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太田述正コラム#3880(2010.3.11)
<中共の今>(2010.4.15公開)

1 始めに

 最近、中共の不動産バブル崩壊を懸念する声がディスカッション上であがった(コラム#3877)こともあり、しばらく、中共をとりあげたコラムを書いていないので、書くことにしました。

2 戸籍制度改革?

 「・・・農村問題専門家である、北京の開発研究中心(Development Research Centre)の・・・ハン・ジュン(Han Jun)・・・は、2040年には、中共の農村人口は5億人減少してわずか4億人になると算定している。
 この仮定によると、中共の都市住民は10億人を大幅に超え、都市人口の割合は45%から70%前後に急上昇することになる。・・・
 <別の推計によると、>2025年には、平均人口がそれぞれ2,500万人の15の超都市が中共に存在するだろうという。
 <ちなみに、>中共には既に100万人を超える人口の都市が約170ある。
 米国には9つ、英国には2つ<しかない>。・・・
 温家宝首相は、インターネットのチャット・フォーラムで、・・・<農村人口の都市流入を禁止している>戸口(hukou=戸籍)制度が改革されなければならないと語った。
 更に異例なことには、13の新聞が、ほとんど革命的言辞で、この制度を(極めて正確にも)違憲であり、中共の人々に「見えない足枷」をかけているこき下ろす、不満たらたらの共同社説を掲げた。
 それは、「時代に不適合な悪い諸政策は人々を怒らせている」と咆えた。
 この社説はやり過ぎであったようだ。
 この記事は、共産党の情宣部を怒らせた。
 この社説は、それ以来、殆どのウエブサイトから消え、執筆者達はその上級編集者たる地位を失った。・・・」
http://www.ft.com/cms/s/0/c6ed2e24-2c78-11df-be45-00144feabdc0.html

→中共は、一人っ子政策といい、戸口制度の維持といい、個人の子供をつくる自由も居住の自由も認めない全体主義国家である、という認識を常に忘れないようにしましょう。(太田)

3 当局の侍女としての司法

 「・・・<中共の>司法過程は、依然として共産党の利益に従属させられている。
 中共刑法306条は他人の偽証の幇助または教唆を処罰するものとしているが、通常の偽証諸法の域を超えており、弁護士の妨害をするために用いられてきた。
 中共での大部分の刑事裁判ではそうなるのだが、被疑者が有罪とされた場合、弁護士は、顧客のために提出した証拠の責任をとらせられることがあるのだ。・・・」
http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,1969642,00.html

→本日のディスカッションに載せた記事の抄録にちょっと付け加えました。中共の裁判は、少なくとも刑事裁判に関しては、単なる政治ショーであると考えた方がよさそうです。(太田)

4 不動産バブル崩壊へ?

 「中共の不動産バブルに対する懸念高まる・・・」
http://www.ft.com/cms/s/0/a4315ad2-2c59-11df-9187-00144feabdc0.html

 「中共経済に対する全球的感情は、数ヶ月前の浮かれ騒ぎ(exuberance=豊饒)から数ヶ月語には昨年の瞠目すべき信用(credit)増大の副作用に対する深刻な懸念へと変わった。・・・
 <しかし、>中共の家計債務はGDPの約17%であるのに対し、米国では約96%だしユーロ圏では約62%だ。・・・
 多くの観察者達は、中共経済が速く成長しすぎてきたことを心配しており、システム全体の崩壊が差し迫っていることの証拠としていくつかの分野における過剰(overcapacity)の存在を指摘する。
 しかし、経済のいくつかの分野についてのより注意深い監視が必要であるものの、危機が差し迫っているとの懸念を抱いている者達を裏付けるものは殆どない。」
http://www.ft.com/cms/s/0/accf1814-2c54-11df-9187-00144feabdc0.html

→ファイナンシャルタイムスがこのようなコラムを載せたのですから、議論は終わりです。中共経済は見通しうる将来にかけて高度成長を続ける、と認識すべきでしょう。(太田)

5 終わりに

 中共は以上のような怪物であり、こんな国と隣人としてつきあっていくには、よほどこの国についての研究に努力を傾注する必要があります。
 そもそも、日本には米国をもっぱら対象とする研究所もないのではないかと思いますが、中共をもっぱら対象とする研究所も聞いたことがありません。
 このことは、もっと問題ではないでしょうか。
 まあ、その前に、そもそも諜報機関をつくらなくちゃいけませんが・・。

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