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太田述正コラム#3769(2010.1.15)
<皆さんとディスカッション(続x714)>

<赤いハンカチ>

≫それまでほとんど停船状態に近かったAGが、第二昭南丸接近と同時にエンジンを吹かして第二昭南丸のバウ下に滑り込んでいる。つまり、衝突はほぼ停船状態からのAGの前進・加速により起きている。これはAGの後ろに白い航跡を引いている影像から明確に分る。意図的か単なるバカか、その両方か、でなければそんな操船はしない。≪(コラム#3767。近藤)

 それは近藤さん、「アディ・ギル号」としてはまさか「第2昭南丸」が突っ込んでくるとは思っていなかったからでしょうね。
 で焦った「アディ・ギル号」がパニッくったか回避のためだかは分かりませんがアクセルを踏んだと、そいうことだと思います。
 なにしろ712トンの「第2昭南丸」が18トンの「アディ・ギル号」に、衝突直前に舳先を右旋回させて放水しながら突進してきたわけですからそりゃまあビックリするでしょうね。
 (「一直線で「第2昭南丸」は「アディ・ギル号」に向かっております」は訂正します、「衝突直前に舳先を右旋回」に。)

 いですか近藤さん、「アディ・ギル号」はですね、たとえ敵対する者同士であっても人として超えてはいけない一線は超えないだろう、そういった暗黙の了解を信じていたのでしょうね。
 なにしろ712トンが18トンに衝突するってことは18トン乗組員の死の可能性を意味しているわけですから。
 いわゆる“未必の故意”っていうやつです。

 ちなみにワトソンは「第2昭南丸」船長をニュージーランドの司法当局に殺人未遂容疑で刑事告訴しました。
http://tsushima.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1263347968/

 なお「アディ・ギル号」乗組員の証言を貼っておきますね。

 AG号オランダ人乗員の話
http://www.news.com.au/couriermail/story/0,1,26560747-952,00.html
 あれは私の人生の中で最も恐ろしい瞬間でした。 
 見上げると千トンもの船の船首がのしかかり私を二つ裂きしようとしていたのです。 
 その時私は死を直視していたのです。
 私は船の屋根の上に居ました。 これなら衝突の瞬間に海に飛び込めると思っていました。
 然し私は後ろのデッキに転がり落ちました。 
 彼等はぶっつけた後もなお放水を浴びせかけてきました。
 あの時AG号は僚船ボブ・バーカーとそれを追いかけていた捕鯨船をやり過ごすことに決め漂流していました。

 私はSM2がそのまま行き過ぎるとばかり思っていたのですが、そうではなく音響装置と放水銃を起動させてきました。 
 そこで考えたのは我々が漂っているのを良いことに、横を通りすがりにそれらを浴びせかけるのかと言うことでした。
 ところが全く突然にSM2は我々に向きを変えT型にぶっつかりわれわれを二つ裂きにしたのです。
 船長は直ちに救難信号を発しました。 
 僚船ボブ・バーカーは速やかに救命ボートを発進させ我々を収容してくれました。.
 我々があの船の針路に入ったなんてとんでもないことです。 
 18トンのカーボンの船に乗って1000トンの船の前に生命を差し出す筈がありません。
 ビデオを見ても我々が漂流していたのは明白です。 
 我々は船を操縦していませんでした。
 捕鯨船を攻撃しても居ませんでした。 
 ビデオにも僚船に手を振っている姿が写っています。
 私はあの船長が通りがかりに我々を攻撃しようとして、その際に完全な計算違いを犯し我々にのしかかったのだと思います。
 ごく技術的な立場から言っても我々に通行優先権が有りました。
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?action=m&board=1834578&tid=a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa&sid=1834578&mid=40679

 つまり人として超えてはいけない一線を超えたのは、暗黙の了解を破った下衆野郎は、自明ってことです。↓

 「アディ・ギル号」(18トン)からの映像[3:20]
http://www.youtube.com/watch?v=tBdp0zJiQdE
 ほとんど漂流状態にあった「アディ・ギル号」(小船)に襲いかかる「第2昭南丸」(護衛船)

 「ボブ・バーカー号」からの映像[0:41]
http://www.youtube.com/watch?v=SRF05e_r3UQ&feature=related
 シーシェパード側が公表したビデオを見ると、第2昭南丸は衝突前、まるでアディ・ギル号に狙いを定めるように舳先を右旋回させて突進し、ギリギリのところで左に舵を切っている。
http://onuma.cocolog-nifty.com/blog1/2010/01/post-a885.html

