太田述正コラム#4455(2010.12.24)
<皆さんとディスカッション(続x1054)>

<太田>(ツイッターより)

 (コラム#4453に関し)昔神童今ただの人ってよくある話だけど、大学同期生のこと書いててつくづくそう思うね。
 私言うところの短大並みの日本の法学部教育のせいかもしれん。
 日本の人文社会科学も官僚機構も司法も、だからダメになってる?

<太田>

 吉田ドクトリン創業者の吉田茂も、経済優先路線を確定した池田勇人も、自分じゃ全く信じてない吉田ドクトリンを見せ金にしてノーベル平和賞を詐取した佐藤栄作も、みんな東大法卒だから、戦後日本の「属国/ガバナンス喪失」は、すべて東大法が元凶って言えるのかもね。

<ブルー>

 お答え有難う御座います。
 米国と日本で中国や北朝鮮に対しての考え方の温度差がある時に防衛大綱に即応機動部隊構想を入れるという事は、例え見せ金的な意味であれ、民主党政権にも自力でそうしたものを構想し、閣内で了承するくらいの器量はある、という事なんですね。

<太田>

 冷静に各行成分野を見て行けば、政権交代後にこれまで民主党政権がなしとげたことだけでも、十分、歴史の評価に耐えると思いますよ。

<××××>

 太田さん、以前に送ると言っていた資料はなんだかんだでまだ送れて無いのですが、とりあえず個人的に面白いと思った、論文などの各種資料を抜粋して送っておきました。
 以下、送った資料が収録されている著書一覧であります。

細谷千博著 『日本外交の座標(中公叢書)』 中央公論社 1979年
細谷千博編 『日英関係史―1917年〜1949年』 東京大学出版会 1982年
細谷千博 イアン・ニッシュほか 編 『日英交流史一巻 1600―2000 政治・外交Ⅰ』東京大学出版会 2000年
平間洋一 イアン・ガウ 波多野澄雄 編 『日英交流史三巻 1600―2000 軍事』東京大学出版会 2001年
細谷千博編 『ワシントン体制と日米関係』 東京大学出版会 1978年
寺元康俊著 『日露戦争以後の日本外交―パワー・ポリティクスの中の満韓問題』 信山社 1999年
フォーリン・アフェアーズジャパン 『フォーリン・アフェアーズ傑作選 1922〜1999―アメリカとアジアの出会い<上>』 朝日新聞社 2001年
日蘇通信社編 『蘇連年鑑 一九三九年版』 日蘇通信社 1939年
 (二部構成になっていて、今回送ったのは、後半部分の「日満支ソ関係の部」だけです。)

 1906年(第二回日英同盟改訂)〜1937年(日支事変勃発)までの期間の日英関係資料を送りました。
 いわゆる、司馬史観(英米事大史観)でいう、坂の上から転がり落ちて行くところにあたります。
 つまり、次第に日英関係が希薄化し、日米関係が険悪化していった期間の資料であります。
 日露戦争以後も日本政府はただ、『極東の局面が、日露戦争間の状態に類似する危機に面することが、何時かは再現して来ると考えて居た。
 しかして、その時の味方は、依然“英国でなければならない”と信じて居た。・・・』のでありますがね。
 (上記典拠 『日露戦争以後の日本外交』p502 加藤高明の言葉)

 まぁ、とりあえず、日本の対ソ軍事戦略がイギリスの在華権益にダメージを与え、日本が大陸における対ソ軍事戦略を放棄するか、イギリスが在華権益を放棄するかしなければ、もはや対立が避けられない状況に至った日支事変までの資料を送っておきました。

<太田>

 今朝届きました。
 多謝。

<XXXX>

 ちなみに今、「赤露と帝国の大陸政策に関わる資料」をお送りしようと準備しているのですが、それを主題にした論文や本なんて(ほとんど?)無いことから資料集になる予定です。
 この資料集についてですが、主に『帝国議会衆議院議事摘要』から「国務大臣演説と質疑」を抜粋してお送りしようと考えて居る訳ですが、これ以上は断りなしに送ると、なんだかリアルスパムメールになる懸念に思い至り、判断を仰ぎたいところですが、どうですか?

