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太田述正コラム#3882(2010.3.12)
<鯨・イルカ狂騒曲>(2010.4.16公開)

1 始めに

 下掲↓のニュース、ご存じの方、多いと思います。

 「・・・米カリフォルニア州サンタモニカの日本食レストランが、米国では禁止されている鯨肉を客に出し、連邦法違反で10日、起訴された。・・・日本のイルカ漁を告発し、米アカデミー賞を受賞した映画「ザ・コーヴ」の制作スタッフが、店で出された肉を持ち出して鑑定に出したのがきっかけになった。・・・
 米海洋哺乳類保護法は、鯨などの海洋哺乳類の売買を禁じている。シェフには最高で禁固1年と罰金10万ドル(約900万円)、会社には罰金20万ドルが科される可能性がある。・・・」
http://www.asahi.com/showbiz/movie/TKY201003110212.html
(3月12日アクセス。以下同じ)

 そこで、本日の主要メディアの鯨とイルカ関係の記事をそれぞれ一つずつご紹介しておきましょう。

2 鯨料理

 「・・・鯨<肉>を多くの人々で分け合う慣習は、たくさんの人々を食わせるためには多数の動物を殺すよりは一匹の生き物を犠牲にする方が良いとの仏教的原理に立脚している。
 こういうわけで、仏教の多くの宗派は、鯨を食べることを好む。(そしてエビを食べることを避けるよう言う。)・・・

→ウーム、初耳である。(太田)

 米連邦当局は、1918年に米自然史博物館で昼食会・・・を催した。
 それは、<第一次世界大戦で欧州に派遣されていた>米国の部隊が牛肉に恋い焦がれていたので、それの代替物たる鯨肉を銃後で推奨しようという試みだった。・・・
 出席者の一人は、鯨の肉について、「美的ないしは洗練された料理として渇望することができる最たるおいしさの一片」と呼んだ。
 他の人々は、「普通のポットロースト<(=なべで蒸し焼きにした牛肉などの・・料理
http://ejje.weblio.jp/content/pot+roast (太田)
)とさして違わないが、より濃厚だ」と述べた。

→1世紀経ってないというのにエライ変わりようだ。(太田)

 栄養的には、鯨肉はごたまぜだった。
 尾と腹の肉は、豚や牛の大抵の部位よりも、どちらも脂肪分とカロリーが少なくタンパク質が多い。(もっとも鳥の胸肉と肴はこの三つのカテゴリーすべてでほ乳類を上回っている。)
 鯨はオメガ3<脂肪酸(=不飽和脂肪酸の一種)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%CE%A9-3%E8%84%82%E8%82%AA%E9%85%B8 (太田)
>包含量において、魚に匹敵する。
 しかしながら、諸研究は、鯨肉が危険なほど高いレベルの水銀とPCBを含んでいることを示してきた。・・・」

→めずらしく日本に好意的な記事だと思って読んできたら、最後で落とされました。(太田)

http://www.slate.com/id/2247583/

3 イルカ漁

 「・・・イルカ肉は、高濃度の水銀を含んでいるが、ちょっと食べるくらいなら害にはならない。
 ただし、継続的に食べると諸問題を引き起こしかねない。・・・

→要するに問題ないってことね。(太田)

 数千年にわたって、船乗りや沿岸住民は、ほとんどどこでも、イルカが美しく人を元気づけると認めてきた。
 そして、その高い知力とあいまって、この理由により、人間のイルカとの関係は特別な者であり続けた。

→日本は例外に属するようですね。(太田)

 しかしながら、私は自分の諸価値を他の人々に押しつけることには賛成できない。
 私は魚をつかまえて食べることが好きだが、人々の中には、当然のことながら、それが非道徳的であると思う人もいる。
 イルカを食べることは不必要だが、我々はみんな、野球をすることから日曜日にハンバーガーを食べるためにドライブに行くことまで、不必要なことをたくさんやることが好きだ。
 そして、確かに米国人は、莫大な数の牛・・イルカ同様、温血のほ乳類で子供に乳を飲ませる・・を殺して食べる。
 しかし、恐らくは人間の進歩の普遍的太鼓判は、苦痛をかけることを最小限にしたいという願望だろう。
 我々は、動物が食料として屠殺する場合はどうすべきかについて厳格な規則を持っているが、その多くが彼等の苦痛を減ずることに関するものだ。・・・
 だから、私は、イルカ殺害への国際的非難は十分公正なものであると考える。
 それが残虐な行為であるという事実を否定することはできない。・・・」

