太田述正コラム#4543(2011.2.6)
<皆さんとディスカッション(続x1098)>

<太田>(ツイッターより)

 (コラム#4541に関し)1883年から1936年まで続いたエジプト保護領統治で、英国は原住民の医療、農業、教育等について何にもしなかった。
http://bit.ly/eKqqhf 
 とにかく、日本の植民地統治は、比べようもないほど良心的だった。

 エジプトは定住外国人に対しひどいことしたけど観光客たる外国人にはヨイショしてきたしそうするよう国が「強制」してきた。
http://bit.ly/hI4Rfi
 目先の利益>長期的利益、と錯覚するのはありがちのことだけどね。

<bonkers_blunder>(同上)

≫米国等からもっとカネをせしめるためには、形の上でより自由民主主義化することでもって、反米・反イスラエル的民意をより迫力ある形でアッピールするのが一番効果的だってわけだ≪(コラム#4541。太田)

 米国が世界にたかられる一方、日本は朝貢を続けて米国植民地へ転落?

<太田>

≫ボクはエジプト「革命」は中長期的には成功すると見ているわけだが、それはどうしてでしょう? 誰か、答えてみてちょうだい。≪(コラム#4541。太田)

 誰も答えてくれないんで、自分で軽ーく答えとくか。
 第一には、人類は、過去の歴史から学び、どんどん賢明になってきていることだ。
 エジプト人だってその例外じゃないだろってこと。
 自由民主主義の普遍的価値を彼らが「信じている」ことは間違いないと「信じる」べきさ。↓

 ・・・They do not seek a Chinese-style, totalitarian, market Marxism; they crave not the kleptocracy of Russia; they evince no desire to live in a caliphate.・・・
 For all its imperfections, it is for liberal democracy that they yearn.
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2011/feb/06/andrew-rawnsley-egypt-mubarak-democracy

 ちょっと脱線。
 この英国人の手になるコラムで、以下のくだりが出てくるが、イギリスの自由民主主義化の歩みを16世紀の「暴君」ヘンリー8世から解き明かすってのは初めてお目にかかったな。
 もっともこれ、米国の19世紀の南北戦争を持ち出して、米国をおちょくるためには、13世紀のマグナカルタあたりまで遡っちゃ、ちょっとやり過ぎだって思ったんだろうね。↓

 ・・・Anyone with any sense of history knows the road to liberal democracy can be bumpy and bloody. Britain took centuries to progress from tyrant kings such as Henry VIII to representative parliamentary government. Americans killed each other in a civil war which left more of them dead than any other conflict. ・・・

 脱線ついでにもう一つ。
 このコラムの次のくだりは間違ってるぞ。
 'genuinely established democracies' なんてそもそも存在しないという前提で話を進めよう。
 先の大戦で、自由民主主義(的)国家である英国と日本が戦ったじゃん。
 (なお、当時の米国は文字通りの人種差別国家だったから、自由民主主義(的)国家とすら言い難いって、あえて一応言っとこう。)↓

 ・・・There has never been an armed conflict between two genuinely established democracies.・・・

 第二は、第一と関連してるが、イスラム的な自由民主主義の繁栄国家たるトルコ・・人口もほぼ同じ・・という範例がすぐ近くに出現するに至っているってことだ。
 イスラム同朋会とトルコの与党とは友党だってんだからね。↓

 ・・・Today, with similarly sized populations of about 80 million, Turkey has an economy that is nearly four times the size of Egypt’s. ・・・
 Turkey’s ability to thrive as a predominantly Muslim country that maintains diplomatic relations — though chilly — with Israel is one that American officials would like to see other Muslim nations develop. ・・・
 There is a great deal of ideological compatibility between the A.K.P. and the Muslim Brotherhood,・・・
 Perhaps, but in the end that could be a plus rather than a minus. ・・・
http://www.nytimes.com/2011/02/06/world/middleeast/06turkey.html?hp=&pagewanted=print

 (蛇足ながら、Muslem Brotherhood をボクはイスラム同朋会と訳しているが、一般にはムスリム同朋会と訳されている。Muslimってイスラム教徒のこと↓

 A Muslim or Moslem is an adherent of the religion of Islam.・・・ 
http://en.wikipedia.org/wiki/Muslim

