太田述正コラム#4286(2010.9.30)
<ナチス親衛隊(その1)>(2011.1.13公開)

1 始めに

 エイドリアン・ウィール(Adrian Weale)の 'The SS: A New History' が上梓されたので、ナチスドイツのおぞましさの象徴的存在である親衛隊(SS)について振り返ってみることにしました。

A:http://www.ft.com/cms/s/2/651bf2d8-c76a-11df-aeb1-00144feab49a.html
(書評(以下同じ)。9月28日アクセス)
B:http://www.newstatesman.com/books/2010/08/history-himmler-hitler-germany
(9月29日アクセス(以下同じ))
C:http://www.arrse.co.uk/content/243-review-ss-new-history-adrian-weale-reviewed-fronty.html
D:http://www.warbooksreview.com/war-books-review/2010/09/the-ss-a-new-history-.html
E:http://en.wikipedia.org/wiki/Schutzstaffel
(SSについてのウィキペディア)
F:http://en.wikipedia.org/wiki/Waffen-SS
(ヴァッフェンSSについてのウィキペディア)

 なお、ウィールは、英陸軍諜報軍団(Intelligence Corps)の元士官であり、対イラク戦後の占領下のイラクで1つの州の副知事を務めたことのある、フリーランスの著述家です。
 彼がドイツ語ができないことが、この本の限界の一つであるとされています。(A、B、C)

2 ナチ親衛隊

 (1)概論

 「・・・親衛隊(SS=Schutzstaffel)は、ヒットラーの護衛として始まったが、第三帝国における、最も忠誠心が篤くてイデオロギー的に生一本な組織へと発展していった。
 ナチズムの前衛そのものとして、SSは、最も凶悪な罪々のいくつかに連座することによって、戦争末期には犯罪集団と見なされるようになり、最も悪しき評判をたてられるようになった。・・・
 また、SSの新しい「道徳性」・・・は、要するに、疑似哲学的支柱を提供することによって、多くのSS要員に、彼等がやってのけたことを可能にさせた。
 憐れみとかキリスト教といった「時代遅れの」諸概念から解放されることによって、彼等は人類を人種の陣営表へと仕分けした形で見た。
 そこでは、アーリア人と北欧人(Nordics)とが頂点に位置し、ユダヤ人とスラブ人とが害虫の地位に貶められた。
 後者の範疇の人々に対する容赦なき殺人的取り扱いにおいて、彼等は、自分達を、その中から新しいドイツを鍛え上げるところの、人種的優越への生死をかけたダーウィン的闘争の兵士であると見た。・・・」(A)

 「・・・能力ある、すこぶる野心的なハインリッヒ・ヒムラー(Heinrich Himmler<。1900〜45年。最終的にナチスドイツでヒットラーに次ぐナンバーツーになった
http://en.wikipedia.org/wiki/Heinrich_Himmler (太田)
>)のコントロールの下、SSは、警察と公安諸機関を乗っ取り、強制収容所体制を組織し、(収容所の奴隷労働を使った)自らの産業権益を発展させ、人種と安楽死についての決定者となり、欧州のユダヤ人の絶滅における中心的役割を演じるに至るプロセスを歩み始めた。
 そして、1939年に<第二次世界>戦争が始まると、その小さかった軍事部門がヴァッフェン(Waffen=武装)SSへと発展し、1944〜45年には、大部分はがたがたであったかもしれないけれど、ドイツ陸軍それ自体に伍すような巨大な軍事力となった。・・・
 ヒムラーは、SSについて、神秘的なドイツの過去における騎士団の再来という、嗤うべきビジョンを思い描いていた。・・・」(D)

 「・・・<SSが>モデル<にしたのは、>・・・テンプル騎士団(Knights Templar)<(コラム#614、3812、3814、3816)やイタリアの黒シャツ隊(Blackshirts<。ベニート・ムッソリーニによってイタリアで1919年に創設
http://en.wikipedia.org/wiki/Blackshirts (太田)
>)だった。
 また、SSの幹部(Obergruppenfuhrer<。1900〜84年
http://en.wikipedia.org/wiki/Karl_Wolff (太田)
>)でヴァッフェンSSの将軍であったカール・ヴォルフ(Karl Wolff)によれば、SSは、法王に絶対的に従順なイエズス会(Society of Jesus<。1534年にイグナティウス・ロヨラがフランシスコ・ザビエルらとともに設立
http://en.wikipedia.org/wiki/Society_of_Jesus (太田)
>)をもベースにしている。・・・」(E)

→私に言わせれば、ナチズムは、「時代遅れの」キリスト教(とりわけカトリシズム)の「進化」形であり、SSもまた、カトリシズムの狂信的な諸信徒団体の「進化」形に外ならない、ということです。
 従って、ナチズムのおぞましさは、カトリシズムのおぞましさの「進化」したものであり、SSのおぞましさは、これら、古の諸信徒団体のおぞましさの「進化」したものである、と見るべきでしょう。(太田)

(続く)