太田述正コラム#3680(2009.12.1)
<日進月歩の人間科学(続x10)>(2010.1.5公開)

1 始めに

 いささか深刻な「哲学的」コラムの執筆がこのところずっと続いて、私も疲れ、そして恐らくは皆さんもお疲れになったであろうこと、かつまた、(決して悪いことではありませんが、)コラムで即時的にとりあげるべき大事件が最近ほとんど生起しないこともあり、ドーパミン(dopamine)に関する記事が2篇たまったので、この「軽い」話題を提供させていただくことにしました。

2 ドーパミン

 「・・・気持ち良いスリルを与えてくれる何か、例えばチョコレート、音楽、株式市場、膝の上に置いたブラックベリーの呼び出し音、によって「ドーパミンの奔流」を得るという話を人々はする。
 お馴染みの悪の薬品である、コカイン、メタンフェタミン(methamphetamine)、アルコールとニコチンは、次第に人気が出てきている覚醒剤であるアデラル(Adderall)やリタリン(Ritalin)と同じく、脳のドーパミン回路を刺激することが知られている。
 共同社会における社会通念(imagination)では、ドーパミンはご褒美であり、気持ちよいことであり、もう一度気持ちよくなりたいと思わされるものであり、気をつけないと、あなたは引っかけられてしまい、あなたの脳の中に張り巡らされている快楽回路の奴隷になってしまうことになっている。・・・
 ・・・<しかし、実は、>ドーパミンは、快楽とご褒美に関係しているというよりは、衝動と動機、すなわち、あなたが生き残っていくために何をやらなければならないかを考え、それを実行すること、に関係しているのだ。・・・
 ドーパミンは、脳における特徴(salience)検知器(filter)の一部・・・でもある。
 ・・・我々のドーパミンが動かしている特徴検知器は、我々がプラスないしマイナスの高い価値を吹き込まれたところのお馴染みの諸対象に焦点をあてるのだ。・・・
 研究者の中には、<ドーパミンの>受容器の型の遺伝的諸種類を通じて人格の違いの手がかりを模索している者もいる。・・・
http://www.nytimes.com/2009/10/27/science/27angier.html?hpw=&pagewanted=print
(10月27日アクセス)

 「・・・神経伝達物質であるドーパミンは、それほど強力なものではないが、過去40年間にわたってその活動は脳が快楽をもたらす様々な経験を認識することを助けるにあたっての鍵であるとの証拠が集積されてきた。
 (セックスをしたりアイスクリームを食べたりといった)特定の出来事がドーパミンを引き出せば引き出すほど、その出来事は脳により強く刻み込まれ、あなたの脳はあなたにその出来事を再び経験させるべく、より激しくあなたの脳を突き動かす。・・・
 この知識はまた、脳が将来の様々な経験からどれだけの快楽を期待できるかを考えることを助け、しかるがゆえに、あなたが何が好きとか嫌いとかについてのいかなる決定を行う際にもほとんどの場合影響を与えるのだ。・・・
 将来の快楽に係る決定を行うにあたってドーパミンは<このように>決定的な役割を果たすけれど、ドーパミンが多過ぎるとこのような決定をゆがめてしまうかもしれない。
 中毒の根っこには、ドーパミンの過剰がある。
 例えば、コカインの例をあげると、それは、快楽的感覚と関連して脳が分泌するドーパミンを脳細胞が再吸収するするのを部分的に妨げる作用がある。<つまり、快楽が長く続くわけだ。>
 そして、ひとたび脳がコカインが好きであるという学習をしてしまうと、その熱望を充足させるための、あらゆる種類の自己破壊的ふるまいを引き起こす。
 他方、ドーパミンが少なすぎると、パーキンソン病(Parkinson's disease)のような運動障害がもたらされる場合がある。
 <障害と言えば、>過剰は統合失調症の原因の一つと考えられている。
 この研究が示唆しているのは、我々の大部分は、自分のドーパミンの量を薬品で操作しようとしてはならないということだ。
 しかし、健康維持上の見地からは、この化学物質を操作することで、薬品中毒から精神疾患に至る様々な状況の治療が可能になるかもしれない。」
http://www.time.com/time/health/article/0,8599,1943224,00.html
(11月30日アクセス)

3 終わりに

 本筋をはずれますが、パーキンソン病の有名人のリスト・・それが事実だとして・・はすごいですね。
 アドルフ・ヒトラー 、江戸川乱歩、三浦綾子、岡本太郎、鄧小平、山田風太郎、キャサリン・ヘプバーン、ビリー・グラハム、ヨハネ・パウロ2世、フィデル・カストロ、モハメド・アリ、マイケル・J・フォックス、E・H・エリック、小森和子・・・
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%B3%E7%97%85

 「日本における有病率は10万人当たり100〜150人といわれる。欧米では10万人当たり300人と見積もられており、日本の有病率はやや低い。」(ウィキ上掲)ということのようですが、有名人の間では、何らかの精神的・身体的疾患を抱えている人の割合が通常人より多い印象を受けますね。
 疾患を抱えていると、常識的な考えや行動をしない場合が往々にしてあるので、それが良い意味でも悪い意味でも有名になることに結びつく場合があるのかもしれません。