太田述正コラム#4244(2010.9.9)
<幸福論(その1)>(2010.10.9公開)

1 始めに

 読売の電子版に次のような簡単な記事が出ていました。

 「・・・暮らしに対する満足度を10段階で自己評価してもらう「生活評価」の数値は、年収が増えるにつれ一貫して上昇した。
 しかし、「昨日笑ったか」「昨日悩んだか」などの質問で測る「感情的幸福」の度合いは、年収7万5000ドル(約630万円)前後で飽和、頭打ちになっていた。教授は「高収入で満足は得られるが、幸せになれるとは限らない」と結論している。」
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=30465&from=yoltop
(9月8日アクセス)

 私、その前日、米タイム誌でより詳しい記事を読んだばかりだったので、邦字紙としては、報道が早いなと感心しました。
 そこで、太田コラムとしてはめずらしく、邦字紙よりほんのちょっと遅れて英米の主要メディア(この場合はタイム誌)の報道ぶりをご紹介したいと思います。

2 お金と幸福

 「・・・お金で幸福は買えないと人は言うが、約75,000ドルまで・・・なら買えるようだ。・・・
 ・・・<ただし、>75,000ドルを超えても、稼げば稼ぐほど、人は自分の生活が全般的によりうまく行っていると感じる。
 しかし、だからと行ってその人は、毎朝、より楽しい(jovial)と感じるわけではない。・・・
 <もう一度繰り返すが、>巨視的に見れば、人々の評価は自分達の所得によって決まると言って良いのであって、所得が多くなればなるほど、彼等は自分達の生活がうまく行っている、とより感じるのだ。・・・
 ・・・年間所得が10%上昇するごとに、人々は、満足度の梯子を同じ程度上がる。
 それは、その人が25,000ドル稼いでいるか100,000ドル稼いでいるかにはかかわらない。
 「高い所得は幸福をもたらしはしないが、自分がより良いと思う生活をもたらしてくれる。」・・・
 お金と幸福に関するこれまで研究で分かったもう一つは、幸福と関係するのは、絶対的な富ではなく、相対的な富ないし地位、つまり、隣人よりどれくらい余計お金を持っているかである、ということだ。・・・」
http://www.time.com/time/business/article/0,8599,2016291,00.html
(9月7日アクセス。以下同じ)

 「・・・同年齢集団内や隣人同士において、ある人がより高いランクにある場合、どれだけドル・・この研究の場合はポンド・・・を稼いだかにかかわらず、ランクが高まれば高まるほど、その人はより幸福になる。
 「我々がやろうとしていることは、この30年から40年、我々が大きな経済成長を経験してきたというのに、それが我々をより幸福になどしなかったのはどうしてかを理解し説明することだ。・・・
 仮に絶対的な所得が重要なのであれば、我々の所得は増大したのだから、あらゆる人が国家レベルでより幸福になるはずなのだが、そうは見えない。
 だから、我々が示しつつあるのは、生活の満足度に関しては、絶対的な富よりもランクの方が、そのより良い予測手段である、ということだ。・・・」
http://www.time.com/time/health/article/0,8599,1974718,00.html

3 お金以外のものと幸福

 「・・・一旦、人の基本的ニーズが充足されると、追加的な所得は、人の生活の満足度の感覚を高めることはほとんどない・・・。
 <では、何が満足度を高めるのか。>
 よい教育か? 母さんと父さんよ、申し訳ないが違うんだな。
 教育でもなければ、高いIQが幸福への道を開くわけでもない。
 若さか? やはり違う。
 実際には、高齢者達の方が、一貫して若者達よりもその生活に満足している。
 彼等はまた、暗いムードに陥ることが若者達よりも少ない。
 最近の・・・調査では、20歳から24歳の人は一月中平均3.4日悲しいが、逆に65歳から74歳の人はたった2.3日だった。
 結婚か? これはちとややこしい。
 結婚している人々は一般的に独身者達より幸福だが、それは、彼等がそもそもより幸福な人々だからかもしれない・・・。
 晴れた日々か? 違ーう。・・・
 プラスに働くものとしては、宗教的信条は、間違いなく気持ちを上向かせる。
 しかし、果たしてそれが神のおかげなのか、持ち上げてくれるのはコミュニティーに属しているからなのか、見きわめることは容易ではない。
 友人達か? 大いにイエスだ。
 2002年に行われた・・・研究で、最も高い水準の幸福度と最も少ない鬱の兆しの10%の学生が共有していた顕著な特徴は、彼等の、友人達や家族との強い紐帯と、これらの人々と共に過ごす時間の多さだった。・・・」
http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,1015902,00.html

(続く)