太田述正コラム#3911(2010.3.27)
<皆さんとディスカッション(続x785)>

<kt2>

 結論を言うと、この表
http://spreadsheets.google.com/ccc?key=tsI9mtBAHd84DHdNQhO17Pg
から医療のパーフォーマンスなんて判断できない。

 10ヶ国の内、ロシアと中国を除外し、残りの8ヶ国を比較しよう。
 ここで、ロシアは寿命が短いから除外する。
 人口の年齢構成が異なると粗死亡率を比較してもあまり意味が無いからだ。
 中国は寿命からは除外すべきか否か微妙だが、統計データがおそらく信頼性が低いと思われるから除外する。

(1)医療レベル、医療制度は国によってまちまちだが、どの国の寿命も80歳前後である。したがって、これらの国においては(感染症対策がある程度できている国においては)、寿命は医療レベルにも医療制度にも依らないことが分かる。

 先進国の平均寿命は生活習慣病(心疾患、脳血管障害、癌)によってほとんど決まるものであって、医療制度の良否は一要因に過ぎないことは理解すべきだ。
 癌を除いて、突然死につながる疾患だからだ。

 幹部官僚と呼ばれる素人がオソマツ厚生行政を担っているにもかかわらず、わが国の平均寿命が世界一であるのは、幸運(食習慣)以外の何物でもない。
 欧米並の医療水準、公衆衛生水準になれば、ダントツの長寿国になるポテンシャルを秘めている。

 なお、欧米の標準治療を実施すれば助かる生命がわが国には多数あることを肝に銘ずるべきだ。
 特に、死因トップの癌については、わが国では門外漢の外科医が化学療法を行っているという恐ろしい実態がある。

 癌死亡率が心血管障害死亡率より高いのは日仏のみだ。
 医療中進国のわが国は当然としても、医療先進国のフランスがどうしてそうなっているのかな?

(2)この表で一番特徴的なことは、わが国の病床数の突出した多さだ。

≫そもそも日本の病床数が多いこと、その原因が何で、それがいかなる問題を引き起こしているかは広く知られている事実だよ。 しかし、そのような「ムダ」がありつつも、≪

 「広く知られている」か否かは別にして、「広く知られている」ようなことを再確認する必要はないのだから、「ヒント」に沿って答えて欲しかったな。
 「太田さんがおそらく関心のあるビョーキ」は精神障害の分野だと思っていたが、違うのかしら?(以前、知人だか友人だかの精神障害について知りたがっていたような)

とにかく、ここで当方が問題にしたかったことは、単なる「ムダ」ではなく、精神病床の突出した多さだ。「ムダ」よりもずっとひどい、医療の名を借りた金儲けのための人権侵害が行われていることだ。
 統合失調症(いわゆる精神分裂病)の有病率は1〜2%だが、わが国の精神病床数は全病床数の約四分の一も占めている。表から1万人当たり35床(=140÷4)だから、精神病床だけで米加の全病床数より多く、英伊の全病床数にほぼ匹敵する。いかに多いかが分かる。約40万人の患者(=35床÷1万人×1.2億人)を長期間座敷牢に閉じ込めるような、ひどい人権侵害が行われているのだ。このような国はわが国以外には無い。少ない(儲からない)介護病床を減らし、極めて過剰な(儲かる)精神病床を維持する。ボンクラ利権厚生官僚たちのなせる技だ。

 わが国の医療はどれもひどい状態だが、とりわけひどいのが精神医療だ。
 心療内科を標榜するクリニックが五万とあるが、ほとんどすべてニセモノだ。
 そもそも心療内科講座を持つ医学部は九大、東大など数校しかない。
 癌医療において門外漢の外科医が化学療法を行っているが、それよりもはるかにひどいことが、医療崩壊の結果、精神医療において行われている。
 すなわち、勤務医崩れの30、40代の門外漢の外科医が精神障害の診断と薬物療法を行っているのだ。
 心療内科クリニックはマンション一室を借りるだけで何の医療機器も備えずにお手軽開業でき、需要も多いからだ。
 うつ病の心配がある人は恥ずかしくても精神科を受診すべきだ。
 精神科の専門教育を受けていない医師が精神科を標榜することはまれだからだ。

(3)表に基づいて、一人の医師、看護師が受け持つ入院患者数を概算できる。諸外国ではそれぞれ、0.8人〜2.4人、0.3〜1.0人。これに対し、わが国ではそれぞれ、6.6人、1.5人だ。病院勤務は2交替(あるいは3交替)になるから、まとめると以下の通りだ。

