性、「近代」以降における「紳士」性・・シリーズ「イギリスと騎士道」(未公開)参照・・、が失われたためじゃないかな。
 そして、それがどうして失われたのかだけど、エリートが、「騎士/紳士」性を発揮する見返りとして、昔はフランスから有形無形の収奪をするという、また、百年戦争敗退後は植民地から有形無形の収奪をするという、見返りが期待できたところ、戦後、大英帝国が瓦解したために、もはや見返りが期待できなくなったこと、が、エリートの堕落、劣化・・騎士/紳士性の放擲・・をもたらした、ってことじゃないかな。
 そうだとすると、エリートの「同情心」をあてにできなくなったところの、非エリートもまた堕落、劣化するのは必然だ、ということにもなる。
 イギリスは、裸の個人主義社会、すなわち、非人間主義社会へと暗転的変貌を遂げてしまった、というわけだ。
 ゴールディングやバージェスらのイギリス人の気鋭の小説家は、戦後まだそれほど時間が経っていない時に、既に、イギリスがこうなることを予見していた、ということになるのかもしれない。
 こう考えてくると、イギリス・・英国じゃ、必ずしもないよ・・は、出口なしの未曾有の深刻な状況に直面している、と思った方がよさそうだ。
 『蠅の王』も映画化されているが日本では未公開であるのに対し、『時計じかけのオレンジ』の映画は公開されているので、一つ、鑑賞してみるかな。
 ところで、そうは言っても、英国は腐っても鯛だね。
 有事には、徹底的に有事的対応ができるんだもんね。↓

 裁判所は24時間仕事をし、今次大暴動での逮捕者の拘置率は、これまでの逮捕者のそれに比べて6倍の60%!↓

 ・・・ round-the-clock courts that have been in session in London and other cities, sending 60 percent of the 2,500 people arrested in the riots to jail pending trial. The national average for those jailed while awaiting trial for criminal offenses was 10 percent before the riots.
 <しかも、ムッチャ重い刑を宣告し続けている。↓>
 The courts have also handed down harsh jail terms even to the lesser offenders, including a five-month sentence in London to a 22-year-old single mother of two who was given a pair of shorts by a friend who had looted a local store. ・・・
http://www.nytimes.com/2011/08/16/world/europe/16britain.html?_r=1&hp=&pagewanted=all

<ζΛζΛ>(「たった一人の反乱」より)

 太田さんは日本独立を掲げてるわけだが、日本が独自の道を歩んでいくためには、米国からの保護状態からの脱却が必要であると。
 今回の原発災害で製造元のGEに対してとか、広島・長崎への原爆投下に対して、謝罪と賠償を求めるデモがあってもいいでしょ。
 こんなに自己犠牲を続けてる国が米国から独立するなんてありえないと思うんだが。
 太田さんもこの事に関して何も言ってないでしょ

<ζζΛΛ>(同上)

 「自己犠牲」ってなんのこと?

<ζΛζΛ>(同上)

 これだけの災害がありながら、原発製造業者のGEには一切の非難・賠償責任もせず、史上最大の戦争犯罪である原爆投下から何十年たっても誰も米国政府に謝罪を求めようとしないこと。
 この事抜きに日本独立はないように思うのだけど。

<ζΛΛζ>(同上)

