太田述正コラム#3462(2009.8.15)
<皆さんとディスカッション(続x568)>

<コマ>

 属州か属国かという言葉遊びはともかく、間違いなくその嘆かわしい状況ですね…。

 国家の統合化に必要なものは、それが必要であるという各国民・為政者の意識だと思います。
 かつてヨーロッパはアメリカとソ連に挟まれ、統合化の必要性を感じていたために欧州石炭鉄鋼共同体という種が蒔かれ、そして育っていったのでしょう。
 しかし属国状態にある日本で統合化など考えられるはずもなく、いくらACUやFTAの様な種が蒔かれようとも、今の様な属国のままでは100年たっても結実しないでしょう。
 まずは米国から独立することが先決で、それから自然と求められるものでは?
 もちろんその議論が不要だといっているわけではなく、まずは独立に全力を傾けるべきではないかということです。

<核心>

 --仕方が無いのでは?--

 暫く前に戦前のトロツキーの論文を読みました。
 市民革命なくして国民主権国家、近代国家になれた国は無い、といった戦前の日本に対する警告でした。
 日本には明治維新、下級武士革命はありましたが市民革命はありません。
 敗戦により市民革命なくして、国民主権国家になれたのですから。
 (誰も自分の身を犠牲にしてまで天皇から主権を奪うなどということは出来なかったでしょうから。)
 米国からの軍事的独立は不可能でしょう。
 自力でいまの自衛隊の装備の開発なんてまったく意味がありません。
 ほとんどの日本人はそのような考えはないと思います。

<太田>

 主要装備を一部または全部海外から輸入するとかしないとかいうことと、日本の「独立」とは何の関係もありません。
 また、米国ですら、軍事的独立など達成したことはないし、現在でもそうです。

 以上は、史観以前の話ですが、それ以外のご指摘については、あなたのマルクス・レーニン主義的歴史観、何とかして欲しいですねえ。

 イギリスは、私見ではもとから近代国家ですが、市民(=ブルジョワ)革命を経験することなく、「実質」国民主権国家になっています。
 日本も、イギリス同様、市民革命を経験せずに「実質」国民主権国家になったわけですし、市民革命を経験せずに近代国家にもなっています。すべて、戦前の話です。

 ちょっと補足すると、イギリスじゃ清教徒「革命」でチャールス1世が刑死させられ、名誉「革命」でジェームス2世が廃位に追い込まれたわけですが、それぞれの「革命」前後でイギリスはほとんど変わっていないので、「革命」という名称は実体を伴っていません。
 また、この二つの歴史的事件を主導したのが市民(=ブルジョワ)階級であったというわけでもありません。
 (両「革命」についてはコラム#183、812を、清教徒「革命」についはコラム#529、1008、1787、1789を、名誉「革命」についてはコラム#1136、1794、1797、1798、1805を参照。)

 ついでに一言。
 日本でも、源平の戦乱の最終場面において、源氏軍によって安徳天皇が1185年に心中的自殺に追い込まれ、また、承久の乱の結果、鎌倉幕府によって仲恭天皇が1221年に廃位に追い込まれていますが、賢明にもこれらは「革命」とは呼ばれていません。
 前者は武士階級の貴族階級に対する優位の実質的確立、後者は形式的確立をもたらした、という意味では、どちらも革命的要素があったのですがね。 

<親衛隊員>

 もともとクーデンホーフ・カレルギーについて関心を持っていたのは、由紀夫氏の御尊父の威一郎氏のようですね。
以前、文京区の鳩山会館を訪ねたことがあります。威一郎氏の書斎が保存されているのですが、蔵書の中に何冊かクーデンホーフ・カレルギーに関する著作がありました。
 また「友愛」という言葉は祖父の一郎氏が好んだ言葉だったようです。
 いずれにせよ由紀夫氏のオリジナルではなさそうです。
 ちなみに鳩山会館では週一の頻度で説明つきの見学会をやっています。
 鳩山内閣が成立したらミーハーマスコミが押しかけそうですから、比較的空いている今が狙い目かも知れません。 

