太田述正コラム#3436(2009.8.3)
<私の防衛庁(内局)改革案(1987年)(その3)>

 (2)従来に比べ、より積極的なシビリアン・コントロ−ル概念(注18)・・・すなわち、「企画立案の基本」(積極的に指針を与えること)をシビリアン・コントロ−ルの主要要素とするもの・・を確立し、浸透させること。(これに関連し、(部隊勤務そのものはともかくとして、)オペレ−ションはユニフォ−ムの仕事である、との観念、あるいは防衛力運用は防衛の基本ではないとの観念(防衛能力把握のための OR (作戦解析)の軽視等にこれが現れている)も、この際、排除すべきではないか。防衛力整備の基本が存在するのと同じく、防衛力運用の基本も存在し、むしろこれがシビリアン・コントロ−ルの基幹をなすものと考えられる。(まったくの例示に過ぎないが、別紙2<(省略)>>にいう、統合作戦・演習シミュレ−ションシステムの研究開発の推進といったようなものがあげられよう。))

(その際、内局を、今後とも現在のような形で維持するのか、将来的にはフェ−ズアウトさせるのか、統幕等と融合させるのか、等についての結論を急いで出す必要はあるまい。)(注19)

(3)その上で、各省に倣って、内局、更には防衛庁の corporate identity を打ち出すこと。
これをふまえ、
ア.従来の形の広報に加えて、タ−ゲットを有識者層以上に絞った広報(国内に限定しない)をより積極的に行うこと。例えば、中央資料隊等による翻訳資料や各幕分析室の戦略的研究等の一部公開、防衛研究所におけるかかる問題意識に立脚した研究の実施・公開等を考慮すべきである。
イ.又、今や防衛庁も、防衛技術や軍備管理等の面で、(慎重を期しつつ、)積極的権限争いに加わることが可能となっているのではないか。
ウ.以上を通じ、防衛庁のイメ−ジの向上を図り、前向き、かつ質の高い防衛論議の活発化、防衛庁の魅力化を図る。

 (4)また、一つでも、二つでも、内局及び各幕等が力を合わせなければ実施できない事業を推進すること。
 全くの例示に過ぎないが、別紙2にいう、統合作戦・演習シミュレ−ションシステムの研究開発といったものがあげられよう。
 仮にこの事業を推進することとなれば、陸海空の OR 手法や OR 関係諸元の整合性が確保され、初めて総合的・統合的見地から自衛隊の能力を把握すること(すなわち、シビリアンコントロ−ルの前提条件を満たすこと)が可能となろう。

 (5)更に、政策・企画マインドを持った内局要員を確保するため、次のことを行う。
  ア.当然のことながら、給与面を含めた処遇改善や仕事の魅力化が不可欠。
(前者は説明の要なし。(部員の 24 時間タダ働き(!)(注20)など言語道断。)後者は、「(自衛官の業務)プラス(国会業務)マイナス(オペレ−ション業務)」だけでは魅力がいま一つということ。)

イ.他省庁キャリア(ソフト・サイエンス系を含む)の書記官、部員等への任命を促進し、その一部の防衛庁への定着化を図る。
(防衛庁の特定ポストが特定の省庁出身者の指定席になっているという現状は、決して好ましいことではなく、徐々に打破して行くべきであるが、そうであるからと言って、「見習い」(注21)へのポストの「奪還」を唱えるばかりというのも理解に苦しむ。(局長にしばしば「部外者」が就くという現状であるにかかわらず、)防衛局ないし防衛局に準じる部局において、「見習い」純血主義(?)が推進されていることも理解が困難。「見習い」出身者の層の薄さを考えれば、むしろ他省庁出身者を「中枢」ポストにどんどん登用し、彼らにできうる限り所要の情報を与え、それぞれに能力を最大限に発揮して仕事をしてもらうことこそ肝要。又、必要な機構、ポストの新・改編を、その機構・ポストを「見習い」出身者で埋めていく見通しが立たないと言う理由で断念するようなことがあるとすれば、更に問題。防衛庁は、「見習い」出身者のためにあるのではなく、日本のためにあるもの。部内に人がいないのであれば、他省庁、場合によっては民間から広く人材を求め、業務を推進し、あるいは機構・ポストの新・改編を果たすべきであろう。)

