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太田述正コラム#4100(2010.6.29)
<日進月歩の人間科学(続X13)>(2010.7.29公開)

1 始めに

 久しぶりに表記をお送りしましょう。
 上の空の効用の話と、脳と性格の話です。

2 上の空の効用

 「・・・起きている間、人は約30%の時間、上の空でいる(mind wander)ように思われる。・・・
 あなたが真っ直ぐで空っぽの高速道路を運転している時、4分の3の時間はあなたは上の空でいるのかもしれない・・・
 人が寛いでいる時の脳をスキャンすることにより、神経科学者達は、「規定値(default)ネットワーク」を見出した。
 人が甚だしく上の空でいるとこのネットワークは活発になる。
 <他方、>人がなにかの作業(task)を始めると、脳の執行(executive)ネットワークの灯がともり指令を発し始め、規定値ネットワークはしばしば抑制される。
 しかし、上の空の挿話的な出来事(episode)の中には、この両方のネットワークが同時に点灯している場合がある。・・・
 どうして両方のネットワークが活性化するのかは議論の的になっている。
 一つの学派は、執行ネットワークがはぐれた思考をコントロールし、頭を作業の方に戻そうと働いていると推論する。
 心理学者のもう一つの学派・・・は、両方のネットワークが<協力して>、直接的な作業を超えるところの、実行に移すべき様々な事柄(agenda)について作業をしている、と推論する。
 後者の理論は、様々な研究で、上の空になりやすい人の方が創造性の試験で、より高い点数をとる傾向があることが発見されていることを説明することに資するかもしれない。・・・
 この創造的過程を奨励するためには、・・・ジョッギングに行ったり、散歩したり、編み物をしたり、単に座っていたずら書きをしたりするのが助けになるかもしれない。
 というのも、比較的大変ではない作業は、生産的に上の空たるべくあなたの頭を解放するように見えるからだ。
 しかし、あなたは<、それと同時に、>ひらめいた瞬間(Eureka moment)の自分をつかまえたいとも思うはずだ。
 ・・・創造性<を発揮する>ためには、あなたは、<自分自身を>上の空たらしめる必要がある・・・のだが、自分が上の空でいることを自覚するとともに、アイディアが浮かんだときにそれをつかまえることが可能である必要があるわけだ。・・・」
http://www.nytimes.com/2010/06/29/science/29tier.html?8dpc=&pagewanted=print
(6月29日アクセス。以下同じ)

→「上の空でいる」は、「夢想する」と訳した方がいいのかもしれませんね。
 私は、車を運転している時はもちろん、ピアノを弾いている時まで、上の空になる時がある、とずっと以前に申し上げたことがあると思いますが、これは私が創造性があることの証左だ、と言いたくなるけど、ホントにそうですかねえ。(太田)

3 脳と性格

 「・・・外向的な人は、平均より大きな眼窩前頭皮質(orbitofrontal cortex)を持っている傾向がある。
 脳のこの部位は、眼窩の前に鎮座し、脳が報酬を受け取っていると認識した場合に活性化する。
 ・・このような人は、より快活かつ断定的であり、報酬を欲する傾向を有する。・・・
 高度に良心的である人は、仕事熱心で自己規律的だ。
 彼等は、平均より大きな側部前頭前野(lateral prefrontal cortex)を持っている傾向があり、あらかじめ計画を立て、複雑な思考を構文解析(parse through)し、意思決定を行う・・・。
 神経症の人(neurotic)、或いはしばしば否定的かつ鬱的思考を抱く人、はより小さい前頭前野を持っている傾向がある。
 脳のこの部位は、感情を規制することで知られている。
 同様に、愛想の良い(agreeable)人は、特定の諸部位のサイズが大きいものだ。
 開けっぴろげの人・・このタイプの性格は創造的で新しい思考方法を享受する・・は、あらゆる部位のサイズが、目立って<他の人々と>異なっている。・・・
 ・・・各種性格は、一般に安定的であるものの、人生の間の様々な経験によって影響を受けることがありうる。・・・
 換言すれば、小さい中間前頭前野(medial prefrontal cortex)の人は、それが大きくなるという希望がある、ということだ。」
http://www.nytimes.com/2010/06/29/science/29obbrain.html?8dpc=&pagewanted=print

→性格だってある程度は可塑性がある、ということなのでしょう。
 これだけ性格が解剖学的に裏付けられるようになると、脳の特定の部位を肥大させたりして性格を人工的に変えることができるようになるのもそう遠いことではなさそうですね。
 人格整形を謳う医者が出現するだろう、ということです。(太田)

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