 ちなみにこんな資料です↓
 衆議院第七十三議会 近衛内閣総理大臣の演説
 『・・・申すまでもなく、日満支の強固なる提携を枢軸として、東亜永遠の平和を確立し、もって世界の平和に貢献せんとする帝国不動の国策であります。・・・
・・・おもうに東亜の安定勢力たる帝国の使命はいよいよ大にして、その責任はいよいよ重きを加うるに至れるものと言わねばなりませぬ。
 この使命を果たし、この任務を尽くす為には、今後と言えども多大の犠牲を払うの決意を要するは元よりであります。
 しかも今日において、この決意を為すにあらざれば、結局不幸を将来に貽(のこ)すものであります。
 したがって、現代の我々がその犠牲を忍ぶということは、正に我々が後代同胞に対する崇高なる義務であることを信ずるものであります。・・・』

 衆議院第七十三議会 廣田外務大臣演説
 『・・・ソヴィエト連邦と支那との関係に付きましては、我国一般の特に注意を惹いて居る所でありまして、支那は昨年8月、ソ連邦との間に不侵条約を結び、ことに国際共産党員が支那の各層に食い入って同国の社会秩序を破壊し、わざわいして居りますることは、東亜の文明と諸民族の福祉を念とする帝国として、多大の関心を持たざるを得ない次第であります。・・・』

 衆議院第七十三議会 民政党 川崎克君の質疑
 『・・・蒋介石をして敢えて抗日侮日を恣(ほしいまま)にせしむるに至った所以(ゆえん)のものは、言う迄もなく一は「コミンテルン」の赤化戦略がその原因の一つであり、また一面には第三国の政治的勢力<=英国>の介在せることが、これまた排日抗日の温床となった一大事実を見逃す事は出来ないのであります。
 先程、きたる外務大臣もこの点に触れて御報告になりましたが、かような事実があって、既に帝国と致しましては赤化の侵略防止の為には、日独伊の間には協約が成立致し、また北国境線に沿って蒙古連合自治政府は、チャハル、綏遠、山西、河北の一部を包容致しまして、ようやく、その成立を告げて、極力赤化防止の陣容を整うるに至って居りますが、この機会において中南支における第三国の政治的勢力<英国>の介在を容認することがあったならば、他日その禍根を深からしめ、相互の不利益を醸す憂い少しとしないのであります。
 併せながら、今日蒋政権が没落して、同政権に対しまする所の帝国政府の態度が明瞭となり、東亜の形勢が一変致しました現下の情勢から見まするならば、心ある英国人の如きは、進んで政治的干渉を避くるの態度に出ることを信じて疑わないのであります。

 今日支那問題の解決と言い、また東洋永遠にわたる所の平和的建設の事業と言い、あるいは列国権益の保全と言い、ことごとく日本と協調するにあらざれば為し能わざることは、もはや世界の識者は何人も疑いを容れざる所であるのであります。
 この場合、日支の紛争の原因を根本的に芟除(せんじょ)し、東洋平和の本を作らんとするならば、その禍根を根絶する意味<→コミンテルンの赤化戦略防止>において、第三国<英国>の反省を求めて、我国が特殊的権益を有する地位にあることを認識せしめ、堂々とその主張を述べて、支那の富源開発の為に列強と共に協調するの誠意を披瀝するこそ、東洋平和の基礎を確立するゆえんであると信ずるのであります。
 この点に対しまして、政府の所信を承りたいのであります。・・・』
衆議院事務局発行 『第七十三回帝国議会 衆議院議事摘要』上巻 1938年 pp6〜24

民政党 川崎克議員
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%9D%E5%B4%8E%E5%85%8B