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  一人の医師が受け持つ入院患者数 一人の看護師が受け持つ入院患者数
--------------------------------------------------------------------
諸外国 1.6(米国)〜4.8(独) 0.6(米国)〜2(独)
わが国 13.23
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 実数は正しくないが、大雑把な比較はできるだろう。
 わが国がいかに貧しい医療であるかが分かると同時に、勤務医と病院看護師にいかに過大な負担がかかっているかが分かる。
 これでは個人的能力が高かったとしても必然的にオソマツ医療になってしまう。

(4)医療評価上、もっとも大切な指標は透明性(情報開示)だが、表には掲載されていない。
 透明性がある程度確保されているのは北欧諸国のみだ(オランダがトップだったと記憶している)。
 G7の中で、とりわけわが国はひどい。
 上記の通り、標榜科目さえ嘘っぱちだ。

 いずれにしても、表に基づいて、医療のパフォーマンスを結論できるわけがない。
 太田さんは以前、東京新聞の記事を見て「常識みたいね」などとコメントしていたが、都合の良い記事を見つけるとダボハゼのように食いつき、中身を吟味せずに自分の考えの補強のために利用する、いわゆるつまみ食い行為はあまりにも非科学的だ。

≫すべてに、典拠をつけるのはもちろんだぜ。≪

 上記は看護師のように少しでも医療を学んだことがある人なら誰でも知っている事柄だ。
 医療に関心のある人ならネットを検索すればすぐ分かる事柄だから、リファレンスは省略した(というか、大部分は一昔前の記憶だ)。

 なお、軍事板(安全保障板)に医療について投稿した理由は、北朝鮮や中国による軍事侵略やテロによって将来失われるかもしれない国民の生命よりも、オソマツ医療やオソマツ自殺対策によって現実に失われている多くの生命の方を心配しているからであり、自衛隊に支出する金があったら医療改革に回す方がよっぽど国民のためになると思うからだ。

≫前にも将来については懸念があると言ったと思うが、現状に関し、諸外国に比べてパーフォーマンスが高い、とは言えるんじゃないの。≪

 医療について現状で良しと思うなら、上記の発想は出てこない。
 仮に現状で悪しと思っても、軍事利権にまみれていたら同じだ。

<太田>

 結局、コラム#3564でのやりとりで、あなたが言ってたことを水増ししただけのすり切れレコード投稿だね。
 しかも、典拠が依然ついていない。
 どうせ、別サイトへの自分の投稿をコピペしたんだろ。
 心底がっかりしたよ。
 これを、いわゆる「荒らし」って言うのかな。

 ま、この際、「軍事」と並ぶ論点について、同コラムで私が書いたことをもう一度再録しておこう。

≫日本の公務員数、就中国家公務員数の対人口比が先進諸国中有数の低さ(典拠省略)なのは、エージェンシー関係の重層構造を特徴とする日本型経済体制の下、日本在住者たる潜在的・顕在的患者に至るまで、行政の一端を担っているからだ。
 ですから、国家公務員、とりわけ幹部国家公務員が無能であったり退廃していたとしても、中間に介在するエージェントや末端のエージェントたる日本在住の一人一人の住民がこの無能さをカバーできる程度に有能であれば、当該行政はおおむね効果的・効率的に営まれる、ということもありうる。
 医療/保健行政の分野はその典型的な例なのではないか、と私は申し上げているワケ。
 (だからと言って、今後とも日本の医療/保健行政が効果的・効率的に営まれるかどうかは別問題。私自身も、大変懸念を抱いているところだ。)≪(コラム#3564。太田)

 なお、病床数の多さについてだが、私が「広く知られている」と言ったのは、「日本の国民千人あたりの病床数はOECDの中で多いほうであり、総病床数にいたっては世界第一位だ。そして平均在院日数は圧倒的に長い。」「日本は、手術を受けた人は抜糸するまで入院し、ものが食べられるようになってから、また歩けるようになってから家庭に返すというやり方」「これは医療費の無駄ともいえる・・・」
http://web.hc.keio.ac.jp/~fk052565/seminar/05index.html
http://www.iryoseido.com/toukou/01_001.html
といったことだよ。
 しかし、今回、あたってみたら、ちょっとは医療事情を知っている私のような日本人に「広く知られている」このような認識は、必ずしも正しくないことが分かった。

 「急性期と慢性期をあわせた病床数は日本9.8、アメリカ9.9となり格差は存在しない。」
http://www.iryoseido.com/toukou/01_001.html 上掲

 あなたが単純な数字での比較は意味がないと言うのなら、こういうことこそ指摘して欲しかったね。
 最後に、あなた、前回も軍事に言及してたし、唐突に軍事版への投稿の話を今回持ち出してるが、それこそ全く軍事に無知なあなた、そんな恥ずかしいことは、これからは止めることだね。

