太田述正コラム#3577(2009.10.11)
<日進月歩の人間科学(続x8)(その1)>(2009.11.11公開)

1 始めに

 今回は、「気質」と「不条理の意義」をとりあげます。
 まだまだ、人間については分かっていないことが多いな、と改めて思われることでしょう。

2 気質(temperament)

 「・・・赤ん坊達のもって生まれた気質は異なる。
 彼等の15%から20%は、初めての人々や状況に強く反応する。そして、このように強く反応する赤ん坊達は、大きくなって不安症になる可能性が高い。
 もう一つ分かったことは、気質は変わらないが、それと関連するふるまいは必ずしも不変ではないということだ。・・・
 不安(anxiety)は正確には恐れとは異なる。
 なぜなら、恐れは何かあなたのすぐ前にいるもの、現実の客観的な危険に係るものだからだ。
 不安は、恐れの一種が狂乱化したものであり、脅威に見えるものが何かそこにある・・しかし実際には脅威ではなく、そこに存在すらしないかもしれない・・ことについての一般的な恐怖の感覚なのだ。・・・
 全般性不安障害(generalized anxiety disorder)(注1)・・・は米国における精神病で最もよく見られるものであり、成人中の4,000万人が罹っていると推定されている。・・・
 
 (注1)「全般性不安障害<の>・・・特徴・症状 
1.仕事や学業、将来、天災、事故、病気などのさまざまな出来事または活動について、過剰な不安と心配がある。しかし、その原因は特定されたものではない。
2. 不安や心配を感じている状態が6ヶ月以上続いており、不安や心配がない日よりある日のほうが多い。
3. 不安や心配は、次の症状のうち3つ以上の症状を伴っている。
・そわそわと落ち着かない、緊張してしまう、過敏になってしまう
・疲れやすい
・集中できない、心が空白になってしまう
・刺激に対して過敏に反応してしまう
・頭痛や肩こりなど筋肉が緊張している
・眠れない又は熟睡した感じがない ・・・」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%A8%E8%88%AC%E6%80%A7%E4%B8%8D%E5%AE%89%E9%9A%9C%E5%AE%B3 (太田)

 脳の真ん中にある小さい扁桃体(amygdala)は、他の諸機能のほか、新しいものと脅威に対応する機能があり、<不安に強く反応する人は、>それが過度に反応することがしばしば認められる。
 扁桃体は、本来、環境の諸変化に対する生理学的な反応を掌る。
 反応としては、感情的諸経験のために記憶力がより高められたり、皆さんお馴染みの、闘争ないしは逃走のために精神が鼓舞されたりすることがあげられる。
 しかし、特定の脳回路を持って生まれた人々にあっては、・・・扁桃体が超反応的<なのだ>・・・。
 このような気質の子供達の間では、扁桃体が超反応的であることと関連する他の生理学的変化が見られる。
 彼等は、<脳の>右半球の活動がより活発な傾向があるのだ。
 この脳の半球は、否定的ムードや不安と関連している。
 すなわち、それは、ストレスに対応するための心拍数の増大、瞳孔の散大、更に時には、ストレス・ホルモンであるコーティゾル(cortisol)とノレピネフリン(norepinephrine)の高レベル<の分泌をもたらす。・・・>
 ・・・しかし、不安を覚えがちな気質の者であっても、適切な環境の中で成長した場合には、彼ないし彼女は、完全な形の不安障害を全く発症しないかもしれないのだ。・・・
 <もともと、子供達の>約40%は低反応的であるのに対し、約20%は高反応的だ。・・・
 4歳の時には、 高反応的であった子供は、そうでなかった子供に比べて4倍も病的に内気(behaviorally inhibited)になっていた。
 7歳の時には、神経過敏(jittery)であった赤ん坊の半数近くが、雷鳴や犬や暗闇への恐れ、教室や遊び場での極度の内気、という不安症を発症していたが、暢気であった赤ん坊で発症していたのはたったの10%だった。
 高反応的な赤ん坊は、7歳になるまで、<研究者達が訪れるたびに、>いつも内気で恐れを感じ易かった。・・・
 青年期になると、高リスク集団を含め、・・・研究対象における不安症の率は全般的に減少した。
 すなわち、15歳の時には、幼児期に高反応者であった者のうちの約3分の2は、他のみんなとほとんど同じようにふるまうようになったのだ。・・・

(続く)