<ΜΑΑΜ>(「たった一人の反乱」より)

 近所のすき家にうな丼を食べに行こうと思ったけど、<コラム#3460で紹介されていた>・・・ニュースみて心配になったので、あっさり味のうどんにしとくか。

<ΑΜΑΜ>(同上)

≫高脂肪の食物を摂ると、頭も体もほとんど即時に機能が低下しちゃうんだって。・・・おっとろしー!≪(コラム#3460。太田)

 これ、ラット実験やん。おーたんの科学記事の読み方は心許ないですぞ!

<Although the human data aren’t yet published>, the researchers have also performed similar studies of high-fat diets in healthy young men who then performed exercise and cognitive tests.
Dr. Murray said he is still reviewing the data, but the short-term effect of a fatty diet on humans <appears to be> similar to that found in the rat studies.
って文章は、「へぇ〜」ぐらいで読まないと!

 坪野先生が作った健康情報を評価するフローチャートを参考にしてくだされ。
 「ステップ2 研究対象はヒトか
 動物実験や培養細胞 → 「有害作用」についての研究は、それなりの注意を払う。
 「利益」についての研究は、人間にあてはまるとは限らないので、話半分に聞いておく(終わり)」
http://web.archive.org/web/20071012183415/http://metamedica.com/news2001/howto07.html

 このフローチャートは色々なところで引用されてます。
http://www.do-mamoru.com/03_joho01.html
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail771.html

<ΑΑΜΜ>(同上)

 なんか東大法学部出の人っておーたんに限らず専門外のことも専門家みたいに話すよね。
 理系の人間じゃないんだから科学記事の読み方が心もとないのは仕方ないかと。
 そもそも科学というのが基本的に全て仮説で、実験も追試で再現性が確認されないとただの仮説に過ぎないということがわかってるんだろうか?

<ΑΑαα>

 前<、ボク、コラム#3199>で、<おーたんに>つっこんだんだけど、そこは分かってるそうだ。

 分かってるんだったら、「〜という研究(論文)が〜に発表されました」と「〜が解明されました」の文章を区別して書いて欲しいんだけどね。
 でも、この感性は文系には通じないっぽいw
 科学のトレーニングを受けていない素人ブロガーに、逐一つっこむような野暮なことはしないけど、言論人であるなら、日本語を大事にして欲しいわ。ディスカッションは省エネモードという以前の問題としてね。

<太田>

 注意喚起ごくろうさま。
 だけど、「分かってるんだったら」以下は議論の蒸し返しだから止めて欲しかったな。

 ΑΑΜΜさん、私は日本の短大卒相当(日本の法学部卒)ではなく、歴とした日本の学部卒相当(米スタンフォード大学大学院卒)なので間違えないでね。

 ところで、ΑΜΑΜさんよ。

 ・・・It’s already known that long-term consumption of a high-fat diet is associated with weight gain, heart disease and declines in cognitive function. ・・・
 <Newly found facts are that e>ating fatty food appears to take an almost immediate toll on both short-term memory and exercise performance, according to new research on rats and people.

という問題の記事の文章についてだけど、科学記事に係る'according to new research' 的な部分は常に省略して紹介していることは、既にコラム#3199(上出)でお断りしているところ、この文章を「<我々が>高脂肪の食物を摂ると、頭も体もほとんど即時に機能が低下しちゃう」という命題の形で要約紹介することのどこに問題があるんですかね?
 この文章が、上記命題がネズミだけでなく人間にもあてはまるとしていることは、'according to new research on rats and people' から明らかだよね。
 だから、私による記事の紹介の仕方を批判するのなら、むしろニューヨークタイムスのこの記事を書いた科学担当記者を批判すべきじゃないんかい?

