太田述正コラム#3523(2009.9.14)
<友人の効用(続)(その1)>(2009.10.18公開)

1 初めに

 「友人の効用」(コラム#3228)は読者の間で結構反響を呼んだコラムですが、その時は、NYタイムスとCSMの記事を典拠としたところ、このたび、 NYタイムス(正確にはNYタイムス・マガジン)から、別の記者・・ただし、フリーランサー・・がほぼ同じトピックをカバーした記事
http://www.nytimes.com/2009/09/13/magazine/13contagion-t.html?_r=1&ref=magazine&pagewanted=print
(9月14日アクセス)が出ました。
 人間主義とも関わる重要な記事なので、典拠が一つだけ、という意味ではコラムとしては変則的ではあるけれど、急遽これをとりあげることにしました。

2 友人の効用

 「・・・良いふるまい(behavior)・・例えば喫煙を止めたり細身を維持したり幸せであったり・・は、あたかも伝染性のウィルスのように友人から友人へと伝わって行く。・・・
 ・・・同じことが悪いふるまいについても言える。
 肥満、不幸せ、喫煙が一群の友人達の相互間で「伝染する」ように見える。
 健康であり続けることは、単にあなたの遺伝子とあなたの食事のせいだけではないように見える。
 すなわち、良い健康は、部分的には、あなたが他の健康な人々の近くにいるかにかかっているのだ。・・・
 ・・・もし友人の友人が肥満になると、この間に入った友人が1ポンドも重くならなかったような場合を含めてさえ、肥満になる割合が約20%増加する。
 それどころか、友人の友人の友人の体重が増えると、その人が肥満になる危険性は約10%増大するのだ。
 「人々はつながっている(connected)。だから、彼等の健康もまたつながっている」と2007年7月に・・・出た・・・クリスタキス(Christakis)とファウラー(Fowler)による論文は、初めて社会的ネットワークがいかに健康に影響を与えるかという<事実を世に知らしめた。>・・・
 ・・・一人の友人が喫煙を始めるとあなたも始める確率が36%増大する。
 そして、二次の友人<(友人の友人)>が喫煙を始めるとあなたも始める確率は11%増大する。
 飲酒も幸福も孤独も社会的に伝播する。
 いずれの場合も、ある個人の影響は三次にまで及び消える。
 そこで、これは人間のふるまいについての「三次影響(three degrees of influence)」法則と名付けられている。・・・
 ・・・これらのふるまいは、部分的には無意識下で我々が拾い上げるところの、我々を取り巻く社会的信号を通して伝播し、何が正常なるふるまいであると考えられているかについての手がかりを与えるのだ。・・・
 ・・・良い気持ち(feelings)や悪い気持ちが伝播するのは、部分的には、脳の中の、我々の周りにいる人々の顔を見て取りそのマネを自動的にする「鏡神経細胞群(mirror neurons)」のせいかもしれないとされている。
 だからこそ、微笑んでいる人々の写真を見るとあなたの気分(mood)も高揚するというのだ。・・・
 これまではしばしば、我々は緊密な長期にわたる友人達との小さな集団(cluster)が幸せであるために枢要であると考えられてきた。
 しかし、・・・それが必ずしも深い関係ではなくても、つながり(connections)が最も多い<人々>が最も幸せな人々であることが判明した。
 これらの人々が最も幸せであるのは、・・・幸せは、深い、心と心の対話からだけ来るのではなく、日常的にたくさんの小さな伝染性を持つところの幸せの瞬間に晒されることからも来るからだというのだ。・・・
 もちろん、たくさんの人々と高度につながっている危険性は、悪い気分でいるたくさんの人々と遭遇するリスクがあるということでもある。・・・
 ・・・<しかし、>驚くべき<ことに、>幸せの伝染性は不幸せよりも高い。
 ・・・新しく幸せな友人が現れるとあなたのうきうき気分は8%増大するのに対し、新しく不幸せな友人が現れても7%しか気分を落ち込ませはしない。
 こういう次第で、ネットワークへのリンクを増やせば増やすほど、数学的に言って、あなたの潜在的幸福度(store of happiness)は高まるのだ。・・・
 ・・・個人的友人とは違って、仕事の同僚達は幸せを伝播しないように見える。
 しかし、同僚達の喫煙習慣は伝播した。
 小さな企業において誰かが禁煙すると、彼または彼女の同僚達が禁煙する確率は34%増大した。
 これは、仕事場の人間関係の性格に由来している・・・。
 仕事場での喫煙者達は建物の外で群れ集う傾向がある。
 もしそのうちの誰かが禁煙すると、集まった時の楽しさ(conviviality)が減ってしまう。(もしあなたが凍えるような午後に外で最後の一人となって喫煙しておれば、あなた自身にとってもあなたのふるまいは完全にばかげたものに思えてくることだろう。)
 しかし、幸せに関して言えば、・・・「人々は仕事においては協力的であると同時に競争的だ。だから、一人の給料が上がると、当人は幸せに思うかもしれないが、その他の人々を嫉ませる。」
 肥満はまた違ったところがある。
 配偶者達は友人達ほどお互いにとって大きな影響を持たないように見える。
 ・・・男性の男性たる友人が太ると彼の<肥満の>リスクは倍増したが、彼の妻が肥満になっても彼のリスクは37%しか増大しなかった。
 これは、・・・身体のイメージの場合は、我々はもっぱら同性の人々と自分達自身とを比較するからなのだ。・・・
 実際、異性の友人達は肥満を互いに伝播することが全くなかった。・・・
 同様に、同性の兄弟姉妹達の方が異性の兄弟姉妹達よりも体重の互いへの影響はより大きかった。
 飲酒の場合は、・・・また違った類の一般的影響が見られた。
 ・・・女性の方が・・・男性よりもはるかに影響力が強かったのだ。・・・
 どうしてか?・・・
 女性達は一般に余り<酒を>飲まないからだ<とも考えられる。>
 だから、女性がたくさん飲むようになると、同じようなことをしても通るのだな、という強い信号を彼女の周りにいる人々に送る、というのだ。・・・」

(続く)