太田述正コラム#4007(2010.5.14)
<皆さんとディスカッション(続x833)>

<けいc。>

 2枚目の写真の卒業後にケンブリッジの核エンジニアリング修士課程に行く候補生<(コラム#4005)>は、アメリカ軍やカダナ軍のスラングで通称BCG(=Birth Control Glasses、これをかけると誰しもブサイクに見えて異性からデートに誘われなくなるため、避妊メガネと揶揄した言い方)と言われる、視力が弱い兵士に新兵訓練期間や士官学校在学中は着用が義務付けられている官製メガネ(GIG=Government Issued Glasses)のせいで、びみょ〜に美人でなく見えるているのも原因だと思います・・・笑

<eno>

 いつも拝見させていただいております。

 普天間(在日米軍)基地問題は、日本政府から金をしぼりとることがその本質(?)と認識しているのですが、下記記事は、そのために米国が(テニアンでも可能なのに)難癖をつけていると理解していいのでしょうか?

 「米側は、海中からのテロ攻撃だけではなく、・・・くい打ち桟橋方式(QIP)・・・だと埋め立てに比べて上空からのミサイル攻撃に弱く、反撃態勢をとるまでの復旧作業が困難であることを主な理由に挙げて反対した。」
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/japan_us_relations/?1273817857
 ・・・

<太田>

 どんな工法であれ、普天間移転費用はすべて日本政府が負担するので、QIPへの反対は、純軍事的な理由からでしょうね。

<少数株主>

 グアム、北マリアナ知事に会わなかった、loopy鳩山にはもううんざり。
 私なら、わざわざ訪れてきてくださった方に、敬意を持ってお会いさせていただく。・・・

<太田>

 典拠付けましょう!

 「グアム・北マリアナ両知事の13日の東京訪問は、総理との面会が実現できず延期となった。官邸にブロックされたようだ。鳩山総理は会うと言っているようなので、総理との面会は、来週の両知事ホワイトハウス訪問以降になる。・・・」
https://twitter.com/hatatomoko/status/13842703069

 グアムも北マリアナももともとはスペイン領で、米西戦争を契機として、前者は米国領になります。
 そして後者は、同じく米西戦争を契機にドイツ領になり、第一次世界大戦の結果日本の委任統治領になり、先の大戦の結果米国の信託統治領となり、最終的に米国の保護国になった、という経緯があります。
 米国は、その人種主義的帝国主義の残骸たるプエルトリコやグアンタナモ基地とともに、グアム、更には北マリアナを今後どうするのかが問われている、という観点が必要です。
 また、北マリアナについては、日本ももっと積極的に関わっていくべきでしょう。
 さしあたり、日本がすべきことは、普天間基地の沖縄内、本土内移転や、テニアン移転・・テニアンも既にその3分の1は米軍用地になっている・・ではなく、在沖海兵隊の(ハワイを含む)米国内への移転か廃止を米国に迫ることです。↓

 United States presidents rarely visit the US territory of Guam (or Guahan in the Chamorro language), but President Barack Obama may visit in June 2010.・・・
 ・・・the real reasons for Obama's visit: to rally community and official support for the Department of Defense plan to relocate 8,600 US Marines from Okinawa (Japan) to Guam, provide additional live-fire training sites, expand Andersen air force base, create berthing for a nuclear aircraft carrier, and erect a missile defense system on the island. ・・・
 Under the terms of the 1898 Treaty of Paris, Cuba, Guam, Puerto Rico, and the Philippines were ceded to the United States. Spain sold the Northern Mariana Islands and the Caroline Islands to Germany, thus separating Guam politically and culturally from neighboring islands in the Marianas and throughout Micronesia.・・・
 Guam is one of 16 non-self-governing territories listed by the United Nations, and represented by one non-voting delegate in the US Congress. Residents are US citizens but not entitled to vote in presidential elections.・・・
 The <U.S.> military・・・which occupies one-third of the island's landmass・・・already has a live-fire range on Guam・・・and also on Tinian, where it controls nearly two-thirds of the island through leases with the government of the Commonwealth of the Northern Mariana Islands (CNMI). ・・・
 ・・・the huge bases located in Okinawa, the US-military economy is now estimated to account for less than 10% of the Okinawan economy, even including indirect income. ・・・
 By contrast, Guam has been under <U.S.> colonial rule for centuries.
 The population is much smaller than Okinawa, and two-thirds of Guam's residents are outsiders, many of whom are attached to the military. In addition, islanders' US patriotism runs deep with wartime experiences as recent as World War II and the "liberation" of the island from Japan by US forces. Guam is heavily dependent on the military・・・
 While members of the Japanese Social Democratic Party have suggested Tinian as an alternative for the Futenma relocation,・・・Most recently, the Republic of Belau (Palau) Senate has asked President Johnson Toribiong to offer the island of Angaur as an alternative location for the marines base at Futenma. ・・・
http://www.atimes.com/atimes/Japan/LE14Dh01.html
 
