太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/

太田述正コラム#4585(2011.2.27)
<皆さんとディスカッション(続x1119)>

<太田>(ツイッターより)

 カダフィが立てこもる首都トリポリの人口は200万。リビアの総人口650万の3分の1近い。
http://bbc.in/h5GTfg
 こんなところで長期にわたる市街戦が行われたら、どんなに多数の死者が出るか。
 国際社会はどうしたらいい?

 (コラム#4376に関し)占領時代の日本の「著名」外交官OBで、吉田ドクトリン信奉者じゃない人==国民を蔑視しない人=買弁じゃない人、いそうもないけど、万一おれば、ぜひ教えて欲しいな。さっそくその人のコラムを書いて顕彰したいので。

<TA>

≫このうちのいくつか、いや、一つ欠けていたとしても、日本の「主体的」属国化=吉田ドクトリンの恒久化、はなかった可能性が高いことから、サンソムの上記予言はまぐれあたりであったと言うべきだろう。≪(コラム#4584(未公開)。太田)

 この予言が、すでに縄文モードに入っていた日本への理解によるもの、と解釈することは不可能なのでしょうか。
 この可能性が否定されなければ、「まぐれあたり」とまで言うのは、少し言い過ぎな気もします。

<太田>           

 こいつは鋭いツッコミですね。
 サンソムの主要著作中、『西欧世界と日本 上・中・下』 (ちくま学芸文庫)は今でも簡単に手に入りそうですが、これか、あるいは、『日本文化史』(創元選書)(絶版)あたりをお読みになり、TAさん御自身で、彼に日本史に係る縄文モード的認識があったかどうか、お確かめになったらいかが?
 ただし、彼、「その歴史に関する著作において、自分自身の見解を明らかにしない達人であると広く認識されている(Widely regarded as expert at keeping his own opinions absent from his historical writings)」
http://en.wikipedia.org/wiki/George_Bailey_Sansom
ということのようなので、相当行間に目を凝らさないと、彼の見解を読み取ることはできないかもしれませんね。
 サンソムは、若い頃に『徒然草』の英語世界への紹介をしている(彼に関する英語ウィキペディア前掲)ところ、このことも、手掛かりにはなりそうもありません。

 ただ、仮にサンソムに縄文モード的認識があったとしても、吉田茂がいなかったとすれば、日本社会の縄文化にもかかわらず、戦後日本は、少なくとも朝鮮戦争勃発直後には再軍備を果たし、主権回復(講和)時には独立国になっていた可能性が極めて高いと思いますよ。

<ブルー>

 前に太田ブログでは押井守氏の「パトレイバー2」<(コラム#3727、3745、3789、3791、3813、3825、3833、3857、3905、3907、4003、4067)>が現実と一切関わりのないガジェットアニメとの批判を受けてました。
 それはそうかも知れないと思うのですが、現在のリビア情勢を見るにつけカダフィに付く体制派の有り様が押井守氏の「地獄の番犬ケルベロス」に登場したの国家警察特殊部隊の振る舞いのように見えて来てしまい、ガジェットムービーの現実の見方に対する影響力というものを考えさせられます。
 例えばアメリカ軍のコードネームにおける「スタートレック」の影響力などを見るとそう思える。
 主役の敵方の名称「クリンゴン」にまつわる名称を実際の敵側ターゲットに付ける、という事などの行為などにおいてです。

<太田>

 リビアの人々も、「パトレイバー2」等の押井守映画(かなりインターネットにアップされていてタダで見ることができる?)、見てるはずだってわけですね。
 典拠は?

<δΦΦδ>(「たった一人の反乱」より)

 三島由紀夫は独立を願って自決したんだね・・・方法は正しいとは思えないけど
http://www.nishiokanji.jp/blog/?p=1034

<太田>

 「<三島由紀夫の「檄」>文中にある「アメリカは真の日本の自主的軍隊が日本の国土を守ることを喜ばないのは自明である」は、すごい一言である。私<(西尾幹二)>もずっとそのように認識し続け、またそのように書き続けてきた。」(上掲)

 方法が正しかったかどうか以前の問題として、当時の三島も、当時から現在までの西尾も、決定的におかしいのは、米国は、朝鮮戦争が起こった瞬間から、「日本の自主的軍隊<に>日本の国土を守<って欲しい>」のではなく、日本に、自らの安全保障のために、軍事的国際貢献(集団的自衛権の行使)・・その時は、朝鮮半島への出兵・・をして欲しいと思い続けて現在に至っているってことが分かってないことだ。
 日本の国土への軍事的脅威なんて、日本が西側の一員であり続けさえすれば、日米安保なんてなくたって存在しないのさ。(朝鮮戦争勃発時に米韓安保はなかったけれど、米国は韓国を、軍事力を投入して守った。いわんや日本をや。)
 三島が自決する前年の1969年、ニクソンはニクソン・ドクトリンを発表し、世界中の米国の与国や同盟国に対し、自主防衛を呼びかけた
http://en.wikipedia.org/wiki/Nixon_Doctrine
が、日本に関して言えば、それは、集団的自衛権の行使、すなわち日本の「独立」を日本に呼びかけたものなのさ。
 だから、三島の自決は、まさに、西尾自身が紹介しているところの、「国の外にhostile enemyを見ない、自閉的で幻想的な行動、世界の政治現実をいっさい映し出していない、リアリティから隔絶した自虐的な行動だった」(ドイツ大使シュタンツェル氏)のよ。
 そんな三島の「檄」のこのくだりを今だに評価している西尾は、ちーとひど過ぎて、もはや形容する言葉もないな。

