太田述正コラム#4412(2010.12.2)
<セオドア・ローズベルトの押しかけ使節(その3)>(2011.3.8公開)

 「新しくできた国<である米国>は白人至上主義の道を辿った。
 誰が米国市民になれるかを定める1790年の帰化法(Naturalization Act)は、「全ての自由な白人…」で始まる。
 議会では、ユダヤ人やカトリックが市民になれるかは議論の対象になったが、「自由な白人に市民権を限定する、という観念に公に疑義を呈する議員はいなかった。」(29)

 「1800年代初期における最も人気があった地理の本を書いたジェディディアー・モース(Jedidiah Morse<。1761〜1826年。地理学者で、モールス信号を作ったSamuel F. B. Morse,の父親
http://en.wikipedia.org/wiki/Jedidiah_Morse (太田)
>)は、その中で、「帝国が東から西へと旅してきたことは良く知られていることだ。
 帝国の最後のそして最も幅広い席<を占めるの>は米国だろう…それは史上最大の帝国となるのだ…・・・」と記した。」(30)

→残念ながら、大英帝国が滅びた現在、領土的に最大の白人帝国となったのはロシアでしたし、人口的に最大の帝国として復活を遂げたのは白人種ならぬ黄色人種の帝国である支那でしたね。(太田)

 「偉大な超絶主義者(transcendentalist)<(コラム#4334)>たるラルフ・ウォルドー・エマーソン(Ralph Waldo Emerson)<(コラム#3683、4034、4040、4161、4334)>も、同じく、アーリア<民族なる概念>の魔力の下にあった。
 「それは人種だろう。違うか?
 何億人もいるインドを欧州北部の遠く離れた<ブリテン>島による支配の下に置いたのは・・。
 以下のことが本当だとすれば、人種は色んなことを説明できるものだ(avails much)。
 ケルト人はすべてカトリックだし、サクソン人はすべてプロテスタントだ。
 ケルト人は権力の集中(unity)を愛するし、サクソン人は代表原理を愛する。
 人種はユダヤ人をコントロールしているところの影響力あるものだ。彼らは、2000年間にわたって、あらゆる気候帯において、同じ性格と職業を維持してきた。
 黒人(negro)においても人種は恐るべき重要性を持っている。
 カナダにいるフランス人は、母国の人々とのあらゆる交流を断たれていても、自分達の民族的特徴を維持してきた。
 私はタキトゥスの『ゲルマーニア』をそれほど昔でない頃にミズーリ、及びイリノイの心臓部で読んだが、私は、<ゲルマンの>森にいたゲルマン人と、米国の林にいる<人々>との数多の累次を発見した。」と。」(31)

→欧州文明に属するドイツの超越的観念論(transcendentalism)のカントらの強い影響を受けていた19世紀米国の知識人達(コラム#4334)は、カントらと人種主義(コラム#3702)も共有していた、ということです。(太田)

 「19世紀の多くにおいて最も人気があった社会科学の1つは骨相学(phrenology)、すなわち髑髏の研究だった。
 白人のキリスト教徒たる骨相学者達は、白人(Caucasian)の髑髏は最も対称的であり、「その円形(circle)は自然における最も美しい形であることから、この頭蓋は神によって創造された原型である」と喝破した。」(32)

→偽科学のおぞましさを痛感させられます。(太田)

 「19世紀における米国の科学的思想の「聖書」の1つが『人類の型(Types of Mankind)』というベストセラーだった。
 この本は1854年に喝采を博しつつ出版され、12版を重ね、20世紀に至るまで標準的教科書として使用された。
 『人類の型』は、白人種のみが文明化されおり、「史上、劣等人種が白人によって征服され混血すると、常にその<混血>劣等人種は野蛮へと堕して行った」とした。
 こうして<混血によって>生まれた野蛮な諸人種<の居住地において>は、「文明は、彼らの現在の人種が絶滅し、それが<純粋な>白人によって取って代わられない限り復活することはありえない」というのだ。・・・
 <この本は、>インディアンの絶滅は、博愛的(philanthropic)であると主張した。
 「博愛の大いなる狙いは、世界の支配的諸人種が出来る限り純粋かつ賢明である状態を維持すること・・・<すなわち、自分達が力を蓄えるまで渡来することを控え、その他の諸人種(劣等人種)と混血しないこと、>である。何となれば、それが、<支配的諸人種がいよいよ到来するまでの間、>その他の諸人種が繁栄した幸福な状態を維持できる唯一の道だからだ」と。」(32〜33)

→分かりにくい箇所なので、ブラッドレーが『人類の型』から引用している他の箇所を踏まえ、私が、随時言葉を補ってみました。
 要するに、アングロサクソンに代表される純粋なゲルマン人の子孫たるアーリア人は、同じ白人で一応支配的諸人種に属するところの、スペイン人やポルトガル人(やロシア人(?))のように、安易に劣等人種が居住する地域に到来して彼らと混血することなく、しばらく劣等人種を繁栄させ幸福な状態にしておいた上で、一挙に到来してこの劣等人種を絶滅させなければならないのであって、現にそうしてきた、というわけです。
 これは、世界中で米国人だけに見られる異常な思想であり、その約1世紀弱の後に、ナチスドイツが、この思想を継受し、まだそれほど混血してはいないので間に合うのではないかと、ドイツ及びその周辺地区の「劣等」民族たるユダヤ人の絶滅を図ろうとした、ということになりそうです。
 何と悪魔的な思想であることよ、と唾棄したくなりませんか。(太田)

(続く)