<植田信>(2010.5.12)http://8706.teacup.com/uedam/bbs

 ・・・<石破茂氏の>「文芸春秋」(2010.2)記事の題名は、「米軍基地が消えてなくなる日」です。・・・
、石破氏の説をよく見ると、彼は、「米軍基地を日本列島から減らせ」と主張しています。
 そこで、それにはどうしたらいいのか、と説明します。
 集団的自衛権の行使を認めよ、と。

 「(現行の日米安保では)日本は極東における平和と安全のために戦わなくてもいいことになっており、自国の安全を守るときだけ戦うことになっています。なぜそうなっているかといえば憲法9条があり、集団的自衛権の行使が禁じられているからです。・・
 日本は日米安全保障条約では、米国に対して米軍に基地を提供する義務を負うことで、義務を互いに交換し、日米同盟を成立させているのです。・・
 ですから、集団的自衛権の行使を認めれば、米軍への基地提供の義務の軽減を求めることが出来るはずです。現に集団的自衛権を行使しうるフィリピンは米国と相互防衛条約によって軍事同盟を結んでいますが、米国に対して、条約上、基地提供の義務は負っていません。このように日米安保条約に基づいて日米が交換している義務が何であるかを正確に見極めれば、集団的自衛権行使を認めることが沖縄の基地縮小や移転を米国に求める第一歩であることを理解していただけるでしょう。・・
 日米同盟をより日本の国益に合致するように再構築しようとするならば、まず変わらなければならないのは、米国ではなく、日本国民でしょう。」P.181

 べりー・グッド。
 なんか、太田述正氏の説を拝見しているような気がします。
 集団的自衛権の行使を認めることが、日本国の自立の第一歩、と。

 では、なぜこれまで認めてこなかったのでしょうね?
 石破氏によると、そんなことをしたら、日本はたちまちアメリカの戦争に巻き込まれるから、との反論が出てくるということです。で、それに対しては、そのつど、日本側が参戦するかどうかの判断をすればいい、と。

 しかし、こういう話になると、つまり、石破氏も正しく「問題は日本人にある」と指摘しているわけですが、なぜ日本人は、自国の安全保障にそれほど憶病になっているのでしょうか?

 ここは、戦前の日本軍の実質が「皇軍」にあったことが非常に大きいと、私は思っています。日本人は、自分たちのために戦争したわけではないのでした。だから、戦争など、常に、他人事だったわけでした。他人事のために、日本人は死んでいったわけです。だから、戦後の日本人は戦争など、絶対いやだ、となりました。

 これは、日本国の統治論の問題ともなります。
 日本国を本当に統治しているのは誰なのか、と。

<植田信>(2010.5.14)同上

 ・・・軍事を放棄した国の国民は、どうなるか、ということになります。まさに戦後の日本は、この実験場です。・・・
 実験結果のもう一つは、自衛隊員の士気低下です。これは太田述正氏が、元防衛庁の官僚の立場から、いわば内部告発をしています。自衛隊はまともな仕事をさせてもらえない、と。
 それはそうでしょう。憲法9条は、日本国の軍事力の放棄を宣言しています。自衛隊が存在することが憲法違反です。憲法学者の中には、米軍基地が日本にあることも、すでに憲法違反である、と主張する人がいます。
 日本人の知恵でしょうが、ここは、無視となっています。・・・
戦後の日本人の軍事力放棄国家という実験の意味は、いつ、日本人がデモクラシー時代の主権国家の意味を認識するか、です。
 皇室の護持のためではなく、それだけのためではなく、むしろ、普通の日本人の、お互いの生命と財産の安全保障のために自発的に軍事を組織する、という発想に、いつ、日本人は到達するか、です。・・・