 原爆といえばこんな動画が。
http://labaq.com/archives/51692509.html

 アメリカすげー。

<太田>

 それでは、その他の記事の紹介です。

 リビアの反体制派はザウィア周辺の2つの町も奪取。
 カダフィ政権が何日後に倒れるか、そしてカダフィはどうなるか、キミのヤマ勘は?↓

 ・・・Besides Zawiyah, which lies 27 miles west of Tripoli, rebel fighters said they captured the nearby towns of Sorman and Sabrata. Gaddafi forces were reportedly still in charge of the oil refinery near Zawiyah, and it was unclear who was in control of the coastal road to the border.・・・
http://www.washingtonpost.com/world/middle-east/top-libyan-official-arrives-in-egypt-in-apparent-defection/2011/08/15/gIQAD7X9GJ_print.html
 <カダフィ政権の内相がカイロに「亡命」。日本の主要紙は外電に依拠して副大臣としているが、恐らくは、外電の誤記。↓>
 ・・・ the interior minister and longstanding Gaddafi security aide, Nasser al-Mabrouk Abdullah, arrived in Cairo via Tunisia in a private plane with nine family members.・・・
http://www.guardian.co.uk/world/2011/aug/15/muammar-gaddafi-losing-grasp-libya

 「東海(East Sea)」の売り込みに失敗した・・当たり前だろ・・ので、今度は「Sea of Corea=Sea of Korea(漢字表記は?)」を売り出すってさ。懲りない韓国。↓
http://english.chosun.com/site/data/html_dir/2011/08/15/2011081500441.html

 最近の戦争に関するデータが手際よくまとめられているコラムだ。↓

 <戦争による死者数は急速に減少しつつある。↓>
 ・・・Worldwide, deaths caused directly by war-related violence in the new century have averaged about 55,000 per year, just over half of what they were in the 1990s (100,000 a year), a third of what they were during the Cold War (180,000 a year from 1950 to 1989), and a hundredth of what they were in World War II. If you factor in the growing global population, which has nearly quadrupled in the last century, the decrease is even sharper. Far from being an age of killer anarchy, the 20 years since the Cold War ended have been an era of rapid progress toward peace. ・・・
 <国家間の戦争はほぼ消滅したし、内戦もどんどん減ってきている。↓>
 Wars between big national armies all but disappeared along with the Cold War, taking with them the most horrific kinds of mass destruction.・・・
 The last conflict between two great powers, the Korean War, effectively ended nearly 60 years ago. The last sustained territorial war between two regular armies, Ethiopia and Eritrea, ended a decade ago. Even civil wars, though a persistent evil, are less common than in the past; there were about a quarter fewer in 2007 than in 1990.
 If the world feels like a more violent place than it actually is, that's because there's more information about wars -- not more wars themselves. ・・・
 <対テロ戦争での米軍の死者数は、まだ6,000人。↓>
 America's decade of war since 2001 has killed about 6,000 U.S. service members, compared with 58,000 in Vietnam and 300,000 in World War II. ・・・
 <ただし、戦争による非戦闘員の死亡率は、50%で、何世紀もの間、変わっていない。↓>
  ・・・the ratio of military to civilian war deaths remains about 50-50, as it has for centuries (though it varies considerably from one war to the next). ・・・
 <国連の平和維持活動は、このところ大いなる成果をあげている。↓>
 Overall, the presence of peacekeepers has been shown to significantly reduce the likelihood of a war's reigniting after a cease-fire agreement. In the 1990s, about half of all cease-fires broke down, but in the past decade the figure has dropped to 12 percent.・・・
 the U.N. has done a lot of good around the world in containing war. ・・・
http://www.foreignpolicy.com/articles/2011/08/15/think_again_war?page=full

 幸福度を決するのは、性格>友人・配偶者>カネ、の順番。
 幸福度の高い者は、仕事がはかどり、よい人間関係を築き、健康も約束される。↓

 ・・・the main determinants of happiness: the small effect of money, the great effect of marriage and friends, the massive effect of personality. ・・・
 Happiness today predicts higher job performance, better relationships and more years of health in the future. ・・・
 <とりわけ、先進国では、持っているカネの絶対的・相対的額は幸福度にはほとんど影響を与えない。↓>
 ・・・in First World countries there is little connection between either absolute or relative income and happiness. ・・・
http://online.wsj.com/article/SB10001424052702304203304576446021083519228.html?mod=WSJ_Opinion_LEFTTopOpinion
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太田述正コラム#4934(2011.8.16)
<孫文の正体(その1)>

→非公開