<IM>

 --f★ck your mother と u<eyama> に教えてやりたかったのに--

 止めて下さい、止めて下さい。”と、<一>昨日はどれ程想い苦しかったか・・・。
 文面まで想い起こして連絡さしあげようと思ったのに、自分の能力のなさにできませんでした。
  それでも先生のことだから、<昨>日の"皆さんと、DISCUSSION"はないだろうと早とちりで思っていました。
 敗北的な私は、仕事が終わった後、”先生、遅くなってすみません。”と念じつつ、開けました。
 私と先生の違いが明確に映し出されているではありませんか。
 現在の危機とは、もっとも身近にあることに、もう一度きずかせて頂きました。
 今日、先生の大きさが、その方法論、処し方によって一層私に理解させてくれました。 読むほどに、もっと、もっとと せがみます

<太田>

 気持ちがほとばしってて文脈を追うのが困難な投稿ですが、ここに載せたのは、あなたが、最後の「読むほどに、もっと、もっとと せがみます」という、普通第三人称が受ける文章を実質第一人称に受けさせているからです。
 前に、ある女性が、全く同じ文章でコラムの有料購読を申し込んできたことがあります。
 ふざけたことに、名前、クレジットカード番号、カード期限を伝えてきて、私にクレジットカードによる購読の代理手続きをしろとおっしゃる。
 結局お断りしました。
 その時から、この文章の気の利いた使い方が妙に気になっていました。
 あなたは、どこからこのような使い方のヒントを得たのですか?

<ρρββ>(「たった一人の反乱」より) 

 <Ueyama>さんへ

 私はあなたを知らないし、太田さんのことも知っているとは言えませんし、一連のやり取りの中でどちらに非があると判断出来るだけの脳みそもありませんが、そもそものあなたの「憤り」は、あなたの「善意」を太田さんが無下にした(とあなたが感じた)ことによるものと理解しています。
 違いますか?

 「善意」を無下にされれば、それは不快なことでしょう。
 ただ私が見るに、太田さんがあなたに対して「カウンセラー」と称し、ディスカッションで取り上げているのも、それも「善意」であるように見えるのです。
 あなたの目には、一連のディスカッション(太田さん曰く「カウンセリング」)で、太田さんが楽しんでいる様子が映るのでしょうか。
 人を貶して喜ぶ太田さんの姿が映っているのでしょうか。

 「革命」などというキチガイじみたことを大マジでやっている太田さんです。
 大マジの「善意」であなたのことをディスカッションで取り上げているという可能性は、相手がキチガイであるだけに、十分に考慮する余地があると思います。

 「善意」を無下にされたことに憤りを感じたあなたが、太田さんの「善意」について考えることは、有意義なことではないでしょうか。 ・・・

<太田>

 二重花まる。

 選挙が終わってから、「善意」で私に再就職を世話しようとする人が何人も出てきた。
 ある時、防衛庁(当時)の仕事も手がけている業者に私を世話しようとした人(私の選挙を支援していた人)がいて、私が懸念してたら、案の定、その業者が、防衛庁の官房長から自分のところに「よろしく」という電話をかけてもらって欲しいと言っているという。
 この話を謝絶する際、間に入ったこの人ともう一人の人が、今にも怒り出しそうでひやひやものだった。
 もう一つ、近親者の公認会計士たる知人(私とは初対面)が、自分のクライアントに私を再就職させ(押しつけ)ようとし、私が「相手のニーズと私のニーズが合えば、喜んでお受けします」と本人の前で答えたら、突然形相が変わって私を「非常識だ、失礼だ」罵倒し始めたため、這々の体で彼のオフィスから退散したことがある。
 この人物、その後、(別件だが、)詐欺だったか横領だったかで逮捕されたがね。
 (これなんか、私の鏡/触媒作用が瞬時に働いたいい例だな。)

 私が金銭欲・物欲が希薄で、とりわけ権力関係がからんだ癒着によってカネを得ることを私がどれほど嫌っているかを理解することは、私を結構知っている(つもりになっている)人にとっても容易ではない、ということ。

 閑話休題。

 だからこそ、私は、他人に対して善意で何かする時は、それが「善意」になっていないか、細心の注意を払うよう心がけているつもりだ。
 ま、それでも、善意で大マジメに「独立」を推奨する私を現在の平均的日本人が胡散くさく思うように、善意で大マジメに他人にカウンセリングする私に反発する人間がいても何らフシギじゃないってことさ。
 
<ρβρβ>(同上)