<太田>

 ぜひ送って下さい。
 なお、私の最新の問題意識等を把握して貰うのと、あなたの送ってくれた史料の消化、利用ぶりを知って貰うためにも、太田コラムの名誉有料会員になって欲しいんですねえ。
 メルアド教えていただけませんか。
 ところで、MSさん、USさん、次著の関係で、こういう部分が不足しているが、ついてはこういう史料があるといいのではないか、というものありませんか?
 XXXXさんに見繕ってもらえるかも。
 悪のりでスンマヘン。

<ΠΔΔΠ>(「たった一人の反乱」より)

 最初に<コラム#4445で>自分の書いた文章を読んでみた。
 「小沢の長男は海自の幹部候補生のはずだが・・・防衛問題に興味ないのかねえ・・・ 」
としか書いてない。

 上記の文章って「息子がそうだから(小沢も)興味あるって前提」という意味にとれるかぁ?
 「ないのかねえ」で断言してないじゃない。読解力が足りないんじゃないか?
 それに自分は希望を言っただけで、それを”幻想”扱いするのはどうかと思うぞ。
 ただ、前原→間違った国防知識持ってる 岡田→国防に興味無し
であれば、同じく国防に興味が無いながらも、信頼できる家族に国防関係の専門家がいる小沢の方が何かあったときに相談できる分、信頼できると思うけどね。

 <ΔπΔπ氏(コラム4451)>は我が家の親子関係はお互いに信頼関係も無いし困った時も助け合わない破滅した親子関係でだいたい自衛隊に入る人間はそんな奴らばかりだから小沢家でもそんなもんだろうとおっしゃるかもしれんがな。
 そういわれたら反論できんけどなw

<ΠδΠδ>(同上)

 海自の幹部候補生を国防関係の専門家扱いしていいものかどうかはまた別のお話。

<ΠδδΠ>(同上)

 小沢の長男は2等海尉で退職。
 それが国防の専門家?

<太田>(ツイッターより)

 2ちゃんねらー諸君、「国防の専門家」とは何かを考えるに当たっては、まずもって、この映画<(コラム#4396)>の主人公とヒロインの生き様、そして太田コラム<(#4396以下)が>描くところのチャーチルの生涯を咀嚼して欲しい。
 話はそう簡単じゃないんよ。

<太田>

 それでは、記事の紹介です。

 恐らくはヒッチェンスと同趣旨の批判(コラム#4435)を投げかけたと思われる、ワシントンポストのコラムについて、キッシンジャーが弁明にこれ努めている。

 ・・・I am sorry I made that remark 37 years ago.・・・
 Context matters. ・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/12/23/AR2010122304552_pf.html

 ま、確かに、下掲のような背景事情を念頭に置く必要はあるだろうな。↓

 ・・・<3 million>・・・Jews who received an unequivocal nyet when they sought to leave <Soviet Union>, and the increasing numbers of newly politicized American Jews who badgered their own government into acting on behalf of their Russian brethren, ultimately hastened the demise of the Soviet Union.・・・
 Jewish leaders <in the US> didn't want to interfere with détente and the prevailing American foreign policy of realpolitik — the moral appeasement of tiptoeing around issues of human rights — not wanting to aggravate the Soviets and possibly inflame the Cold War. But eventually, what began as a whisper reverberated into a shriek. A newly inspired group of leaders emerged in the 1970s. College students, flush from the social upheavals of the 1960s, took to the streets. ・・・ 
 Meanwhile, Capitol Hill・・・<taking into account that> the stagnating Soviet economy, where wheat became as valuable as warheads・・・responded with the Jackson-Vanik amendment to the 1974 Trade Act, which served notice on the Soviets that trade with the United States depended on how many Jews, among others, would be allowed to emigrate. And with Israeli victories in the Six Day and Yom Kippur wars, Jews transformed their self-image from one of perpetual victimhood to one of political empowerment.・・・
http://www.latimes.com/entertainment/news/la-ca-gal-beckerman-20101226,0,1530373.story