 なお、日本の国土への軍事的脅威はないと言ったが、それは在来兵器の話であり、核の脅威はある。
 ただ、この話を始めると長くなるので、ここでは差し控えとく。 

<δΦΦδ>(同上)

 ところでTPPで関税自由化をプロパガンダしているマスコミだけど、関税自由化すれば4月から予定している小麦粉などの一次産物の値上げすら逆に値が下がるーーなんて報道してないねぇ。
 TPPを国民に納得させるにはいい機会だと思うのに、結局、官僚の操り人形にしか過ぎないマスコミは農務省官僚に釘刺されてるのかねえ。
 本当に宣伝報道しかしなくなったから、自分の頭で考えられないんだな。

<太田>

 それでは、記事の紹介です。

 何だ、その程度で総力戦を戦ったのかと思っちゃうな。
 それにしても、(引用しなかったが、)この社説の二・二六事件批判は、シーラカンス的批判だなあ。↓

 「・・・軍事費を賄う国債の増発が繰り返され、終戦時の公債残高は国民総生産(GNP)の2倍近くにも膨らんだ。・・・
 <現在もまた、>国の借金残高は名目国内総生産(GDP)の2倍近い900兆円まで積み上がった・・・」
http://www.asahi.com/paper/editorial.html

 次に、リビア革命関連です。

 2005年のダルフール問題での決議以来の人道に対する罪に係る制裁決議・・国際刑事裁判所への付託・・が国連安保理で採択された。
 そのほか、経済制裁も科された。↓

 ・・・The UN Security Council has voted unanimously to impose sanctions on Muammar Gaddafi's Libyan regime for its attempts to put down an uprising.
 They backed an arms embargo and asset freeze while referring Col Gaddafi to the International Criminal Court for alleged crimes against humanity.
 US President Barack Obama has said the Libyan leader should step down and leave the country immediately.・・・
 Saturday night's vote was only the second time the Security Council has referred a country to the ICC, and the first time such a vote has been unanimous. ・・・
http://www.bbc.co.uk/news/world-africa-12589434
 <その時、米ブッシュ政権は棄権したが、今回は初の全会一致の決議だった
 ・・・The Security Council cast a similar vote before, in 2005 when it called for an investigation of violence and crimes against humanity in the Darfur region of Sudan・・・. The United States abstained from that vote, which the official attributed to “a different administration.” The court has indicted Sudan’s president, Omar Hassan al-Bashir, on charges of genocide. ・・・
http://www.nytimes.com/2011/02/27/world/africa/27nations.html?ref=world&pagewanted=print
 <軍は碌な装備を与えられておらず、弾薬もほとんど与えられていないのに対し、直轄の親衛諸隊は良い装備と十分な弾薬が与えられている。
 だから、トリポリの「解放」は容易ではない。↓>
 ・・・During Gaddafi's 41-year rule, he steadily gutted the military because of concerns that soldiers could stage a coup, as he did in 1969. Gatrani said the military in Benghazi only has out-of-date tanks that barely run. Their weapons are old, and the government does not supply them with ammunition.
 Instead, Gaddafi concentrated ammunition and weapons in the hands of loyal special forces known as the Katibat, who were trained to protect the regime and are supplied with the latest and most potent tanks and arms. ・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2011/02/26/AR2011022602622_pf.html
 <リビアには150万人もの外国人労働者がいる。引用しなかったが、サハラ以南のアフリカからの労働者は、彼らの政府から何の支援の手も差し伸べられていない。また、国外に脱出するこれら労働者は、体制派の要員達から法外な賄賂をとられるし、中にはカネを全部巻き上げられる者もある。↓>
 ・・・There are as many as 1.5 million migrants working in Libya, according to the International Organization for Migration・・・
http://www.nytimes.com/2011/02/27/world/africa/27migrants.html?ref=world

 リビア革命関係を離れるけど、イェーメンで、強力な部族長が体制に反旗を翻したので、サレー大統領の立場が一挙に厳しいものになった。↓

 One of Yemen’s most prominent tribal sheiks resigned from the ruling party on Saturday and called for President Ali Abdullah Saleh to step down, posing one of the most significant challenges yet to the Yemeni leader・・・
 A few tribal chieftains had already weighed in against Mr. Saleh, but Sheik Ahmar comes from a different branch of the same northern tribal confederation, the Hashids, as Mr. Saleh, so his decision to turn on the president is likely to be more destabilizing. ・・・
http://www.nytimes.com/2011/02/27/world/middleeast/27yemen.html?ref=world&pagewanted=print
--------------------------------------------------

太田述正コラム#4586(2011.2.27)
<スムート・ホーリー法(その1)>

→非公開

太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/