 また、「「有害作用」についての研究<に>は、それなりの注意を払う」べきだと言うんだから、この記事を紹介したことには意義があった、ということになりそうだよね。 

<やいち>

 田母神氏がアサヒ芸能で毎週コラムを書いておるのを見ますと、やはり結局戦争になった状態の事しか考えられないように感じます。
 軍人なので、出番はそこにあるわけで、どうしてもそこを考えることは理解できます。
 ただ、是を民間人に平気で提示して核武装の話まで持っていくような人が幕僚長になるという自衛隊を考えると、武官と文官を一緒にして、組織の効率化を図って意思決定を単純にすることがそんなに重要かと思います。
 なだしおの事故では、内局も障害になったとの結論のようですが、障害というかチェックは必要とおもいます。
 金とか出世とか、事なかれ主義にまみれても、自分のことは判らなくても、人のことは判るものですので、独立した文官組織は、必要と思います。・・・

<太田>

 氏・育ちの違う人々が一緒にいて互いに切磋琢磨することによって、組織・・大学であれ役所であれ・・は活性化するのです。
 かつてのように、氏・育ちの同じ人々だけで各幕や内局がそれぞれ構成されていると、防衛省全体が澱んでくるものなのです。
 こんなこと、組織経営に携わった人にとっては常識なんですがねえ。
 
 週末の一人題名のない音楽会です。

 こんな記事があったのでご紹介しておきます。
 「音楽とモテに関する意識調査」
http://topics.jp.msn.com/entertainment/music/article.aspx?articleid=118643

 さて、遅きに失したきらいがありますが、これまた日本が誇る世界的バイオリニスト・・ただし、ジャズ・バイオリニスト・・の寺井尚子(1967年〜)の特集といきましょう。

ラ・クンパルシータ
http://www.youtube.com/watch?v=r6HW7z_KW6c&fmt=18

 ちょいと脱線して、このタンゴ曲の様々なバリエーションもお楽しみください。

オケ版です。この曲が本来はどういうものかが分かります。
http://www.youtube.com/watch?v=jjPp6CZ2vVo&feature=related
フィギュアスケート版
http://www.youtube.com/watch?v=1ZO8V0LQWeY&feature=related
舞踊の抱腹絶倒版
http://www.youtube.com/watch?v=lV6Fgptthy4&feature=related

「カルメン幻想曲」(コラム#3388)から「ハバネラ(Habanera)」
http://www.youtube.com/watch?v=OuEBpq0xeUA&feature=related

「アランフェス協奏曲」(コラム#3428、3448)
http://www.youtube.com/watch?v=yyFi4NOEi38&feature=related

バッハ(Bach)作曲「アダージオ(adagio)」
http://www.youtube.com/watch?v=vimqJ4_AfUo&feature=related

 彼女が作曲したもの。

「アパッショナータ(appassionata)」
 これは名曲。残念だけど、作曲家としては、彼女、この一曲だけで終わってしまうかも。
http://www.youtube.com/watch?v=-vgCW1aD8X4&feature=related
 この曲の彼女による演奏に感動し、自分なりに再現した(アマチュア?)男性の演奏もよろしければどうぞ。 彼の鼻息がちょっと気になるけどね。
http://www.youtube.com/watch?v=EUFI5rzCbWs&feature=related

 この先は、ポピュラーです。

岩崎宏美の「マドンナ達のララバイ」の伴奏
http://www.youtube.com/watch?v=co0XQLNwMkc&feature=related
「ひまわり」  
http://www.youtube.com/watch?v=Mj1BaaXluMI&feature=related