 今回のディスカッションの太田解説はややこしすぎて細かいところがよくわからなかったけど、「おおやけのネット上で特定の個人の悪口を書くのはたいがいにしとけ」と2ちゃんねらーに警告してるんじゃないかって気はした。

<太田>

 一重花まる。
 そういう気がしない人、少ないだろうから。

 それでは、記事の紹介です。

 世界全体が、これから人口減時代を迎える。
 結局、その中で人口を維持、増加させられる国だけに未来があるってこと。↓

 ・・・thanks to increased access to contraception and improving education for women, actual birth rates have been dropping around the world. In the 1950s, it was between five and six; by 2008 it was 2.6. At the current rate, the world's fertility rate will be below replacement level soon after 2020. "Future historians are likely to record two great social trends in the last half of the 20th century," writes Pearce. "The dramatic decline in fertility and the transformation of the role of women in society. These two events are clearly linked."・・・
http://www.guardian.co.uk/books/2010/mar/27/peoplequake-population-fred-pearce-review

 すべてホントだったとしても、少しも驚かないが・・。↓

 ・・・The "ugliest custom" in Babylon, the historian Herodotus wrote (who is believed to have lived between circa 490 to 425 B.C.), was the widespread practice of prostitution in the Temple of Ishtar. Once in their lifetimes, all women in the country were required to sit in the temple and "expose themselves to a stranger" in return for money.
 "Rich and haughty" women, the ancient Greek historian railed, arrived in "covered chariots."
 The Persians on the Black Sea were apparently involved in similarly nefarious activities. According to the Greek geographer Strabo, "virgin daughters," hardly 12 years old, were dedicated to cult prostitution. "They treat their lovers with such friendliness that they even entertain them."・・・
 The Jews were also involved in such practices. There are about a dozen passages in the Old Testament that revolve around "Qadeshes," a word for female and male cult practitioners. The Bible calls them "lemans" and "catamites."・・・
http://www.spiegel.de/international/zeitgeist/0,1518,625172,00.html
 なお、上記関連のフレスコ画を見ることができるよ。↓
http://www.spiegel.de/international/zeitgeist/0,1518,685716,00.html

 ウーム、米国にも姦通罪に相当するような代物が残っていたとは。↓

 If you're going to have an affair, don't do it in North Carolina. For that matter, don't mess around in Hawaii, Illinois, Mississippi, New Mexico, South Dakota or Utah either. These states have laws on their books that date back to the time when wives were considered property -- and woe unto he or she who steals chattel so dear. ・・・
 Alienation of affection is a relic of British common law, originally applying only to wives but now covering spouses of either sex, that most states disposed of long ago. ・・・
http://www.latimes.com/news/opinion/editorials/la-ed-marriage26-2010mar26,0,731392.story
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 一人題名のない音楽会の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(There will be blood)』特集の第二弾です。

 ブラームスのバイオリン協奏曲第3楽章(Brahms Violin Concerto 3rd movemnet) 

 まずは、この映画のエンディングに流れたAnne-Sophie Mutter演奏から。
http://www.youtube.com/watch?v=BSjgGLK8_fs

 これは、レコーディングなので、ちょっとヨコに置いておいて、後、随分色んな奏者の生演奏を聴き、少しでもできが悪いと思うのをオミットして行ったのですが、最後にこれだけたくさんの奏者(順不同)によるものが残り、しかも、その間の優劣をつけるのを諦めました。
 誰の演奏でも結構です。
 自由にお聴きください。
 もちろん、第3楽章だけではなく、全曲をお聴きになる時間があれば、ぜひどうぞ。

Gidon Kremer
http://www.youtube.com/watch?v=w0e4I9_QFkE
Itzhak Perlman
http://www.youtube.com/watch#!v=J3WKF9n06eY&feature=related
David Oistrakh
http://www.youtube.com/watch#!v=yFW5-TKt9SI&feature=related
http://www.youtube.com/watch#!v=rg33gGhpKYY&feature=related
Yehudi Menuhin
http://www.youtube.com/watch#!v=Ifu37eKpY5g&feature=related
Heifetz
http://www.youtube.com/watch#!v=nQK2dp3sN8E&feature=related

 最後に、もう皆さんお馴染みですが、可愛い庄司沙也加の演奏です。
 小柄で非力なので、力一杯弾かざるをえない姿がとっても感動を呼びますが、体力が衰えるとともにこのような弾き方はできなくなるでしょう。
 そのようなはかなさの予感が、一層興趣を添えています。
http://www.youtube.com/watch#!v=NfUMLIVolm4&feature=related 7:48〜
http://www.youtube.com/watch#!v=Y4NLe_OPy4s&feature=related

(完)
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太田述正コラム#3912(2010.3.27)
<米国の明るい未来(その2)>

→非公開