→じゃ、牛を屠殺するのと同程度に「人道的」な方法なら鯨やイルカを殺して食ってもいいのね。(太田)

http://dotearth.blogs.nytimes.com/2010/03/11/arguments-against-dolphin-slaughter/?hpw

 このコラムへの投稿のいくつかからの抜粋は以下のとおりです。

カナダから:
 『コーヴ』制作の黒幕達と彼等のシンパは文化的帝国主義の最悪の形態だ。
 他の諸文化の人々がどんな動物達を食べるかを誰が決めるというのだ。
  平均的な畜殺場で撮られる映像が、より血腥くないとキミ達は本当に信じているのか。

→どうやら、牛の屠殺も、それほど自慢できるほど「人道的」じゃなさそうだね。(太田)

 もしインディアンの何人かが平均的北米人にここで行われている牛の身の毛のよだつ殺戮について講釈を垂れたら彼等はどう感じるだろうか。
 環境保全論者達は経済力の枢軸が移動したことでうろたえつつある。
 彼等は、東の世界の人々がハリウッドの著名人達のような連中から道徳性について講釈を垂れられることにどんどん耐えられなくなりつつあるのだ。・・・

→せっかく感心して読んできたが、欧米と一括りにするのはいかがなものかと私が指摘してるように、日本や中共やインド等を「東」って一括りにして欲しくないなあ。(太田)

テキサスから:
 鯨とイルカの殺害と喫食は、いかなるまともな理由に照らしても絶対に正当化できない。
 我々はこれらの動物を食べる必要性はないし、これらを人道的に殺す方法もない。
 日本人は動物を殺すことができるかもしれないが、我々は、トヨタ車からヌードルまで、日本製品を買わないことができる。・・・

→いよ!待ったました。真正人種主義的帝国主義者登場。(太田)

ニューヨーク市から:
 私は、日本に捕鯨を止めさせる試みの多くは逆効果であり、結局はより多くの殺害をもたらすと思うことが多い。
 日本人は外部の人間からああしろこうしろと言われることを、米国人同様好まない。
 (もし誰かが君に牛を食べるのは非道徳的であると言い、虐め、更には君に恥をかかせるとして、君はハンバーガーを食べるのを止めるだろうか。
 普通は止めないだろう。言い訳をするかこっそりと食べるかだろう。
 情報開示しておくが、私自身はいかなる肉も食べない。)
 しかも、多くの戦術は日本人を侮辱する傾向があった。
 反捕鯨、反イルカ狩りの推進者達は、相手に敬意を払った、文化に気を遣った説得を行う方がよりうまくいくだろう。
 敬意を払った対話は、捕鯨船攻撃のような、劇的なメディア向けの事件を起こす場合のようなエゴ充足感は与えないだろうが、それはより成功するチャンスがある。
 私はまだ『コーヴ』を見ていないが、より大きな図柄的なものに通じている人々から高い評価を得ているとは聞いたことがない。

→ヒアヒア!(太田)

 確かに、私は世界的に捕鯨が終わったらいいなと思っている。

→ガクッ!(太田)

 だけど、それが正当にして持続可能で現実的であるためには、個々の社会がそれぞれ自分で決めたものでなければならず、非効果的な辱めと虐めによるものであってはならない。
 反捕鯨推進者への推薦図書は、ルース・ベネディクトの『菊と刀』だ。
 これは完全な本というわけではないが、最初に読む本としては好適だ。

→更に落ち込むなあ。こんな本読まない方がいいぜ。(太田)

在米日本人:
 私は、<米国人の>偽善、傲慢さ、そして<今までの投稿にあった>文化帝国主義によって邪魔をされたため、この映画の水銀汚染と腐敗したシステムなる主張に含まれる一抹の真実を直視することが困難だった。・・・

→とにかく、発言をしたことに敬意を表するよ。(太田)

2 終わりに

 結構、バランスのとれた議論が米国でなされている、と思いませんか?

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