  ウ.自衛官を兼官させることによって部員等に補職する。
 (防衛庁内の人的資源を有効に活用しようとするもの。「シビリアン・コントロ−ル」問題とは次元を異にする。)

 長期的観点からは、

エ.キャリアの採用数を増大し、競争させる(既に実施済み)。但し、できうる限り多様なバックグラウンドを持つものを集める。例えば、国家公務員試験合格者(人事院)の技術系キャリアの内局採用を考慮すべきである。(注22)

オ.キャリアは、採用後、十年間は、その半分以上の期間を他省庁または各幕で勤務させる。又、この間、全員に一年以上の海外滞在経験を与える。

(6)最後に、防衛庁関係団体等を活用し、20代後半から30第前半の内局キャリアを中心として、各幕1選抜(注23)級等、及び各機関におけるこれに準ずる人々(各幕、各機関に推薦させる)の相互交流の場を設けること。(勉強会(無料)を中心として、スポ−ツ、趣味の会等の活動を行うもの)(注24)
なお、原則として入会期間は2ー3年とし、回転率を高めることとする。

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(注18)後に拙著『防衛庁再生宣言』でシビリアンコントロール概念の廃棄を提案するに至るが、この時点では、方便としてこの手垢のついた概念を援用している。
(注19)「統幕等と融合させる」のが本意であることは、(5)のウからも明らか。
(注20)「部員」とは、おおむね他省庁でいう「課長補佐」相当。自衛官には残業手当がつかず、残業手当見合い分が本給に加算されているが、防衛庁内局に勤務する文官についても、自衛官並びで同じ扱いだった。ところが、どの省庁でも本庁の内部部局勤務は激務であるところ、(管理職手当がつく、課長に準じるクラス未満の)防衛庁内局勤務の部員や(ヒラたる)事務官は他省庁の同等の職員よりも名目給与額が低かった。
(注21)防衛庁(警察予備隊)が発足してからしばらくの間は、防衛庁採用キャリアは他省庁で言うヒラのキャリアたる事務官ばかりだったので、彼等は自分達を「見習い」と自称し、後々まで、これが防衛庁(省)採用キャリアの自称であり続けた。
(注22)ずっと後には、防衛庁キャリア採用増どころか、防衛庁キャリア廃止論を主張するに至る。
(注23)幹部自衛官は、年回2回ずつ昇任するシステムをとっているところ、特定の階級からその一つ上の階級に同期で初めて昇任した者を1選抜と呼ぶ。
(注23)「浩志会」(コラム#2256)にヒントを得たもの。後にこの会を官業癒着構造の象徴的存在として批判することになるが、幹部自衛官と防衛庁キャリアとの間で若干の「癒着」があっても何ら差し支えなかろう。
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 私のこの機構改革案については、1990年代に防衛政策局ができ、その中に防衛政策課が置かれることで、ほぼ全面的に実現することになります。
 これで、防衛庁(省)は政策官庁へと生まれ変わる機構的前提条件が満たされたことになったわけです。
 これは、2000年代における陸上自衛隊特殊作戦群の編成によって、吉田ドクトリン下、換言すれば米国の属国下において、日本が直面している(核の脅威を除けば)唯一の脅威であるテロリスト的脅威に対する備えが形の上ではできたことと好一対です。
 しかし、この一対の機構いじりは、防衛省/自衛隊の腐敗・退廃体質を是正することには少しもつながりませんでした。(コラム#3434参照)
 日本の現行の国のあり方がそれを許さなかった上、防衛庁(省)キャリアや幹部自衛官のトップクラスの人々の大部分が、最低限度の意識改革を行うことすら怠ったからです。
 この結果、防衛省/自衛隊は、全くと言ってよいほど、無意味な存在で現在もあり続けているのです。
 納税者の皆さん、どうするのかを決めるのはあなた方ですよ。

(完)