 メキシコの失敗国家ぶりが詳細に描かれている。↓

 ・・・Some 29,000 people have died in drug wars within the past four years, and this year the number of killings doubled to about 12,000. An astonishing 98 percent of the crimes committed in Mexico remain unpunished.・・・
 President Calderón declared war on the cartels, but he lacked the necessary tools. The police are corrupt at almost every level, and in some communities they're identical with the ruling cartel, which helps to explain why so many municipal officers are murdered. The justice system is also viewed as corrupt. There are no independent prosecutors, and charges are never brought in many cases, because they are handled poorly or because defendants buy their way out.・・・
 The government has hardly any functioning investigative agencies. Mexico receives key information from US government agencies like the Drug Enforcement Administration (DEA). The Americans provide the army with information on the whereabouts of drug lords, allowing the Mexican soldiers to capture or kill them. This "decapitation strategy" produces reports of successes, but no real success. The cartels quickly replace their leaders.・・・
 <じゃ、どうすればいいのか?↓>
 First,・・・comes a reform of the judicial system. Second, laws are needed to fight corruption in politics, because 70 percent of all election campaigns in the country are partially financed with drug money.
 Third, Mexico must investigate the flow of funds from the drug trade into the economy. According to Buscaglia, 78 percent of the Mexican economy has ties to the drug cartels.
 Finally, social programs are needed for young people, as the Colombian city of Medellín has demonstrated. Such programs are meant to turn young people's attention away from a life working for the cartels -- a life that can end quickly.・・・
http://www.spiegel.de/international/world/0,1518,735865,00.html

 瞑想(座禅)は人を長命にする可能性が高いとよ。↓

 ・・・after a three-month stay at a meditation retreat, people showed higher levels of an enzyme・・・telomerase・・・associated with longevity.・・・
 ・・・people with higher levels of telomerase also showed more increases in psychological improvement.・・・
http://healthland.time.com/2010/12/23/could-meditation-extend-life-intriguing-possibility-raised-by-new-study/

→私の仮説:日本のような生来的な人間(じんかん)主義社会においては、心理的安定(低ストレス)が社会的にビルトインされているので、人は長生きする。

 利己心(自由)を掲げた米独立革命は繁栄を、これに加えて同情(compassion。平等+博愛)を掲げたフランス革命は恐怖政治をもたらしたとよ。↓

 ・・・ In the French Revolution, compassion for the oppressed was an overriding virtue. But as the hard-nosed liberal philosopher Judith Shklar once noted, this compassion "was doomed to frustration" and bred rage. "The terror was the expression of this explosive sentimentality," Shklar wrote, "which has haunted and destroyed" every revolution since. The genius of the American Founding Fathers, she argued, was that they did not succumb to the "politics of pity."
In the meantime those nasty old capitalists, with their vigor, risk-taking, animal spirits and reptilian brains, have created so much wealth for so many societies over so many centuries—and have raised the standard of living for so many people who would otherwise live in grinding poverty—that their efforts, easily considered merely selfish, begin to look downright compassionate.・・・
http://online.wsj.com/article/SB10001424052748704774604576036192104542026.html?mod=WSJ_Opinion_LEFTTopOpinion

→私の仮説:「同情」を強要すると恐怖政治になるが、「同情」(←人間主義)が社会的にビルトインされておれば、恐怖政治は必要がない。
 「同情」抜きの米国社会は高ストレス社会であり、人々は、国が繁栄しても心理的安定が得られず、従って長生きもできない。

 19世紀前半、タイのスントーン・プーが王様のラーマ2世、3世とともに共作した『クン・チャーン=クン・ペーン(Khun Chang Khun Phaen)』
http://en.wikipedia.org/wiki/Khun_Chang_Khun_Phaen
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%82%A4%E6%96%87%E5%AD%A6
・・50年間に亘る壮大な三角関係物語・・、なんて全然知らなかったな。
 完全英訳版が初めて出版されたと言うが、邦訳はまだなさそうだ。
http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-pacific-12065344
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太田述正コラム#4456(2010.12.24)
<パーマーストン(その1)>

→非公開