だから、ボクの訳でも間違いじゃないんだからね。)

 第三には、エジプトは、イランのように石油がないし、現に米国等の欧米諸国から多大なる援助をもらっていることから、エジプトを、徹底した反米・反イスラエル国家にするわけにはいかないし、真正イスラム原理主義国家にするわけにもいかない、ということをエジプト国民の大部分が自覚しているであろうことさ。

 さて、「革命」の成り行きだ。
 ムバラク政権は、(与党の幹部の総とっかえを断行(引用しなかった)して反権力側に媚びつつも、反権力運動家の令状なしの逮捕を続けている。↓

  Vice President Omar Suleiman of Egypt has won the blessing of both the Mubarak and Obama administrations as the leader of a political transition toward democracy in Egypt. But human rights advocates say that so far Mr. Suleiman, who also is in charge of Egyptian intelligence, has shown no sign of discontinuing the practice of extra-legal detention of political opponents — a hallmark of President Hosni Mubarak’s nearly 30-year rule that is a central grievance of the protesters in the streets. ・・・
http://www.nytimes.com/2011/02/06/world/middleeast/06detain.html?_r=1&hp=&pagewanted=print

 ボクが、英国防大学の時のエジプト人同僚とその後没交渉になってるって前に書いたが、米国に留学等でやってきたエジプト軍人は山といるが、米軍人との関係も希薄なもんらしいね。
 また、先般の反権力側への暴徒の殴り込みに実はエジプト軍部も関与してたらしい。↓

 ・・・Although the Pentagon has long promoted its close ties to the Egyptian military, which receives $1.3 billion annually in United States aid, top officials concede that neither Defense Secretary Robert M. Gates nor Adm. Mike Mullen, the chairman of the Joint Chiefs of Staff, have especially deep relationships with their Egyptian counterparts. ・・・
 ・・・the military’s leadership was orchestrating events, and had been involved in allowing attacks against the protesters by pro-Mubarak forces on horseback and camels — but not by the army, so as not to taint it in the public eye. ・・・
http://www.nytimes.com/2011/02/06/world/middleeast/06military.html?hp=&pagewanted=print

 ところで、深雪さんのこの前のつぶやき(コラム#4539)中、ネットメディアの話は、まんざら間違いじゃない。
 エジプトで反権力側の意識の醸成にITが貢献したのは事実だからだ。↓

 Mr. Said, a 28-year-old Egyptian businessman, was pulled from an Internet cafe in Alexandria last June by two plainclothes police officers, who witnesses say then beat him to death in the lobby of a residential building. Human rights advocates said he was killed because he had evidence of police corruption. ・・・
 Within five days of his death, an anonymous human rights activist created a Facebook page — We Are All Khaled Said — that posted cellphone photos from the morgue of his battered and bloodied face, and YouTube videos played up contrasting pictures of him happy and smiling with the graphic images from the morgue.・・・
 Facebook, YouTube, Twitter and cellphones made it easy for human rights advocates to get out the news and for people to spread and discuss their outrage about Mr. Said’s death in a country where freedom of speech and the right to assemble were limited and the government monitored newspapers and state television. ・・・
 The protests continued, first every week or so, and then sporadically last fall, until Tunisia fell and then the April 6 Youth Movement Facebook group and the We Are All Khaled Said Facebook page began inviting Egyptians to a protest on Jan. 25. ・・・
http://www.nytimes.com/2011/02/06/world/middleeast/06face.html?ref=world

 しかし、騒擾が始まってからはITはその役割を終えたに等しいこともまた事実のようだ。↓

 ・・・the biggest demonstrations to date occurred on a day when the Internet was down. “There wasn’t any Twitter. There wasn’t any Facebook・・・This didn’t have anything to do with Twitter and Facebook・・・
http://www.nytimes.com/2011/02/06/opinion/06rich.html?ref=opinion&pagewanted=print

 これで最後だけど、かくも有名になったタハリール広場の詳しい図が載ってたよ。↓

 Diagram of the clashes between pro- and antigovernment demonstrators in Tahrir Square.・・・
http://www.nytimes.com/interactive/2011/02/03/world/middleeast/20110203-tahrir-square-protest-diagram.html?ref=world#panel/3