 「第2昭南丸」(712トン)からの映像[0:44]
http://www.youtube.com/watch?v=GNIwEybM-zc

<けいc。>

 しかしシー・シェパードの航法を擁護するような議論をする人がいるのも興味深いですね・・・。
 この動物愛護団体はFBIから新しい脅威“環境テロリスト”と認識されているし、2008年にカナダ沿岸のアシカ漁にファーリー・モウワット(資金援助したカナダ人の活動家の名前)号で抗議した際に、カナダ政府の沿岸警備隊の船に2回体当たりして、カナダ政府に船ごと拘束されています。
 この時もSSの言い分は毎度のように、カナダ船が意図的に体当たりした・・・です。
http://www.fbi.gov/congress/congress02/jarboe021202.htm
http://www.cbc.ca/canada/story/2008/04/13/seal-arrests.html
 日本の水産庁も人がいいというか、間抜けというか、こういうプロパガンダ作戦にはプロパガンダ作戦で対処して、国連の担当者を乗せたり、イギリス人の海事弁護士を乗せおいて、事件後にすぐ沿岸国へ提訴したり、ドライスーツを着させた海保のSAR隊員を乗せておいて、抗議船がぶつかると同時に隊員がわざとらしく海に落ちて、捕鯨船がSOSを出す模様を世界に流したりしないと権利を侵害されたままで終わりですね。
 対抗手段(counter measure)という言葉は日本の政治家や役人の頭に浮かばないのでしょうか?それとも実験的捕鯨の権利を半分諦めているのか?

 現在のSSの最大のパトロンは、アメリカの有名なテレビ番組司会者のBob Barker(1/8スー族の血が混じっている)。
 日本で言ったら、みのもんたがこのまま20年司会業を続けたような人。
 みのもんたの午前中のワイドショーでの発言も刹那的ですが、ボブ・バーカーも負けず劣らずポピュラリズムの権化みたいな人です。
http://www.csmonitor.com/World/Global-News/2010/0107/How-Bob-Barker-joined-Sea-Shepherd-Paul-Watson-and-the-whale-wars/(page)/2

<太田>

 体当たりの話は、お示しの典拠(cbc)にゃ出てきませんね。relevantな典拠を付けなくっちゃ。
 それはともかく、本件のディスカッションもほぼ収束しつつある感があります。
 一方的にSS(イニシャルにするとナチみたいだな?!)に肩入れし、自分の言いたいことだけを執拗に繰り返す「赤いハンカチ」クンのこと、他人事ながら心配だけどね。
 キミ、素性等を明らかにする気があるなら、相談に乗るぜ。

 記事の紹介です。

 小沢不祥事の報道、過熱してるわりには、新たな事実がちーとも出てこないね。

 こんな『アバター』評をしてるようじゃ、米国の保守派や英国の「高級」大衆紙のレベルが知れるってもんだね。↓

 Avatar has been greeted on the right with the kind of immediate snarling antagonism reserved for Oliver Stone pics. ・・・
 Writing in the London Daily Telegraph, Nile Gardner professed himself astonished by "the roars of approval which greeted the on-screen killing of US military personnel." They "were a shock to the system, especially at a time when the United States is engaged in a major war in Afghanistan. ..." He concludes that Avatar is "one of the most left-wing films in the history of modern American cinema, and perhaps the most commercially successful political movie of our time." ・・・
http://www.slate.com/id/2241542/pagenum/all/#p2

 ハイチを襲った大地震。
 またまた、米国の人種主義的帝国主義の悪行が問われています。↓

 ・・・Haitians have been punished ever since for claiming their freedom: by the French who, in the 1820s, demanded and received payment from the Haitians for the slave colony, impoverishing the country for years to come; by an often brutal American occupation from 1915 to 1934; by indigenous misrule that the American government aided and abetted. (In more recent years American administrations fell into a pattern of promoting and then undermining Haitian constitutional democracy.)・・・
http://www.nytimes.com/2010/01/14/opinion/14kidder.html?ref=opinion&pagewanted=print

 もちろん、ハイチの惨状はそれだけが原因ではありません。
 地理的/歴史的原因も大きい(コラム#279、280)。
  'Jared DiamondCollapse: How Societies Choose to Fail or Succeed, 2005’からの抜粋要約が転載されてます。
 それにしても、この記事が掲げる写真・・ドミニカとの国境地帯・・は衝撃的。↓
http://www.guardian.co.uk/world/2010/jan/15/forces-working-against-haiti