<太田>

 戦時中はともかくとして、戦前の日本が民主主義であったことについては、植田さんも認めておられると思っていたのですが、必ずしもそうではなさそうですね。
 東大教授の加藤陽子さんの『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社 2009年)がベストセラーになっているようですが、その題名からしても、また、彼女が『学士会報』の最新号に書いている小論で、ご自分のこの本に関連して、2005年の郵政選挙と1932年の総選挙を比較していることからも、(私の代わりに)ぜひお読みいただいて、感想をお聞かせ願いたいものですね。
 なお、旧軍は、徴兵制であり、国民と旧軍の意識的距離の近さは現在の国民と自衛隊のそれとは比べようもありません。
 旧軍、とりわけ関東軍は、国民の大方の声・・内地や大陸の現場に通暁した人々の声と言い換えても良い・・に最も忠実に従って下克上的な行動を繰り返したのであって、これは民主主義の直接民主主義的な病理的発現であった、というのがかねてからの私の見解であることも付け加えておきましょう。

 それでは、その他の記事の紹介です。

 霊長類も人類も、本来的に利他的であるって話、何回もしてるけど、本日封切られる映画『ロビンフッド』
http://en.wikipedia.org/wiki/Robin_Hood_(2010_film)
がらみで、改めてまとめられてる記事が出てた。↓

 ・・・researchers in psychology and related fields are finding that humans seem inclined to engage in Robin Hood-like thinking, which they often call "egalitarian motives," "inequity aversion," or "variance reduction." In fact, there's a growing body of evidence that, despite appearances, we're Robin Hoods at heart.・・・
 The Robin Hood impulse isn't just a modern quirk: Anthropologists have found that it dates back to early humans.・・・
 6 million years ago, rank and file members of society protected egalitarianism by ganging up on alpha males whenever they emerged.・・・
 ・・・humans became even more egalitarian about 250,000 years ago, when they began hunting in groups. ・・・
 Primatologists have even found egalitarian impulses in nonhuman primates.
http://www.slate.com/id/2253736/pagenum/all/#p2

 タイ情勢が一層緊迫化してるけど、ワシントンポストが、めずらしくも、ファイナンシャルタイムスの記事をそのまま転載してた。↓ 

 ・・・The shifting demands exhausted Abhisit's patience. "I have cancelled the election date . . . because protesters refuse to disperse," he said on Thursday. "I have told security officials to restore normality as soon as possible." ・・・
 But Abhisit is also running out of options. The police are widely believed to share many of the concerns of the protesters, and the army seems willing to carry out containment operations but has shown little appetite for the sort of bloody confrontation that would be necessary to clear the demonstrators from their stronghold.
-- Financial Times
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/05/13/AR2010051300487_pf.html

 死に絶えてたヒューマニズムが1世紀ぶりに支那で復活しつつあるとよ。↓

 ・・・Western-style humanism flourished in China a century ago, brought over by the Chinese students of Irving Babbitt, a professor of French at Harvard University who attained a cult-like following among some Chinese intellectuals for his writings and lectures on humanism.
 Mr. Babbitt advocated retaining the good things from the past. He insisted on the importance of the individual, and the study of the humanities.
 Humanism’s gentle, evolutionary approach clashed with the make-it-new passion of many students, intellectuals and politicians grouped around China’s early 20th-century May Fourth Movement(五四運動). In 1949, the revolutionaries won the argument when the Communist Party founded the People’s Republic of China. For over three decades, humanism vanished from Chinese thinking. ・・・
 ・・・a little-known 1908 text by Lu Xun<(魯迅。1881〜1936年
http://en.wikipedia.org/wiki/Lu_Xun (太田)
)shows that> Lu Xun・・・was actually a humanist. ・・・
http://www.nytimes.com/2010/05/14/world/asia/14iht-letter.html?ref=world&pagewanted=print

 ちなみに、アーヴィング・バビット(Irving Babbitt。1865〜1933年)は、米国の文藝評論家であり、ルソーに批判的でエドマンド・バークの衣鉢を継ぐと称した人物だ。
http://en.wikipedia.org/wiki/Irving_Babbitt
 また、魯迅は1908年当時は東京にいたと思われるが、言及された論考について、前掲の彼についての英語ウィキには直接的記述は見あたらない。
 この記事が示唆する魯迅(私に言わせれば日本/アングロサクソン文明志向)と五四運動(同じく欧州文明志向)との関係は、英語ウィキのそれとも違うユニークなものだが面白い。
 なお、彼についての日本語ウィキ↓の記述はややエクセントリックでよろしくない。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AD%AF%E8%BF%85
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太田述正コラム#4008(2010.5.14)
<帝国陸軍の内蒙工作(その4)>

→非公開