太田述正コラム#3517(2009.9.11)
<日進月歩の人間科学(続x6)>(2009.10.15公開)

1 始めに

 身長の高い人は低い人はより楽しく幸福だという話を(コラム#3516で)したばかりですが、左利き(left-handed=スポーツにおける southpaw)には著名人が多く、その著名人には革命的業績をあげた人が少なくない、という議論がなされることもあります。

 そして、下のような表を作成した人もいます。(2カ所加除した。)
http://manage.staff-livlet.com/?eid=484879
(9月8日アクセス)

 政治 :石原慎太郎、バラク・オバマ、ジョージ・ブッシュ、ロナルド・レーガン、チャールズ皇太子、ナポレオン・ボナパルト
 経済 :ビル・ゲイツ、ヘンリー・フォード、
 文化 :アインシュタイン、ニュートン、エジソン、フロイト、シュバイツァー、ダーウィン、ゲーテ、ニーチェ
 芸術 :パブロ・ピカソ、ミケランジェロ、バッハ、ベートーベン、レオナルド・ダ・ヴィンチ
 スポーツ:王貞治、江夏豊、ベーブ・ルース、朝青龍、大鵬、フィル・ミケルソン、伊達公子、アイルトン・セナ、ディエゴ・マラドーナ、ジャイアント馬場、アンディ・フグ
 芸能 :坂本龍一、小林旭、松本人志、スティーブ・マックイーン、マリリン・モンロー、チャーリー・チャップリン

 この表に事実の誤りがないという前提で申し上げれば、どれくらいの割合かは必ずしもはっきりしていませんが、左利きの方が右利きよりもずっと少ない
http://fm.koeki-u.ac.jp/~mihara/2005.1.20ueno.pdf
ことを考えると、少なくとも「文化」や「芸術」の項を見る限り、左利きには異能の人が右利きに比べて割合的に多いような気もしてきます。
 左利き、右利きについては分かっていないことが多い(すぐ上の典拠参照)けれど、左利きと右利きの人で明らかに世界が違って見えていることがほんの少しですが明らかになりつつあるので、その話を今回はしたいと思います。

2 利き手による世界観の違い

 「・・・「ライト(right)」には空間的意味があるだけでなく、道徳性と正しさ(correctness)に加えて、最近分かったことだが、好みに係る含意もある。
 我々が、「ライトな答え」と言って「レフトな」と言わないのにも、ラテン語のデクステル(dexter=right)由来の「器用な(dexterous)」という言葉があって、ラテン語のシニステル(sinister=left)がそのまま「不吉な(sinister)」という言葉として使われることについても、それなりの理由があるのだ。・・・
 <ところが、左利きの場合は、左側のものを右側のものよりもより道徳的である、またはより正しい、もしくはより好ましいと思うことが実験によって判明した。>
 ・・・この発見は様々な理由で奇妙に思える。
 第一に、それは、言葉は思考を形作る点において万能ではないことを示しているが、これは驚くべきことではない。
 より興味深いのは、認識科学者達は、物理的世界についての知覚を処理する脳の部位は、善悪、誠実不誠実、利口と馬鹿といった、抽象的概念を処理する部位とは別であることから、我々の空間知覚は抽象的思考に影響を及ぼさないとずっと考えてきたことだ。
 ・・・<ところが、この>発見は、これに背馳する考え方、すなわち、具体的知覚や行動をコントロールする神経回路が抽象的思考をも扱っている、という考え方を支持するものだ。・・・
 <これを、>身体特異性仮説(Body-Specificity Hypothesis)という・・・それは、右利きか左利きかといった肉体的諸特徴を持っている人々は、これらの肉体的諸特性に対応するところの、異なった抽象的諸概念を形成する、というものだ。
 左利きにおいては、いかなる空間でもその左側が正(positive)の道徳的、知的、かつ感情的含意を持ち、右利きにおいては、右側がそうなのだ。・・・
 <逆に言うと、右利きの方が左利きより多いからこそ、上述したように、「右」と道徳的なこと、正しいこと、好ましいことが言葉の上で結びつけられるに至ったわけだ。>
http://www.newsweek.com/id/210194?from=rss
(8月5日アクセス)

3 終わりに

 ここから先は、私の考えですが、以上のことを踏まえると、左利きの人は、何が道徳的で、何が正しくて、何が好ましいかについて、右利きの人が中心となって形成されたところの社会通念に疑念を抱く可能性が高い、ということになるのではないでしょうか。
 そうだとすれば、科学や芸術の分野等において、異能の人、更には革命的業績をあげる人が、左利きの中からの方がより多く輩出するのは少しも不思議ではありません。
 私の父親は左利きだったけれど、残念ながら私は右利きです。
 読者の中には左利きの方も数多くいらっしゃるはずです。
 左利きの方々のご感想、ご意見をお待ちしています。