 グーグルが中共当局に叩き付けた挑戦状。マイクロソフトやアップル(、そしてヤフー)の鼎の軽重が問われています。↓

 ・・・Microsoft, whose Bing search engine has entered the Chinese market, has shown no public inclination to change its business here. Apple’s iTunes service still forbids Chinese users from downloading certain applications that refer to the Dalai Lama and the Uighur activist Rebiya Kadeer. ・・・
http://www.nytimes.com/2010/01/15/world/asia/15china.html?hp=&pagewanted=print

 北アイルランド自治政府の首相の奥さんの不倫、詳細が分かれば分かるほどその異常性にびっくらこきます。
 そもそも自殺未遂を犯したとされていますが、案の定というか、鬱病だという話が出てきました。
 大体からして異常性などなくったって、公的立場にある人の妻(しかも、本人も公的立場にある)が不倫などしちゃいけません。
 かろうじて成り立っていた北アイルランド和平そのものをこの不祥事が揺り動かしつつあります。↓

 ・・・Mrs. Robinson was 59 when she started sleeping with a 19-year-old. ・・・
 ・・・she described the seven-month relationship as "a brief affair" that "had no emotional or lasting meaning."・・・
 ・・・There is the hypocrisy bonus: Mrs. Robinson, an evangelical Christian memorably described as "fire and brimstone in a Laura Ashley package," liked to pronounce on the government's "responsibility to uphold God's laws" and described homosexuality as "an abomination" comparable to -- get this -- pedophilia. Her husband seconded that assessment. "It wasn't Iris Robinson who determined that homosexuality was an abomination, it was the Almighty," Peter Robinson said.
Of course, the Almighty had something to say about adultery, which even got its own commandment. Given her new emphasis on Christian forgiveness, Iris Robinson might rethink her smug dismissal of Hillary Clinton: "No woman would put up with what she tolerated from her husband when he was president." What's that you say, Mrs. Robinson?
 And there is the sordid financial angle: Iris Robinson reportedly funneled cash from two local developers to McCambley to open a cafe in a project being built by the local government -- and, as a local official, backed his application. The money went unreported on financial disclosure forms, and she asked for it back when the affair ended. "It seems cruel but I am not going to soften until he has paid back the [45,000 pounds] and he has got until Christmas," she texted political adviser Selwyn Black. ・・・
 ・・・ as the affair came to light and she attempted suicide・・・
 ・・・Robinson invoked her depression -- "psychiatrists may suggest that my mental illness was a significant factor explaining my irrational behavior" -- even as she claimed she was taking "full responsibility." ・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/01/13/AR2010011303602_pf.html
 ・・・The government’s co-leader, Peter Robinson, has temporarily stepped aside as investigators determine whether he had any role in $80,000 in loans arranged by his wife, Iris, in 2008 and given to her lover, who was a teenage pub operator at the time. ・・・
 It would be tragic after centuries of bloodshed to see reconciliation in Northern Ireland founder on a lurid sideshow. ・・・
http://www.nytimes.com/2010/01/14/opinion/14thu4.html?ref=opinion&pagewanted=print
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<globalyst:翻訳>

コラム#3765より
 マジ、米中間に暗雲が立ちこめてきました。↓

・・・月曜の夜遅く、中共は、国産第一号の地上配備型ミサイル防衛システムの試験に成功したと言った。・・・
 ・・・米国が台湾へパトリオット防空設備を売却することに北京が怒っている最中に実施した、この試験のタイミングは、主としてホワイトハウスを狙っていたということに間違いはない。・・・
 ホワイトハウスは、この試験はブッシュ政権の間に取り決められた協定に単に従ったものであると言っている。先週ペンタゴンが認めた<台湾への武器>売却にはF-16戦闘機およびブラックホークヘリコプターが含まれていない、つまり北京に譲歩している点が指摘されている。 ・・・
 オバマ大統領と、中共が分離主義者であると非難するチベットの精神的指導者であるダライラマとが会談し、そして台湾の馬英九総統が米国を短期間訪問する、この数週間のうちに、<両国の>関係は一層揺れ動くであろう。台湾当局者の海外渡航に北京は常に神経を尖らせる。・・・
 ・・・中共と米国の関係は、イランの核プログラムへの制裁に対する北京の抵抗および環境政策の相違によって益々複雑化してきており、そして、この環境政策の相違は先月の混乱したコペンハーゲン国連気候変動枠組み条約締約国会議において際立っていた。
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太田述正コラム#3770(2010.1.15)
<シベリア出兵(その1)>

→非公開

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