 では、記事の紹介です。

 この朝日社説↓に出てくる死亡者・犠牲者数には病死や餓死も含まれているのでしょうが、どういうわけか記されていない、米国人の死亡者数は、せいぜい何万人のオーダーだったはずです。
 フィリピン征服の時にも数多くのフィリピン人が愚かで傲慢な米国の犠牲になった上に、先の大戦の時にもまた150万人ものアジア人が愚かで傲慢な米国の犠牲になった、というとらえ方も必要、というか、むしろそのようにとらえるべきだと私は思いますし、戦争の時には人間は残虐行為を喜んで行いがちである、ということも理解すべきでしょう。
 いずれにせよ、だからといって、あらゆる戦争が悪であるということには全くならない、ということもまた我々はいいかげん理解すべきでしょう。

 「・・・さいたま市の英会話学校で働く神(じん)直子さん(31)は、学生時代にスタディーツアーでフィリピンを訪ねた。現地の集会で、一人のおばあさんに「日本人なんか見たくない」と言われたことが胸に突き刺さった。日本兵に夫を殺されたという。・・・
 「強盗、強姦(ごうかん)、殺人、放火……。軍命とはいえ、罪の気持ちはある。でも謝るすべを知りません」。工兵隊にいた<旧日本兵>は声を絞りだした。
 話の最後に「無我夢中でゲリラを突き刺した」と、打ち明けた人もいた。
 フィリピンは太平洋戦争の激戦地だ。日米両軍の死闘のなかで、日本の軍人・軍属60万人中50万人が死亡した。フィリピン人も100万人以上が犠牲となった。・・・」
http://www.asahi.com/paper/editorial.html

 「ポニョ」(コラム#3458)についての好意的映画評が次々に出ています。↓
http://movies.nytimes.com/2009/08/14/movies/14ponyo.html?pagewanted=print
http://www.csmonitor.com/2009/0814/p17s04-almo.html

 大都市で実施された世論調査でこう↓なんですから、パキスタンの人々の民度の低さはどうしようもないって感じです。

 Pakistani views of al-Qaeda and the Taliban have shifted markedly since last year, with unfavorable opinions doubling to about two-thirds of those surveyed in a new Pew Research Center poll.
 Condemnation of extremists did not coincide with a more favorable view of the United States, held by only 16 percent of the Pakistanis surveyed. Only 13 percent said they had confidence in President Obama, a stark contrast to his overwhelming popularity in much of the rest of the world. A hefty 64 percent said they regard the United States as an enemy of Pakistan. ・・・
 India remains a prime concern for most Pakistanis, with 88 percent saying they viewed it as a threat, compared with 73 percent for the Taliban and 61 percent for al Qaeda.
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/08/13/AR2009081302770_pf.html

 中共は、開放経済を志向しているだけに、グローバルスタンダードに真っ向から抗うことはできません。↓

 ・・・The latest brick to fall is Beijing's curb on the imports of Hollywood movies, iTunes music, books, and other foreign culture. The World Trade Organization ruled this week that Beijing cannot force foreign-made entertainment to be sold through its state-run monopolies. Such media imports must be sold freely to China's 1.3 billion people, the WTO said.
 The ruling runs counter to the party's attempts to shelter its restless population from outside cultural influences -- which can often help drive revolutions against iron-fisted regimes. But the decision also helps push the party to accept an important universal principle -- the rule of law -- instead of relying on capricious dictates and censorship to keep itself in power. ・・・
 China・・・recently had to back down from imposing software filters called Green Dam on new computers after an international outcry. And it was forced to drop espionage charges against foreign executives of mining giant Rio Tinto after this attempt to protect domestic industries sent shivers through foreign investors.
 Now China's monopolistic stranglehold on imports of books, songs, and movies will need to end・・・
http://www.csmonitor.com/2009/0814/p08s01-comv.html

 ただし、リオ・ティント(Rio Tinto)(コラム#3401、3410)に関しては、中共当局は、まだまだ矛を収めたわけではない、ということのようです。↓
http://www.time.com/time/world/article/0,8599,1916468,00.html
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太田述正コラム#3463(2009.8.15)
<アーサー・ランサムの半生(その2)>

→非公開