<ΔυυΔ>(「たった一人の反乱」より)

 話題、太田さんにあまり関係ないかもだけど、少子化問題って、太田コラム読者はどう考えてる?
 自民党の残した最大の負の遺産だと個人的には思ってるんだけど。皆さんはどうだろうか?
 みんな日本が完全にアングロサクソン化して移民容認って考えなのかな?
 個人的には、民族問題抱えずに少子化を解決するとしたら代理母、精子、卵子の売買を容認して国が売買された匿名の配偶子を使ってIVFして代理母に出産させる。ってのが将来的には増えると思ってるんだよね。
 再生医療の技術が発展したら、人口子宮も当然作れるだろうしそのあたりの観点から読者間で議論できないものかな?

<ΥΥδδ>(同上)

 まず少子化を「問題」と考えるべきかどうかから始めなきゃならんな。
 少子化と高齢化が急激に進んだことによる年齢構成比率のアンバランス自体を「問題」とすべきと思う。
 少子化による人口減少自体は、まず目標とする人口(適正人口)から考えなければ、「問題」とすべきかから議論が噛み合わないぞ。
 ・・・
 <訂正。>考えてみりゃ、人口が増えることによる、国家にとってのデメリットはないよな。
 「適正人口」と言ったが、少しアホなことを言ったかも知らん。↓

「Q:人口が減るのは好ましくないということですが、日本の経済から考えて適正人口はどれ位なのですか?

高橋:よく聞かれる質問ですが答えはありません。
人々の暮らしの水準とそれを支える経済との相対的な関係ですから、
絶対的な適正値はありません。歴史的に見ますと、鎌倉時代は農業中心の経済であり、
人口1千万人を超えることは出来ませんでした。
江戸時代はこの3倍の3000万人に人口が増加しました。農業力がアップしたからです。
このように極めて相対的であり、限界は指摘出来てもある生活水準の中で、
という適正人口の推定は出来ません。」
http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/020301_01.html

 人口増加に対する絶対的な縛りになるのは、やっぱ土地(国土)だよな。
 全ての国民が一戸建てに住めることを理想とするならば、適正人口も決めようもあるが。
 俺は集合住宅でも一向に構わん。

<ΥδΥδ>(同上)

>まず少子化を「問題」と考えるべきかどうかから始めなきゃならんな。

 少子化(日本の場合は人口減少の段階にある)は安全保障上や、経済的な面でも大きな問題だと思う。
 単純にいって人口少なかったら、人口に占める軍事資源の割合は増えるし、人口減ったらマーケットは縮小する。
 <ΥΥδδクン>のいうように、老年人口偏在からの社会福祉の問題もそうだけど、やはり少子化(日本は人口減少)そのものは「問題」なんだよ。

<ΔυυΔ>(同上)

 <ΥδΥδクン>のいってる事は密度効果
「固体群密度の変化によって出生率や死亡率が変化したり、固体の形態や行動が変化したりすること」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%86%E5%BA%A6%E5%8A%B9%E6%9E%9C
だね。
 アズキゾウムシとか、実験動物では確かに<ΥδΥδクン>の言う要因が固体数の増減をきめてるけど、人間の場合は、他の社会的要因もあるんじゃないかな。
 一人あたりのGDPとか、中絶禁止の有無、移民の是非とか。
 ただ、移民は民族問題をはらむから、いっそ政府が子供作って育てればいいんじゃないの?ってのが<ボクが>書いた代理母容認と配偶子売買容認。

<太田>

 それでは、その他の記事の紹介です。

 イスラム過激派中、アルカーイダ系はほんのちょっとだってよ。↓

 ・・・Though new groups in Somalia and the Yemen are linked, tenuously, to the "AQ<(=アルカーイダ)> hardcore", many others – in Iraq, Indonesia, Algeria, Morocco, India, Bangladesh and Pakistan – are not. ・・・
http://www.guardian.co.uk/world/2011/feb/06/al-qaida-afghanistan-peter-bergen-review

 英国でポップス・ボーカルのリミックスによって新しい音楽を生み出したジェームス・ブレーク(James Blake)の曲を聴けるよ。↓
http://www.slate.com/id/2282423/
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太田述正コラム#4544(2011.2.6)
<日英同盟をめぐって(続)その5)>

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